竹原優 さん

徳島大学医学部医学科4年生

2024/01/04

学生は、何者でもないからこそ何でもできる!

阿波踊りでつながりを生む

医療系学生インタビュー(62)

――医師を目指したきっかけを教えてください。

竹原 一つは、父が消化器系の病気を患っていたことです。治療を受ける父の姿を見ていたので、子供の頃から医療は身近な存在でした。より興味を持つようになったのは、中学校の宿題で行った「職業インタビュー」で医師の方に話を伺ったことです。そして、医療ドラマ「コード・ブルー」を観て、人の命を救う職業として憧れたことも理由の一つです。

また、“医学部”として考えたときの学問的な関心もありました。人間の身体ってすごく身近なのに、知らないことが多くて、すごく神秘的だし面白いなと。色々な要素が積み重なって、医学部に入ろう、医師を目指そうと決めました。

――いろいろな活動にも取り組まれているようですが、どのような活動をしていますか。

竹原 現在複数の活動に取り組ませていただいています。変化連という団体に広報担当として運営にかかわっていたり、医療系スタートアップでのインターンなどの活動に取り組んでいます。変化連に関しては、阿波踊りを通じて人のつながりをつくる団体の運営をしています。阿波踊りは、言わずと知れた徳島の伝統舞踊です。毎年夏に行われる祭りには、全国からたくさんの人が集まります。

有名な伝統の祭りは日本中にありますが、阿波踊りはただ祭りを見るだけでなく、誰でもすぐに踊れて、参加する側になれるというのが大きな魅力です。変化連では、その阿波踊りを通じて、人と人、特に若者がつながる場にしようと取り組んでいます。

――具体的にどのような活動をしているのでしょうか。

竹原 医療をはじめとする多種多様な社会課題に関心を持つ若者が集まる場として、カンファレンスやワークショップと阿波踊り、そして語らいを行うイベントを企画しています。

阿波踊りは一言で言うと“カオス”です。町中でありとあらゆるバックグラウンドを持った人たちが集まり、踊り狂います。そのカオスな場所に若者が集まって同じ“非日常”を共有することで強い繋がりを作ることができると思っています。これからの未来を担う若者同士の縦や横のつながりができて、社会課題の解決のための動きが1歩でも進む機会になれば良いと考えています。

――インターンはどのようなものですか?

竹原 医療系サービスを開発・提供するスタートアップ企業でインターンシップを行っています。その会社はDX(デジタルトランスフォーメーション)の技術で、医療者の負担を減らしつつ、患者さんも安心して医療を受けられるようなサービスを提供しています。

――その会社では、どのようなことを行っているのですか。

竹原 僕が携わっているのは、治療などについて説明する患者さん向けの動画をつくるためのディレクション業務です。医学生という、ある程度医療知識があるがまだ医師ではない、ある意味中途半端な存在であることを強みに、患者さんの立場に立ってどんな動画だったら安心して治療に臨むことができるのかを日々議論しています。この動画は患者さんの安心につながるだけでなく、働き方改革につながるプロダクトであるので、将来自分たちが働く環境づくりに関われているのはとても嬉しいです。最近ではインターンの学生たちが主体となり、さまざまな取り組みにチャレンジさせてもらっています。プログラミングを書いたり、簿記の資格を取ったり、マーケティングに関わったり、僕だけでなく、全国のさまざまな医学生が前のめりに参画しています。

医療という専門の分野に関わりつつ、マーケティングやテクノロジー、お金の流れといった、ある意味「一般的」な社会の要素に触れることができ、視点が多角的になったと感じます。これも一つ、自分のキャリア選択に役立つ経験だと思っています。

思い切りやることを恐れず、いつでも全力で

――座右の銘や好きな言葉はありますか。

竹原 「死ぬ気でやれよ、死なねえから」というhideの言葉です(杉村太郎さんの言葉とするなど、諸説ありますが)。中学時代、X Japanにハマった時期があって、その時に知りました(笑)。中学時代、バスケ部として練習に励んでいたときから胸に留めています。文字通り受け取っちゃうと少々時代錯誤に聞こえるかもしれませんが、ちょっと違って、みんな意外と自分の中に自分で限界を作っちゃっていると思うんです。

例えば、“僕は勉強が苦手だから医学部はいけない”とか。もちろん、人それぞれ、能力に差はあると思うんですけど、自分で自分の限界を決めてしまうとそこで成長は止まっちゃうんですね。なので、死ぬ気で取り組んで、それでも無理だったら諦めたらいいけど、死ぬ気でやることを恐れている、もしくは死ぬ気でやれない人の方が多いんだと思います。死ぬ気でやってこそ自分自身の限界を越えることができると僕は思っているので、無理をしろということではなく、「思い切りやることを恐れず、いつでも死ぬ気で全力でやってみよう! 死なないから。」と“自分自身”を鼓舞する言葉として大切にしています。ちなみに、僕は自分の中で死ぬ気でやりながらも、限界がきたら一回ちゃんと休息を取るようにしています(笑)。休息をしっかり取りながら死ぬ気で取り組むことをおすすめします。

――将来はどんな医師になりたいですか?

竹原 外科系に行きたいとは考えているのですが、診療科については、まだ絞っていません。これから実習や病院見学などをさせていただく中で、じっくり考えたいです。

ただ、医師のあり方としていつも思っていることが一つあります。それは飛行機に急病人が出て「お医者様はいますか?」と言われたときに、パッと手を挙げられるようになりたいということです。滅多にないシチュエーションだとは思うのですが……(笑)。不安な点があったとしても、医学を修める人間として、目の前で苦しんでいる人がいれば迷わず助けられる医師でありたいです。どんなことも人の命には代えられないと思いますし、それを忘れずにいたいと思います。

チャレンジが選択肢を広げてくれる

――医師を目指す後輩へのメッセージをお願いします。

竹原 何をするにも、一生懸命になれることを見つけるのが大切だと思います。それは勉強でもいいし、趣味でもいいし、部活や学生団体、インターンやバイトなど何でも良いです。

何よりも、学びの場は大学の講義室だけではありません。人としての素養や社会のことなんて、むしろ大学の講義室では教えてくれません。日常の中から、自ら学びとる必要があります。実際、医学部は狭い世界で、その中だけで過ごしていては見えないこともたくさんあると思います。自分の世界を少し広げてみる、それを意識して過ごしてみると何か良いことがあるかもしれません。学生は、社会人と違って立場や肩書がありません。無力に感じることもありますが、まだ何者でもないからこそ、何でもできる自由があると思います。興味を持ったことから芋づる式に縁がつながって、思いもよらない出会いに恵まれることもあります。

何にでも触れてみれば、キャリアや学びの選択肢も広がるし、シンプルに楽しいです! 医学部という枠にとらわれず、まずは自分の興味を持ったことをぜひやってみてください。

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