2023

10/01

長期休暇で気付いた親の記憶力低下と付き合う方法

  • 介護

川内 潤
NPO法人となりのかいご・代表理事

隣(となり)の介護(26)

コロナの感染拡大のピーク時は帰省をして高齢の親に会うことを躊躇されていたとしても、通常の生活に戻りつつある今年の夏季休暇は故郷で久々に親と一緒に過ごす選択をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。一方でそのような夏季休暇を過ごされた方から、記憶力の低下など親の認知症を疑う声が企業での介護相談で私の元に届き始めています。

まずは「認知症を疑うチェックリスト」をチェック!

1)異様に甘いものを好む、濃い味を好む(味覚が鈍くなる)
2)機械の操作が分からなくなった
3)人との会話を避けるようになった
4)人との会話でトラブルが増え友人が減る
5)お風呂のシャンプーやリンスが減っていない(入浴しても髪の毛を洗っていない)
6)ティッシュペーパーやトイレットペーパーを切らしたまま
7)財布の中に小銭がギッシリ、または、小銭を押し入れに隠している
8)カレンダーが1カ月以上めくられていない
9)待ち合わせや約束そのものを忘れる
10)車で出かけたのにバスで帰宅する
11)自宅近所で迷子になる

★「夏だからこそのチェックポイント」

12)冷房もつけずに布団をかぶって寝ている
※認知症になると不安から何かにくるまりたい願望が現れることがある
13)急な季節の変化に服装などがついていけていない

1つでも当てはまれば……

親が住む地域の「地域包括支援センター」に電話相談してください。
地域包括支援センターは、中学校区に1つ設置されている公的な福祉に関することの“よろず相談所”です。インターネットで「親の住む住所<スペース>地域包括支援センター」と検索すると、該当する地域包括支援センターの電話番号を調べることができます。まずは電話で、地域包括支援センターへ「子どもとして心配」と相談するだけでも大丈夫です。

無理矢理、受診させない

どんなに認知症が疑われても、嫌がる本人の気持ちを無視してまでの受診は止めましょう。それにより家族関係が崩壊してしまったら、その後の介護に大きな影響が出てしまいます。
地域包括支援センターの職員やケアマネジャーなど、介護のプロと話し合いながら、下記のような裏技でスムーズに受診ができることもあります。

受診させるための裏ワザ

・かかりつけ医から「物忘れ外来」を紹介してもらう(介護保険の申請に必要な医師の意見書はかかりつけ医によるものでも可能)
・友人に「物忘れ外来」を紹介してもらう
・友人に一緒に病院に行ってもらう
・孫から「おばあちゃん、心配だから一緒に病院行こうよ」と声掛けする
・街のクリニックから「物忘れ外来」につないでもらう
・自分が「体調が悪い」といい、親に付き添いとして病院に行ってもらい「お父さん(お母さん)も、どうせなら一緒に検査しませんか?」と医師に検査を促してもらう(医師との事前打ち合わせが必要)

初期応対が大切

受診により認知症だと分かり「すぐにサポート!」と家族が思っても、介護のプロの判断では、本人の気持ちを大切に段階的にサポートの導入をするケースがあります。そのためには時間が必要となるため、関係機関への早い段階での相談が功を奏します。

家族だけで抱え込まない

コロナ禍からテレワークをする人も増え、働きながらでも「家族で介護はできる」と思っていても、症状が進んでいく認知症の介護はどんどん大変になっていきます。
認知症はその原因となる疾患により対応が異なるため、家族だけでの介護は困難を極めます。よく教科書などには「認知症の人と付き合うための基本姿勢」として、以下のようなことが書かれていますが……

・話を否定しないで、ゆっくり話を聞く
・関わるときは落ち着いた口調で
・昔の話を興味深く聞く
・安心して会話できる話題を探す

「元気だったころの姿」を知っている家族は、現状との落差に苦しみ、上記のような対応は非常に難しいといわれています(認知症ケアのプロでさえも、自身の家族の対応は難しいのです)。だからこそ、プロに頼りながら介護することが重要になってくるのです。
どうか、早い段階から外部の力を借りて、穏やかな介護を続けることを考えてください。初めは良くても、頑張り過ぎの介護は長続きしません。

難しいといわれている認知症介護も、初期対応から介護のプロに頼るなど、上手に外部のサポートを受けながら一人暮らしを続けていらっしゃる認知症の方を、私はたくさん知っています。

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