2023

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親の介護にお金の心配は必要ない!?

  • 介護

川内 潤
NPO法人となりのかいご・代表理事

隣の介護(27)

企業での個別の介護相談では、「介護とお金」に関する相談が後を絶ちません。そこで今回は「介護におけるお金の心配は必要ない」という理由についてお伝えします。

介護にかかるお金とは

【(公財)生命保険文化センター令和3年度生命保険に関する全国実態調査】によると……

・介護費用の平均金額は、月8.3万円

・介護の平均期間は5年

つまり……

・(8.3万円×12カ月)×5年≒約500万円

これは平均的な金額ですが、被介護者の介護状態や世帯収入によっても大きく変わります。親の介護は親自身のお金で賄うことが重要です。家族が負担すれば、いつか長生きを喜べなくなってしまうためです。

上述の金額を親の蓄えから支払えなくても、高額介護サービス費(※)などの介護費用を減免する制度があり、非課税世帯や生活保護世帯でも、介護保険のサービスを受けられるような仕組みになっています。支える家族の収入が少なくても、両親が国民年金受給者や無年金であっても、必要な支援を受けることができます。

※高額介護サービス費:https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1097.html

家族で介護をすると、むしろ“高く”つく?

親に介護が必要になったら、常に家族が見守れば、お金がかからないと思いがちですが、実際はそうではありません。介護疲れで家族が倒れたら、急遽民間の老人ホーム(有料老人ホームなど)への入居となり数百万円単位の出費につながります。

「親孝行」だと、自身の生活を変えてまで家族の介護を優先される方もいますが、収入的なマイナスに加えて、気付かぬうちに精神的にも肉体的にも追い込まれてしまいます。

親との距離感を維持して介護費用不足を防ぐ

親の老いを直視し過ぎて介護の不安が高まると、以下のように介護費用が足りないと考える状況に陥っていきます。

〇親が老いていく姿を直視し過ぎて不安が高まる

〇直接支えることで自分の不安を下げようとする

〇介護に疲れて、介護サービスが必要と考える

〇介護保険の介護サービスでは足りないと考える

〇仕事を減らして介護する

 

親の老いを直視し過ぎないよう、物理的にも心理的も距離感を維持することが介護費用不足を防ぐことになります。

お金があっても不安は解消されない

お金があっても、介護の不安は解消できません。高額な費用を支払い、豪華絢爛な施設へ入居できたとします。でも、それが親自身の望みや幸せを叶えようとするものでなければ、決していい介護とはいえません。

高額な老人ホームに入居しても、気ままで慣れ親しんだ生活を求めて、家に帰りたいと毎日家族へ電話する方もいます。家族の不安をお金で解決する介護になっていないかを考えることで、このような事態を防ぐことができます。

介護保険で使えるサービスでは足りない?

介護保険制度を利用することで、訪問介護(ホームヘルプ)やデイサービスなどさまざまなサービスを1〜3割の自己負担で受けることができます。「うちは介護認定が低いから受けられるサービスが少ない」と訴える方がいますが、介護認定が低いということは、今は多くのサポートは必要がないということです。

介護にかかるであろう時間に応じて介護認定の程度が決められ、その時々で必要な支援やサービスを受けられるようになります。過剰に介護サービスを利用すれば、サービスに頼りすぎて介護状態が促進されてしまうことにもつながります。

介護保険制度は家族の不安を解消するための制度ではなく、介護を受ける方のために必要な自立支援を目的としたもの、ということを忘れないでください。

親が元気なうちから地域包括支援センターへの電話で不安を和らげる

まだ介護を必要としなくても親の生活に不安を感じたら、電話でも可能なので親が住んでいる地域の地域包括支援センターへ相談しておきましょう。

「どんなサービスを受けられるのか」「どんな手続きが必要なのか」などを知っておくことが安心材料になります。介護がはじまる前から、公的機関とのつながりを作り、気軽に相談ができる体制を整えておくことも、不安とうまく付き合うために効果的です。

公的機関である地域包括支援センターの探し方は「地域包括支援センター<スペース>親の住んでいる住所の丁目まで」と入力して検索すれば、該当のセンターを見つけることができます。

家族介護で大切にするべきこと

元気だった親が老いて、出来ないことが増えていく。そんな姿を近くで直視していると、悲しさや悔しさが湧き上がってくることもあるでしょう。ただ、介護のために自分の生活を大きく変えると、後々どこかで親に怒りを向けてしまう日が来てしまいます。

家族介護で大切なのは、親がどんなに衰えても親子の関係が崩れないことです。まずは、介護を1人で抱え込まずに、自分の生活を第一に考えて気持ちに余裕が持てるよう、できる範囲で関わることがお金への不安も和らげてくれるのです。

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