2020

04/27

紫外線量が多くなる夏、しっかり対策をしてお肌を守ろう

  • スキンケア

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戸塚共立あさひクリニック院長
三宅 浩行

ヘルスケアマガジン2020年5月号掲載

皮フ科医のお肌のはなし

はじめに

今年2020年、記念すべきオリンピックイヤーに多少関連するかもしれない? 皮膚の話を今号から始めさせていただきます。どうぞよろしくお願い致します。もろもろ経て新生の国立競技場が完成しました。解放されていますので観覧される際に注意していただきたいのが、「日焼け」と「熱中症」でしょうか。今回はそのうち皮膚科領域の「日焼け」についての話をさせていただきます。

日焼けとは?

「日焼け」は正式には「日光皮膚炎」という名称であり、過度の太陽光線、特に紫外線の暴露に伴う急性の皮膚障害を意味します。紫外線はその波長でUVA(波長の長い)、UVB(波長が短い)の2種に分かれます。そのうちUVA は皮膚への深い部分に浸透し、色素(メラニン)を増やしていわゆる「suntanning:小麦色の肌」を作るもととなります。急激な皮膚障害は少ないですが、暴露の経過によっては肌の老化に関わることもあります(ちなみに黒ギャルなどと言う言葉もありましたが、あの皆さんは日焼けしていたのでしょうか? メイクでしょうか? 現役黒ギャルの方、もしこの駄文を読んでいたら教えてください)。これに対してUVBは皮膚組織への浸透は浅いのですが、障害性が高く長時間の暴露でやけど様の皮膚炎症を起こします。これが皮膚の赤みであり、水膨れ(水泡)の原因でもあります。またUVB、UVA とも皮膚細胞のDNAを傷付けることがあり、発がん物質の一つとして注意が必要です。

日焼け止めの選び方

日焼けを防ぐためにはまず日焼け止めを使っていただくことです。でも店頭にはいろいろな種類の日焼け止めが販売されていて、どれを買っていいか迷ってしまうことはないでしょうか? 日焼け止めを使う時に注意してほしい表記に「SPF」「PA」があります。またその成分で「散乱剤(皮膚の上で紫外線を跳ね返す):ノンケミカル」「吸収剤(紫外線を吸収する):ケミカル」に分けられます。SPFはUVBに、PAはUVAに対する防御効果の数値になります。SPFは「1」~「50+ 」、PAは「+ 」~「++++ 」で表され、数値が高くなるほど防御効果は強くなります。効果があるからと言っても、数値が高い日焼け止めを使い続けることはかえって皮膚の刺激になり注意が必要です。買い物くらいであればSPF15~30、PA+~ ++、レジャー等であればSPF30~50、PA++ ~ ++++が目安です。

お子さんの場合、強過ぎる日焼け止めは、肌に炎症を起こすことがあるので注意してください。SPF は15前後、PA は「++ 」か「+++ 」を目安に、ノンケミカルタイプのものをお勧めします。また防水性があるものも汗や水で流れることが考えられます。朝塗ったから安心と思わず、まめに塗っていただきたいですね( ただし帰ってきたらかならずお風呂やシャワーで日焼け止めを洗い流してください。残った日焼け止めはかぶれの原因になります)。予防が一番ですが、それでも赤みや痛みが出ることはあります。その時は冷却ジェル等もありますが水道水で構いません。流水で患部をしっかり冷やし炎症が長引かないようにしてください。水膨れはできるだけ保護し、破れた時は流水で洗って清潔を保ちましょう。

2020年、パラオ共和国ではサンゴやクラゲに悪影響を与えるとしてケミカルタイプの日焼け止めを使用並びに持ち込み禁止としました。ハワイでも同様の禁止法案が可決され2021 年から施行予定だそうです。これから同様の法案が広がると日焼け止めの持ち込みはさらに難しくなるかもしれません。緊急の時は地面の泥( 粘土)を塗り込むと効果があるそうです。実際ノンケミカルの日焼け止めの材料として市販もされていますが、やはり日焼け止めを忘れないのが一番でしょうか……。環境にやさしい日焼け止めができることを願っています。

 

 

 

illustration:東京家政大学 造形表現学科 高橋 牧子

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