池田大悟 さん

浜松医科大学医学部医学科5年

2023/09/01

理工学部から医学部へ 回り道が強みになる

医療系学生インタビュー(60)

早稲田大学から学士編入で医学部に入学

――医師を目指したきっかけはなんですか?

池田 最初のきっかけは、小学校6年生の頃、スーダンの内戦のニュースに触れたことです。現地で救援活動を行う国連のUNHCRの人々が映っており「こういうところで働く人もいるんだ」と、保健系・医療系の仕事に興味を持ちました。ただ、この時はまだ具体的な将来像としてのイメージはなかったと思います。

その後、成長するにつれて「生まれ育った東京にずっと留まるのではなく、地方に出て暮らしたい」と思うようになりました。それなら全国で働けて、人に貢献できるような仕事をしたいと考え、地方医療に関心を持ったんです。その気持ちが子どもの頃からの関心とつながって、医師を目指そうと決めました。

――高校を卒業して最初に進学したのは、早稲田大学の理工学部だったとのことですね。そこから、どのような流れで浜松医科大学医学部に進学したのでしょうか?

池田 高校時代にも医学部を受験していたのですが、残念ながら落ちてしまったんです。

いろいろな選択肢の中で、まずは理工学部で勉強をするのもいいだろうと思い、早稲田大学に入学しました。ただ、「最終的には医師になりたい」という気持ちは持ち続けていたため、大学卒業の資格を以て受けられる学士編入の制度を利用することに。地方の学校を選んで何校か受験し、縁があったのが浜松医科大学でした。静岡県はすごく住みやすい所で、この学校を選んで良かったと思っています。

思い返すと、理工学部で情報系、生物系など幅広い分野について勉強したのはいい経験でした。現在取り組んでいる学内の研究でも、理工学部時代に学んだプログラミング技術を活用しているんです。医学部入学前に得た周辺知識が、医学を学ぶ際の強みになっていると感じます。

――企業インターンシップに取り組んでいるそうですね、どのような活動ですか?

池田 はい、医療系のスタートアップ企業でインターンとしてお世話になっています。全国の医学生がオンラインで参加しており、僕は医学部編入直後に声をかけていただいて加わりました。医療者と患者さんのコミュニケーションを助けるサービスを開発する会社です。

僕が携わっているのは、インフォームド・コンセント(治療に関する患者さんへの説明)の際に、医師や看護師が利用し、患者さんの理解を助ける動画の作成です。例えば手術をするとき、術式などの基本的な内容は、どんな患者さんにも共通で説明することになります。僕たちが作るのは、そういった内容を患者さんに分かりやすく伝える動画です。基本説明を動画で行えば、医師や看護師の負担が減り、その患者さんに特化した説明や対話に割く時間を増やせます。患者さんは十分な説明が受けられて安心、医療者は業務の負担が軽くなるというサービスです。

僕は動画のもととなる絵コンテ作成を担当しています。表現の分かりやすさと、医学的な正確さの兼ね合いが難しいですね。もちろん正確であることは大切ですが、いたずらに細かい説明では患者さんの理解が追いつかなかったり、尺を取り過ぎたりしてしまうので……。

このインターンシップには、ぜひ卒業まで関わっていたいです。

「この環境が全て」という思い込みの外に出よう

――将来はどんな医師を目指していますか?

池田 純粋にかっこいいなと思うのは“Dr.コトー“みたいな先生です。離島という設備も人員も限られた環境で、難しいオペを成功させる力量に憧れます! ただ現実的にそういう医師・現場は限られていると思うので、これから実習などを通して、自分の目指す医師像を見つけていきたいです。

診療科としては、今のところ消化器内科や脳外科、小児外科などに興味があります。特に外科系の科は、自分の手を動かして治療するところに魅力を感じますね。また、手技や実際の動きが必要なぶん、AIが台頭しても生き残りやすいのではという考えもあります。手術用ロボットが普及したとしても、結局それを動かす外科医が必要ですから。

外科医としてやっていくなら、まずはある程度患者さんの多い都市圏で経験を積みたいです。そこからは、地方都市や僻地の医療に携わりたい気持ちもあります。一方で、もし小児外科になった場合、過疎地域には小児の患者さんが少ないので、働く場所を考えないといけません。また、昔から国際的な仕事にも興味があり、海外に出てみるという選択肢も浮かびます。

まだ実習もが半分しか終わっておらず、決めきれない部分が多いですが、しっかり時間を使って考えるつもりです。

――座右の銘や好きな言葉を教えてください。

池田 稲盛和夫さんの「実力の差は努力の差 実績の差は責任感の差 人格の差は苦労の差 判断力の差は情報の差 真剣だと知恵が出る 中途半端だと愚痴が出る いい加減だと言い訳ばかり 本気でするから大抵のことはできる 本気でするから何でも面白い 本気でしているから誰かが助けてくれる」という言葉です。偶然出会った一節で、とても印象に残っています。真摯に学びたいという気持ちにさせてくれる名言です。

――医師を目指す後輩たちにメッセージをお願いします。

池田 医師になりたいと思ったなら、ぜひその気持を大事に、諦めずトライしてほしいです! それと同時に、医師になることは世界の全てではないので、他分野の活動もどんどんやってみるのがいいとも思います。

ご家族が医師であったり、ずっと医学部を目標にまい進してきたりした方は特に、「この環境が全て」という感覚があるかもしれません。地方にいると情報が少なく、周りが見えにくいこともあります。でも、そこで意識的に視野を広げると、できることや見えるものが増えます。僕自身、早稲田大学時代の勉強やそこで得たつながりは本当にありがたいものでしたし、部活動やインターンを通して気付いたことも多いです。

将来何が役に立つのかは、意外と分かりません。この世界だけが全てだと思わず、いろいろなことに積極的に取り組んでみてください。僕も道半ばですので、頑張ろうと思います。

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