2024

01/09

地方の一次救急の現状と再構築の取り組み

  • 地域医療

  • 北海道

横山 和之
北海道社会事業協会 岩内病院 院長

地域医療・北海道(51)

初期救急医療とは

初期救急医療を担うものとして、現在の日本においては、「在宅当番医制」と「休日夜間急患センター」があります。在宅当番医制とは「郡市医師会ごとに、複数の医師が在宅当番医制により、休日及び夜間において、比較的軽症の救急患者を受け入れるもの」とされており、休日夜間急患センターとは「地方自治体が整備する急患センターにて、休日及び夜間において、比較的軽症の救急患者を受け入れるもの」となっています。 また、初期救急医療の機能として医療機関に求められるものは、以下の通りです。

◎主に、独歩で来院する軽度の救急患者への夜間及び休日における外来診療を行う

●救急医療の必要な患者に対し、外来診療を提供すること

●休日・夜間急患センターの設置や、在宅当番医制などと合わせて、地域で診療の空白が生じないように努めること

●病態に応じて速やかに患者を紹介できるよう、近隣の医療機関や精神科救急医療体制等と連携していること

●休日・夜間に対応できる薬局と連携していること

●自治体等との連携の上、診療可能時間や対応可能な診療科等について住民等に周知していること (疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について

(平成29年3月31日付医政指発0331第3号)抜粋) (救急医療対策事業実施要綱(平成29年3月27日付一部改正医政発0327第38号)抜粋)

輪番制度の現状

当院の所属している岩内古宇郡医師会は、岩内町、共和町、泊村、神恵内村からなり、岩内町は当院を含め8医療機関、共和町は3医療機関、泊村神恵内村はそれぞれ1医療機関があります。この地域では、一次救急は郡医師会による在宅当番医制で運営されています。しかし、当番医制で担っているのは、長年、日曜日の日中のみとなっていました。つまり、この地域では平日の夜間と土曜終日、日曜夜間において一次救急は制度上では空白となっていたということです。その日曜の日中の輪番制度も、3医療機関が、人員不足(休日の看護師や事務職員の確保困難)を理由に令和5年度11月から離脱し、急遽その穴埋めのために岩内協会病院が日曜日の日中の一次救急を月2回するようにして輪番制度を維持することになっています。この地域では日曜の日中のみの一次救急輪番制度ですら、存続できるかギリギリのところにきています。

この地域には二次救急を受け入れるような入院施設のある医療機関は、岩内協会病院しかありません。今までは月に1回、第4日曜日の日中が岩内古宇郡医師会の一次救急輪番制での割り当てられた一次救急でした。しかし、実際は、当院の岩内協会病院で平日の夜間も休日も(結局365日ずっと)、一次救急をやっているというのが現状です。この地域の一次救急は、制度上の空白はあるが、実際は岩内協会病院がずっと担っている状態が漫然と続いています。何も決めず何も頼まずに一次救急をやってくれているなんて、自治体や医師会にとってはこんなにラッキーなことはないし、今までは、その現状に見てみぬふりだったということです。岩内協会病院としては、一次救急をただ乗りされても文句も言わず職員の情熱のみを頼りに、制度上はやらなくて良いはずの一次救急を実際は年中担っていることが、開院以来ずっと続いていました。

今後の一次救急存続に向けた仕組みづくり

今回、今現在でも輪番制度が存続の危機であること、そして、開業医の高齢化や後継者不足医療職不足は解消することはなく、いずれ近いうちに輪番制度は存続不可能になることが明確であることから、自治体、医師会、岩内協会病院で何度か会議を開き、今後の一次救急存続に向け新しい仕組みづくりをすることとなりました。その仕組みは、開業医のマンパワー不足が進んでも継続可能な仕組みであり、また、今まで日曜の日中のみであった一次救急を「夜間及び休日における外来診療」「地域で診療の空白が生じない」という求められる初期救急医療の機能にするという仕組みでなければなりません。この地域の新しい一次救急のシステムとして、

(1)岩内町を含めた周辺自治体が岩内古宇郡医師会に一次救急を委託するのをやめ、一次救急の委託先を岩内協会病院とすること

(2)日曜のみの一次救急の委託ではなく、夜間および休日の一次救急の委託とすること

を大筋で決定しました。この枠組みの中で、医師会の先生方には岩内協会病院に来ていただき、一次救急を嘱託医として可能な限り手伝っていただくこととしました。これにより制度上の一次救急の空白もなく、開業医の先生方のマンパワー不足にも影響されずに、この地域の一次救急が継続可能になるのではないかと思っています。金銭面も含め今後さらに詰めていかなければならないこともありますが、令和6年度の実施に向け、自治体と医師会と協会病院の三者で協働していく予定です。

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