2023

06/01

父親が脳梗塞で突然救急搬送! 家族はどんな心構えをすればいいのか【後編】

  • 介護

川内 潤
NPO法人となりのかいご・代表理事

隣(となり)の介護(25)

在宅介護で順調だった父親が再入院することに……

【前編】(リンク)では、脳梗塞の後遺症で介護が必要になったBさんの父親が、リハビリ病院から自宅に戻り、在宅介護になるまでの心構えをお伝えしました。ところが、在宅介護に慣れてきたころに誤嚥性肺炎(*1)を発症し再入院になってしまいました。

【後編】では、負担の大きくなる在宅介護から施設へ入所したBさんの父親が最期を迎えるまでの家族の心構えについてお伝えします。

*1 誤嚥性肺炎

食べ物や唾液に含まれた細菌が気管から肺に入り込むことで起こるのが誤嚥性肺炎です。誤嚥とは、唾液や食べ物などが気管に入ってしまうことです。脳梗塞の後遺症には嚥下障害があり、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。

在宅介護のイレギュラーな事態

在宅での介護生活が安定していたBさんの父親でしたが、誤嚥性肺炎を発症し再入院してしまいました。そして、嚥下障害を防ぐため日常的に痰の吸引が必要になったのです。

家族は「できる限りのことをしよう」と、退院後も在宅介護を選択しがちです。吸引は、訪問看護師や研修を受けたホームヘルパーにお願いできますが、常に誤嚥への不安のため、母親が抱えるケアの負担は相当なものになります。同居する介護する側が体を壊したら、在宅介護は不可能です。緊急事態が起きたときこそ、今後のことを冷静に考える必要があります。ますは、ケアマネジャーや病院のソーシャルワーカーに相談をすることが大切です。介護のプロや家族間での話し合いを重ね、Bさんの父親は施設入所を検討することになりました。

入居施設を選ぶ大切なポイント

【入居できる主な施設】

・有料老人ホーム

・特別養護老人ホーム

・介護療養型医療施設

【施設選びのポイントは以下の3つ】

1、必要なケアをしてもらえるのか

2、施設に勤務する職員の離職率が低い

3、看取りケアを行っているか

Bさんの父親は、痰の吸引に対応してくれる施設を探さなければなりません。費用や建物に惑わされず、父親にとって良いケアをしてくれる施設を探してください。費用は親の収入の中で収めることを判断基準の1つにしてください。両親共に介護が必要になっても負担できる施設を選ぶことが大切です。

施設へ実際に足を運んで比較検討しましょう。すぐに決まらない場合などは、一時的な待機施設として、「老人保健施設」の利用も可能です。施設を選ぶポイントの詳細は「よりよい老人ホームの選び方5か条(リンク)」も参考にしてみてください。

施設との信頼関係構築の重要性

希望する施設へ入居したBさんの父親。母親が面会へ行くと、人一倍身だしなみに気を遣う父親に寝癖がついていたのです。また、一人ポツンと椅子に座って本を読んでいる様子も気になりました。施設への不信感が募っても母親はそれを伝えることができませんでした。介護を人に任せているといった後ろめたさや関係性の悪化を恐れて、施設に言いたいことがあっても我慢してしまう家族がいます。そこは抱え込まず、すぐに施設長やケアマネジャーへ相談しましょう。

Bさんは母親の悩みを施設のケアマネジャーに相談しました。父親の寝癖の件は、面会時間ギリギリまで昼寝をしていたためでした。ひとりで過ごしていたのは、静かに本を読みたいという本人の希望と体調が安定して付き添いの必要がないという判断によるものでした。

施設へ入居しても、怪我や病気などさまざまなことが起こります。普段から施設と家族が信頼関係を構築できていればトラブルに発展することを防げるかもしれません。本人がどんな性格で、どんな生活をしてきたのか、家族が望むケアはどのようなものかなどを施設にしっかり伝えておきましょう。

 

より良い面会は頻度でも時間でもない

面会が義務のようになり無理をしてしまっている場合、それは良い面会とはいえないかもしれません。無理をしない形での時間と頻度を意識してください。面会の際には、施設のスタッフとのコミュニケーションも忘れないようにしましょう。

看取りケアとは

看取りケアとは「全国老人福祉施設協議会看取り介護実践フォーラム」によると「近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること」と定義されています 。施設により取り組みに違いがあるため、それまで行った具体的なエピソードなどを聞くことでより安心につながるのではないかと思います。

私自身の体験談ですが、お酒が大好きな方がいらっしゃいました。最期の時、スポンジに少しだけお酒を湿らせ舌へ当てたところ表情に変化があり、家族もそれを見て大変嬉しそうにしていらっしゃいました。このような最期の迎え方も、繰り返しのコミュニケーションによる信頼関係が土台にあるからこそできたことだと考えています。

フォントサイズ-+=