2023

04/01

父親が脳梗塞で突然救急搬送! 家族はどんな心構えをすればいいのか【前編】

  • 介護

川内 潤
NPO法人となりのかいご・代表理事

隣(となり)の介護(24)

今回は、男性が要介護状態になる原因として最も多い脳梗塞になった家族が、救急搬送されて退院してから自宅に戻るまでには、どんなことが起きるのか? どうすれば安定した介護体制をつくることができるのか? についてお伝えします。

Bさんの例「父親が泡を吹いて倒れる」

Bさんの70代の両親は二人暮らし。ある日、父親が泡を吹いて倒れているのを母親が発見。救急搬送され、一命は取り留めるも脳梗塞と診断され、右半身に麻痺が残りました。

【脳梗塞とは】

何らかの原因で脳に分布する血管が詰まり、血液が流れないことによって発生する脳の病気。主な症状として、片方の手や足に力が入らない、ろれつが回らず言葉がうまく出てこない、視野が欠ける、目まいがするなどの症状が突然現れます。また個人差はありますが、多くの方が再発や後遺症に悩まされます。

まずはソーシャルワーカーに相談

入院からリハビリ病院への転院も含めて長くても3カ月程度。その間に家族は「状況を受け入れて冷静になる」ように努めてください。そして、まずは病院に所属するソーシャルワーカーへ相談しましょう。ソーシャルワーカーの役割は、医師や看護師、理学療法士と連携を取り退院に向けた調整を図ること。リハビリ病院への転院、退院後の在宅介護でどんなサポートが必要で、どんな制度を利用できるかなどを教えてくれます。

ソーシャルワーカーの連絡先は、医療機関のホームページから調べることができることも少なくありません。ソーシャルワーカーから声をかけられるのを待つのではなく、こちらから積極的にコミュニケーションを図り、相談をもちかける必要があります。突然の事態だからこそ家族だけで判断せず、ソーシャルワーカーなどのプロを頼ることが重要です。

リハビリ病院に転院することになった父親

Bさんの父親は自宅に戻る前に、リハビリ病院に転院することになりました。自宅に戻る前に少しでも体の状態を良くしてもらいたいのに、「父親がリハビリをしぶる」とBさんはいら立っていました。

そんなとき、心に留めておきたいのは、リハビリは想像以上にきつく大変だということです。高齢であれば、若い頃と比べて体力が相当落ちています。Bさんの父親は脳梗塞の後遺症で思うように体が動かないことに加え、「何事にもやる気が出ない」という症状がありました。リハビリは、本人の気持ちやモチベーションが大切です。家族は陰ながら見守り、できる限り本人のペースに委ねましょう。

リハビリ病院から在宅介護へ

リハビリ病院からの退院に向けて、入院中に介護申請をして介護認定を受けましょう。病院のソーシャルワーカーや地域包括支援センターの紹介でケアマネジャーを決め、退院後に利用するデイサービスやヘルパーなどの介護サービス、電動ベッドなどの福祉用具レンタル、段差解消工事など住宅改修といった在宅介護体制を構築しておきます。

退院後の在宅介護でよく受ける相談に、デイサービスに行きたがらない、ヘルパーを受け入れない、などサービスの利用拒否があります。利用する本人は、突如始まった介護生活に不安を感じ、拒否反応が出るのは当然です。

現場のスタッフはそういった状況に慣れており、本人との信頼関係をつくるために必要なプロセスと認識しています。サービスを受ける本人の気分が急に変わっても、その気持ちに寄り添いつつ、次につながるよう働きかけます。介護サービスを打ち切ったりせず、家族は本人のつらさを受け止められる余裕を持ち、大きな気持ちで接してください。

ケアマネジャーと連携をする

Bさんの場合、母親が父親を在宅介護していましたが、母はヘルパーやケアマネジャーに遠慮して愚痴もこぼさず、一人で無理することがありました。そこで、Bさんも実家に出向き、母親のサポートをしていこうと考えていました。

しかし、介護に直接関わることが解決策ではありません。母親がケアマネジャーなどに本音を言えなければ、家族はまず母の聞き役に徹して、その内容をケアマネジャーに伝えてください。ケアマネジャーは家族から聞いた内容から各サービスなどを調整する役割を担っています。Bさんはケアマネジャーと母親をつなぎ、母親が無理せず過ごせるよう、客観的かつ冷静な判断ができるような立場にいることが重要です。

安定した介護体制をつくる

ケアマネジャーをはじめとした介護に関わる全ての方へ気軽に相談できるような状況を作ることで、長く続いても大丈夫と思える安定した介護体制をつくることが何よりも大切です。

 

【後編】では、再入院したBさんの父親が施設介護へ入所するまで、についてお伝えします。

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