中村 真悠子 さん

杏林大学医学部3年生

2019/05/07

自分の視野を広げる経験も大切な勉強!

  • IFMSA-Japan

医療系学生インタビュー(32)

いろいろな視点から物事を見たり、考えたりすることが重要

―医師を目指したきっかけはなんですか?

中村 私の夢は経済系の学者になることでした。そのために経済系の大学院に進みましたが、そのころ姉が難病にかかりました。姉は病気のせいで子どものころからの夢を諦めなければなりませんでした。私も同じように、夢を追っていたからこそ、病気のせいでその夢を捨てなければいけない姉のつらさは胸に迫りました。父は医師で病院を経営していますが、私自身は恥ずかしながら、その時初めて医療というものに真に向き合いました。そして、姉のように病気で夢を諦めたり、したいことを制限されたりする人を、一人でも多く救いたい、サポートできる存在になりたいと思って医師を目指しました。

―文系からの転向は大変だったと思いますが、今はどのような生活を送っていますか?

中村 受験をし直して医学部に入学しましたが、ずっと文系の勉強しかしてこなかったので苦労しています。地味に勉強に励む毎日です(笑)。実験をしたこともなかったし、実験レポートの書き方も知らない。勉強以前の理系の基礎が抜けているので人より勉強しないと。それでもESSに入部したり、友人たちと勉強会を開いたりという活動をしています。またIFMSA-Japanという医療系の学生団体に所属して、裏方の仕事をしています。

― IFMSAに所属したきっかけ、そこでの役割を聞かせてください。

中村 尊敬するESS部の先輩が熱心に活動していたのがきっかけです。役割としては、主にファンドレイジングの活動をしています。団体の活動資金を集めるために、企業の方とお話ししたり交渉したりして協賛いただく営業のような役割です。この活動を通して、医師になるとなかなか知ることができない一般企業でのマナーを学んだり、医療系以外の多様な分野、立場の方々とお話ししたりするという経験ができています。そこでほんの少しですけれど、 いろいろな世界が見られるところにすごく興味があるんです。それに、 表舞台ではなく裏方から人を支えるのが好きなので、この活動にやりがいを感じています。

―勉強との両立は難しくありませんか?

中村 学問や知識を身に付ける勉強と、自分の視野を広げる経験はどちらも大切な勉強だと思います。確かに医学部に入ると忙しく、学校の勉強以外のことに携わる時間はない、無駄なことをしていてはいけない、と思ってしまう人もいるかもしれません。でも自分にとって興味があること、してみたいと思ってしたことは、何も無駄にはならないはずです。私は一度大学を卒業したからこそ、大学時代に活動しておけばよかったと思ったことを今、やり直しています。経済系の大学院を辞めて医学部に入り直したことも、無駄だったとは思いません。私が経済学に興味を持ったのは、人の心や行動といった曖昧なものを、数字で説明してくれるからです。数値で考えることで世の中の事象を解き明かすというのが好きでした。また、経済学は極端にいえば、全体の利益のためなら多少の犠牲は厭わないという見方で動きます。けれど医療は違う。命や人生を扱うものなので、一人一人に向き合います。どちらがいい悪いではなく、その違いを知っていること。いろいろなことを知って、いろいろな視点から物事を見たり、考えたりして判断できること。それはどの仕事にも役立ちますが、医師という人と向き合う仕事には、特に重要だと思います。

患者さんにとって身近で安心できる病院つくりを!

―いろいろな活動に積極的に取り組んでいますね。

中村 医師という仕事は専門性が非常に高く、人からも尊敬されることが多いですし、自分自身、猛勉強をした自負があります。そのため、つい自分の考えに固執してしまいがちだという話を聞きます。患者さん自身の体のことなのに、医学的知識のない本人の意見よりも医師の見立ての方が正しいと考えてしまう。そうではなく、いろいろな人の意見を聞き、公平に検討しながら正しい答えを導き出すことが大切なのではないでしょうか。そのために常に学び、経験し、視野を広げ続けていきたいと思っています。

―今後の目標を教えてください。

中村 地道な努力をコツコツ続け、一人一人に寄り添い、広い視野から判断や提案のできるように、そして患者さんの人生を影から支えられる存在になりたいです。また、将来的には実家の病院を継ぐことも考え、医療現場の環境を整えていけたらと思っています。良い医療の提供のためには、医療に携わる人自身が、積極的に医療に向き合える、気持ちよく働ける環境が大切だと考えています。 さまざまな活動、可能性の中から患者さんにとって身近な、そして毎日通っても安心できる、居心地のいい病院をつくっていきたいです。

―医師になろうと思っている後輩にアドバイスをお願いします。

中村 医師免許を取ったから医師になるのが当たり前ではなく、その知識を活かして、したいことをすればいいと思います。いろいろな経験を経て、また医師として働きたいと思った時に受け入れられる病院が増えたらいいですね。

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