2023

07/10

オンライン診療の推進は何を生むのか!?

  • 地域医療

  • 北海道

横山 和之
北海道社会事業協会 岩内病院 院長

地域医療・北海道(49)

約3年の間のコロナ禍において、非接触型の診療である「オンライン診療」は良くも悪くも脚光を浴びています。診療所や病院においても通常の診療に加えて、少なからず導入している事例も多くあります。オンライン診療は現在のところ、僕自身も、以前の勤務先である小樽病院で、システムだけは導入しましたが、その後、そのシステムが稼働しているかどうかは不明です。

オンライン診療は誰でもできる?

さて、オンライン診療を行う医師は厚生労働省のオンライン診療研修の終了が義務とされています。また、研修の申し込みには「医師等資格確認検索システム」登録されていることが必須となっています。そのオンライン診療研修とは、オンラインで講習を受けた上で、オンライン試験に合格し、オンライン診療研修終了証を発行してもらうことです。この研修の目的は「医師がオンライン診療を実施する際に必須とされる、指針や情報通信機器の使用、そして情報セキュリティ等に関する知識の習得」です。研修を受けた僕の感想ではありますが、意味のある研修でした。しかし、コロナ禍では、特例として、オンライン診療研修を受けていない医師でも、オンライン診療を行っても良いとされています。

限定された医療圏とビジネスチャンス

オンライン診療は診療できる診療圏が今のところ限定されています。研修を受けた医師なら分かっていることですが、オンライン診療を行う医師の所在が、オンライン診療を受ける患者のいる二次医療圏を越えない範囲となっています。つまり、札幌の医師が岩内町の患者にオンライン診療をすることは不可となっています。本州ならば県をまたいでのオンライン診療は多くは認められないということです。東京の事務所から全国の患者を顧客にしてオンライン診療をすることは今の規制のままだと難しいという事実があります。

そして、現在、オンライン診療に関わるハードとソフトの開発は急速に進んでいます。それは、オンライン診療がドル箱になると民間企業が考えているからに他なりません。今のオンライン診療の規制のままでは、あまりオンライン診療は普及しないとは思いますが、規制が緩和されれば一気にビジネスチャンスになると民間企業は考えているのではないかと思います。

規制緩和は何を変え、何を得るのか?

今後オンライン診療のいろいろな規制は、確実に緩和していくと考えられます。その中でも、オンライン診療における二次医療圏に限定された医療を緩和することが決まれば、一気に、現状が変化することが予想されます。オンライン診療が二次医療圏に限定されないということは、日本全国どこでもオンライン診療で医療サービスを提供して良いということになります。オンライン診療を行う医師とオンライン診療を受ける患者を繋げるシステムさえあれば、医師も患者もどこにいようと診療が可能になります。これは、システムとしては、コールセンターシステムとほぼ同じシステムです。オンライン診療は初期診療のコールセンター化を引き起こすのではないかと予想しています。いわゆるコールセンターと同様に、オンライン診療専門診療所に集められた医師は、マニュアルを基に、初診の患者さんの症状だけを問診し、その症状に合わせて薬を処方、薬は大手の調剤薬局で処方、宅急便のような運送システムで患者のもとへ運ばれる。このようなことがもう既に考えられ、組織されてきています。SNS、TVのCMなどではオンライン診療のバイト医師を募集する広告がよく見受けられているのがその一部です。オンライン診療の民間企業の参入は、オンライン診療のコールセンターシステム化に違いありません。

どこにいても、オンラインで診療が受けられるのは、元々元気な患者さんにとっては非常に魅力的な医療サービスです。空いている時間にオンライン診療でパッと診察してもらい、家に自動的に薬が届いている。風邪を引いたときなどは最高の医療サービスです。ただし、軽症の中に隠れている、 今後重症になるかもしれない患者にとっては、逆に、リスクのある医療サービスの形態だと思います。こう言うと、軽症の時にはオンライン診療で、さらに具合が悪くなったらクリニックに行けばいいという意見が出ると思います。今は、その意見はそのとおりだと思います。しかし、このようなコールセンター化したオンライン診療が普及すると、今まで軽症の患者を診ていたクリニックは必ず減少します。具合が悪くなったら行く予定だった内科系のクリニックは都会から消えるかもしれません。

僕のいる岩内協会病院でも、オンライン診療を導入しようと考えています。ただし、それは、ビジネスチャンスを狙っているわけではありません。人的資源の少なさをオンライン診療で補えることはないかと考えています。例えば、地域の施設への往診に取り入れてはどうか? など模索しているところです。

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