2022

07/11

COVID-19陽性透析患者発生時の地方病院の対応

  • 地域医療

  • 北海道

横山 和之
北海道社会事業協会 岩内病院 院長代理

地域医療・北海道(45)

―行政はCOVID-19陽性透析患者の対応をどう考えているか?―

はじめに

私が勤務している北海道社会事業協会岩内病院には、透析センターがあります。透析センターでは入院と外来を合わせて30人程度の維持血液透析をしています。2022年5月某日に外来通院で透析を行っている患者様がCOVID-19陽性となりました。同日、そのCOVID-19陽性となった患者様は予定通り当院で透析を行いました。その後、当院ではいろいろと工夫をし、感染対策を行いながら、透析センターとして機能を保ち、8日間の最短で通常の透析センターの運営に戻ることができました。今回は、当院で行ったCOVID-19感染対策と、加えて、行政はCOVD-19陽性透析患者の対応についてどう考えているのかを述べたいと思います。

透析センターでの対応

2022年5月某日、当院の透析センターに通院中の患者様が感冒症状を訴え、COVID-19抗原検査を行ったところ陽性であったとの連絡が入りました。残念なことに、感冒症状の訴えを聴取したときには、既に透析センターのベッドに入室していました。ベッドの隣にも、違う患者様が既に入室している状態でした。COVID-19陽性の透析患者様がたまたま一番端のベッドであったために、陽性患者の頭部から半径2mの範囲にいた濃厚接触患者は1名だけとなりました。透析センターをまずはゾーニングし、レッドゾーンを決め、透析患者に対してはフルPPE対応としました。1名の陽性患者様と、その患者様と同じクールで透析を予定していた患者様は、同日に、当院で透析を予定通り行いました。その日の午後の透析患者を含めた、他の透析患者様に関しては、透析日時、透析開始時間を組み直して、当院で透析を行いました。その後、陽性患者様は、透析が可能なコロナ病床を持っている他院で、入院の上、維持透析を行うこととなりました。濃厚接触となった患者様は、当院に一室だけある個室の透析室で透析を行いました。当日のPCR、その後のPCRでも、職員、患者様ともに拡大せずに経過し、8日間でCOVID-19に対する感染対策(ゾーニング、フルPPEなど)を解除し、通常の運営に戻りました。

今後の取り組み

今回のCOVID-19陽性透析患者発生に伴う、当院透析室の感染対策中に北海道のCOVID-19対策の担当部署、岩内保健所、札幌医科大学公衆衛生学講座、その他、北海道の保健所とオンライン会議を行い、情報を共有しました。おおむね、当院での対策は問題ありませんでした。その場でCOVID-19陽性透析患者様の対応について、北海道(いわゆる全国の行政も同じ考えですが)から、「陽性患者の透析は極力元々透析を行っていた場所で行っていただく」というのが北海道としての考えであると通達されました。

当院では、そのような考えは認知していなかったため、陽性患者様は保健所を通して入院調節してもらい、入院加療となりましたが、本来ならば当院で透析を行うこととなる事例でした。陽性患者様は時間的な隔離、空間的な隔離のどちらかを行うことで、元々の透析施設(今回は当院透析センター)で透析を継続して行うというのが基本方針ということです。ただし、COVID-19に対する感染対策(ゾーニング、フルPPEなど)を解除するまでは、透析の時間を短くしたり、透析の回数を減らしたりして、患者様の透析の効率が下がったとしても、透析室での業務負担を一時的に計画的に減らすことが大切です。現状のマンパワーのままで、追加された感染対策を行いつつ、透析を継続するためには、非常に大切な考えであり、当院でもそのように行いました。それでも、一部の職員は、帰宅が深夜になったり、逆に早朝出勤になったりしました。

他の地域も似たり寄ったりだと思いますが、北海道で透析の可能なコロナ病床は全道で20床程度とのことです。そのため、小さい規模の透析施設であっても、その機能を全て中止し、透析可能な入院施設に移動させることは、物理的に無理なこととなっています。つまり、多かれ少なかれ、陽性患者様が出た透析施設で透析を行うことは必然です。当院でも今後は、陽性患者様が再度出た場合は、当院で透析治療を継続することが可能なように体制を構築し直しています。また、当院では行政からの依頼もあり、当院で透析可能なコロナ病床の届出も行いました。最近は、管内の他の透析室(開業医さんが行っている)に対して、地域連携として介入も行いました。当院では今後も、行政と協力し、官民協働で地域貢献の計画を立てています。

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