喜舎場朝基 さん

岡山大学医学部医学科5年生 

2023/11/01

世界中の友人と出会って志した医師の道

イギリス留学を経て医学部受験を決意

医療系学生インタビュー(61)

―医師を目指したきっかけはなんですか?

喜舎場 医療を通して国際支援をしたいという想いが根本にあります。

父が医師だったのですが、だからといって医師になりなさいと言われたことはありませんでした。もともと国際協力に興味があり、中高時代は外交官などの仕事に就くことを目指していたんです。そのためにも国際的な感覚を身に付けたいと、イギリスの全寮制の高校に2年間留学しました。また、イギリスの高校を9月に卒業して日本の大学が4月に始まるまでの半年間は、インターンとしてベトナムのホイアンに滞在しました。

多様なバックグラウンドを持つ人々と出会う中で、漠然と目指していた「国際貢献」に医療の面から取り組みたいという想いが芽生え、医学部の受験を考え始めました。

―イギリスでは、どんな環境で学んでいたのでしょうか?

喜舎場 世界90~100カ国から生徒が集まる、全寮制のインターナショナルスクールです。国際的な相互理解を深めるという理念を掲げた学校で、英語も学べるし、国際感覚も養うことができると思って進学しました。もともと地元沖縄の中高一貫校に通っていたので、高校2年の2学期からイギリスの学校に入学し、そのまま卒業したかたちです。

各国から来た友人と出会い、中でもシリア出身のルームメイトとは親友といえるほど仲良くなりました。彼の存在を通して、テレビなどで目にしていた紛争地域や難民キャンプという世界がぐっと自分の世界に近づき、自分事として考えられるようになりました。国際協力、国際支援という目標への想いが強まった2年間だったと感じます。

―帰国後の進学先として岡山大学を選んだのはなぜですか?

喜舎場 イギリスの高校を卒業した際に、「国際バカロレア(IB)」(*1)という教育プログラムで大学入学資格を得たので、それを入試に反映できる学校に進学したいと思ったのが大きな理由です。
岡山大学はIB資格での入試を早くから取り入れていた学校で、近い境遇の先輩がたくさんいるという心強さも決め手の一つでした。

高校の友人から繋がった縁

―医系学生団体IFMSAにも所属されていたということですね、どんな活動をしていましたか?

喜舎場 国内組織のIFMASA Japanと、国外のIFMSA本部それぞれで活動していました。
国内では、副代表・国際担当として、主に世界の学生たちの活動を日本に紹介したり、逆に日本から本部へ行きたいという方たちのサポートを行ったりしていました。国外では、アジア太平洋地域の理事を1年、国際本部で1年活動していました。

特に大きな活動だったのが、WHOの西太平洋地域委員会のオブザーバーを務めたこと、そして、IFMSAの代表としてWHO本部でHPVワクチンに関する声明文を発表したことです。国際的医療支援活動の最前線の一端に触れさせていただくという、非常に貴重な機会でした。

―今までの人生で影響を受けた人はいますか?

喜舎場 イギリスの高校で親しくしていたバングラデシュ出身の友人の、お母さんとの出会いが印象に残っています。バングラデシュで医学部を卒業後、WHOで医療人道支援に携わっている方で、紛争地域での医療支援の話などを聴かせてくださいました。今まで何となく抱いていた「国際社会」「国際協力」というものに対するイメージが一気に具体的になり、医学部に行きたいという気持ちが強まりました。

このタイミングでこの方に出会えたことは、本当に幸いだったと思います。

―座右の銘や好きな言葉を教えてください。

喜舎場 どなたの言葉か忘れてしまったのですが、“Effort is important, but knowing where to make an effort makes all the difference”という言葉を、一つの軸として持っています。1番努力するべき対象を見失わないことが重要だ、という考え方です。その時々に1番優先することを全うしないまま、他のことに時間を費やしてしまっては、どんな努力も本末転倒になってしまいます。

例えば医学部生なら、学業に力を入れた上でIFMSAなどの課外活動に取り組みたい。医師になったとしても、臨床スキルという軸を確立した上で、プラスアルファの活動を行いたい。行動の優先順位を意識させてくれる言葉として大切にしています。

「グローカル」な総合診療医になりたい

―将来はどんな医師を目指していますか?

喜舎場 分野として1番興味があるのは総合診療科です。臨床の面のみならず公衆衛生の面でも地域に関われるところに、しっくりくるものを感じます。臨床の能力を高めるためにも、初期、後期、専門までは日本で経験を積もうと思っています。その後は海外に臨床留学をして、全ての経験を生かして総合診療の道に進むことが今の目標です。

臨床留学先については、まだ限定する気持ちはありません。今は実習の合間に、USMLE(アメリカの医師国家試験)の勉強しているところです。40代、50代といった長い目で見たときのキャリアとしては、地元沖縄に戻ることも考えています。やはり自分のアイデンティティーに関わるところでもあり、医師不足という地域の課題も目に入っているので。

IFMSAが掲げる「グローカル」=「グローバルな視野のもと、ローカルに戻ってくる」という考え方にもすごく共感しており、ゆくゆくはローカルな部分への働きかけができる存在になりたいです。

―医師を目指す後輩へのメッセージをお願いします。

喜舎場 医学部に入ると、低学年の頃は一般教養科目ばかりで比較的時間があったりして、課外活動といった“プラスアルファ”に取り組みたい気持ちが高まることもあると思います。それ自体はすごく素晴らしいのですが、あくまでも軸は学業の部分。まずは学業をしっかりとやって、その上で興味があることに挑戦するのが大事かなと思います。

医学部生として学べる時間を、ぜひ存分に生かしてください。

*1;「国際バカロレア(IB)」について知りたい方は「文部科学省IB教育推進コンソーシアム」をご覧ください。
https://ibconsortium.mext.go.jp/about-ib/

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