かかりつけ薬剤師とお薬手帳

小黒先生の薬の話Q&A46

小黒 佳世子

 

 

平成27年9月に厚生労働省で「患者のための薬局ビジョン」が策定されました。
医師が処方した薬を薬局で調剤するという「医薬分業」は、薬害の根絶と多剤併用の回避を目的に始まりましたが、その効果は見えているのでしょうか? お薬手帳は服薬情報を一元化して、多剤併用を防止するツールとして重要です。お薬手帳を薬局や医療機関に持参することで、積極的に自らの健康維持に関わりましょう。薬局薬剤師との会話も違ったものになってくるでしょう。

◆いつも持ち歩き健康管理に役立てる

<Q1>

お薬手帳を持ち歩くのをついつい忘れて、何冊もできてしまいました。どうしたら良いですか?

<A1>

お薬手帳は、患者さんがいつ、どのような薬を服用しているか、これまでに服用した薬の中でアレルギーや副作用がなかったかを記録する、患者さん自身が持ち歩けるカルテです。それによって、病気や怪我をした時期も分かります。ご自分でその時の症状や様子などを書き込んだりすることもできる、とても便利なものです。お薬手帳から、医師や薬剤師は、薬についてのアレルギーの確認や、複数の医療機関からもらった薬の中で併用できない薬が処方されていないか、類似した薬効のものが重複していないかを医師や薬剤師がチェックすることができますので、一冊にまとまっていないと意味がありません。複数冊になってしまった場合には、薬局で一つにまとめてもらえますので、ご相談ください。

 

また、持ち歩くのを忘れないようにお薬手帳は保険証といつも一緒に保管しておくのが良いでしょう。私の薬局では、保険証も入れられるポケットの付いたお薬手帳のカバーも一緒にお渡して、積極的にお薬手帳の普及に努めていますが、最近では母子手帳ケースやポーチなどを使用して受診セットのように持ち歩いている患者さんも見掛けます。

 

さらに最近ではスマートフォンの普及に伴って、電子お薬手帳の種類も増えてきました。メモ機能やお薬の服薬や受診のタイミングをアラームなどで知らせてくれる機能などが付いているものもありますので、ライフスタイルに合わせて選ぶと良いでしょう。

 

◆大人の母子手帳といえるお薬手帳

<Q2>

お薬手帳は有料だと聞きました。断ることはできますか?

<A2>

薬局での薬代などを決める調剤報酬改定は、二年ごとに実施されます。お薬手帳が導入されたのは平成12年です。当時有料だった写真入りのお薬の情報(薬剤情報)に、さらに手帳へ薬の名前を記録することが追加される形で導入されました。その後、高齢者は薬剤情報提供料とお薬手帳が無料になるなどの変遷をたどっておりましたが、東日本大震災の時に、お薬手帳を持っていた方は服薬情報が把握しやすく、迅速に薬剤を継続できたことから、平成24年にお薬手帳代は、薬局で記録する薬学管理料に含まれるようになり、実質無料になりました。

 

しかし、一部の薬局で経費削減のために手帳の形を成していないお薬手帳を配ることが横行し、投薬の際にも併用薬がきちんと確認されないなど、本来のお薬手帳の目的が遂行されていないことから、平成26年に再びお薬手帳が有料になってしまいました。このように、お薬手帳の役割が重要であると評価されながらも、患者さんに適正に使用してもらうための運用がうまくいかなかったお薬手帳ですが、平成28年の改定では、お薬手帳を持参する方が薬局での併用薬の確認などが容易にできることから、手帳を持っていない方よりも料金が安くなるようになりました。ですから、現在ではお薬手帳がない方は薬局での料金が高くなります。

 

また、半年以上来局がなかった時には、その間の服薬状況を確認する必要があるため、お薬手帳を持っていない時と同様に料金がかかります。病院やクリニックの初診料と同様です。ですから、かかりつけ医同様にかかりつけの薬局を決める方が料金的にも安くなるだけでなく、きめ細かい指導が受けやすくなります。お薬手帳の有無によって料金が安くなるのは1割負担の方で10円から20円、3割負担の方で40円ですが、医療費としては120円かかっています。

 

お薬手帳は、子供の時には母子手帳と同様に大切なものですが、大人にとっては「大人の母子手帳」と呼んでもいい存在になると考えています。いつまでも健康で暮らし続けるために、自分自身の体の変化とともに薬の服用歴を付けておくことは、とても重要なことだと思います。急変の時にも役に立つ大切な情報ですし、医療費削減にもつながりますので、予防注射の実施や血液検査結果、日々の体調など、自由に書き込み、医師に受診する時や健康診断の時にはもちろん、薬局でお薬を買う時にも持参して見せるのが良いでしょう。

薬11月

 

 

(隔月刊ドクターズプラザ2017年11月号掲載)

 

2018.1月号
リスト
  • 1. 巻頭インタビュー
  • 2. ドクターヘリ
  • 3. よしこ先生のメンタルヘルス
  • 4. 海外で活躍する医師たち
  • 5. 健康インタビュー
  • 6. 健康サポーターえむぞぅくん
  • 7. 医療系学生インタビュー
  • 8. 地域医療・北海道
  • 9. 小黒先生の薬の話 Q&A
  • 10. 微生物・感染症講座
  • 11. 川柳漫語
  • 12. 女子大生が考えた一品料理レシピ
  • 13. 魅地探索
  • 14. 僻地・離島医療
  • 15. 読者プレゼント
  • 16.医療法
  • 17.病理診断科の紹介
  • 18.野菜考
  • 19.一期一会・この人に聞きたい!
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  • 1. 西松 能子
  • 2. 横山 和之
  • 3. 天願 勇
  • 4. 小黒 佳代子
  • 5. 内藤 博敬
  • 6. 江畑 哲男
  • 7. 東京家政大学ヒューマンライフ支援センター
  • 8.竹内 千佳
  • 9.末松 直美