2022

04/20

2022年の調剤報酬改定〜調剤料に関する改定を考える〜

小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス 取締役、株式会社ファーマ・プラス 取締役
一般社団法人 保険薬局経営者連合会 副会長

薬剤師のお仕事(13)

薬剤調整料と薬剤調整加算

2022年4月に診療報酬改定、調剤報酬改定が施行されます。薬剤師の業務が薬という物から患者さん(人)への変換を求められている事は、これまでもお伝えしてきました。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」通称「薬機法」が改正され、昨年8月より施行されておりますが、今回の改定はそれを見据えた抜本的な改定といえると感じています。見た目は同じように見えるように感じられている方も多いと思いますが、まず着目すべきは言葉の変更です。薬を取り揃えて袋を準備して入れたりすることにかかってくる「調剤料」ですが、これは薬剤調整料と薬剤調整加算に分けられました。

薬剤師の主たる業務

もともと調剤の概念とは、日本薬剤師会の調剤指針においても、「薬剤師が専門性を活かして、診断に基づいて指示された薬物療法を患者に対して個別最適化を行い実施することをいう。 また、患者に薬剤を交付した後も、その後の経過の観察や結果の確認を行い、薬物療法の評価と問題を把握し、医師や患者にその内容を伝達することまでを含む」となっております。すなわち薬を取り揃えたり、医師の診断した処方箋と相違ないか確認したりすることではないのですが、薬剤師の業務が国民には薬という物に対する業務が中心に見えてしまうのです。

2019年4月2日に厚生労働省から都道府県に通知された「調剤業務のあり方について」では、薬剤師が最終的な責任を有することを前提として、調剤した薬剤の品質等に影響がなく、結果として調剤した薬剤を服用する患者さんに危害が及ぶことがなく、業務を行う者が判断を加える余地の乏しい機械的な作業について、非薬剤師が実施することを明確に示されました。つまり、それまでグレーゾーンとされていた非薬剤師による薬剤の取り揃えや、機械を使用した薬の一包化および薬剤の数量確認を行うことについて、薬剤師の監督下で可能であることが明確になったことで、薬剤師の業界では「0402通知」といわれる大きな意味を持つ通知となっています。これは当時、検討されていた薬機法による薬剤師による患者さんの服薬期間の確認を実現する上での薬剤師業務の非薬剤師へのタスクシフトともいえると考えています。そして、いよいよ今回の調剤報酬改定で「調剤料」が薬剤調整料と薬剤調整加算に分けられたのです。

薬剤調整料は、この「0402」通知に当たる薬学的判断が必要とされない業務に関するものですが、薬剤調整加算は医師の処方内容の妥当性について患者さんの背景や病態について判断したり、薬の相互作用や患者さんの生活状況も考慮して服薬が可能であるかを判断してその内容について記録することが要件となっています。これによって、処方箋を薬局で受け取った際に、まず医師の処方の妥当性を判断して記録することがほぼ必須となったといえます。そして、薬をお渡しした後も継続して患者さんの服薬状況をフォローし、必要に応じて医師にフィードバックするということが薬剤師の主たる業務となります。今回の調剤報酬改定によって薬剤師の患者さん(人)に対する業務が国民に認識されるようになるのでしょうか。

これまで、患者さんをお待たせせずに処方箋通りに薬を取り揃えて患者さんにお渡しすることだけに注力してきた薬剤師が多くいることも事実で、それが「お薬引換所」という薬局のイメージを強くしてきたと思っております。調剤料はこれまで7日までの28点(280円)から処方日数ごとに最高56日以上86点(860円)となっており、調剤報酬の約半分を占めています。変更となった薬剤調整料は日数によらず24点(240円)で、薬剤調整加算が7日までの4点(240円)から処方日数ごとに最高56日以上60点(600円)と、両方を合計すれば280〜840円ですから調剤報酬上の点数としては変わりがないと安堵している薬剤師もいるかもしれません。しかし「0402通知」にもあるように非薬剤師が実施するのでも可能というのであれば、薬剤調整料は今後の改定を繰り返しながらさらに下がってくることも予想されます。この変更を薬剤師自身が深く受け止め、薬剤師が患者さんの薬物療法に欠かせない存在となるような成果を上げていかなければならない時が来ていると思います。

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