池上 侃 さん
防衛医科大学校6年
2017/01/15
海外留学で得た、自分から行動する勇気
医療系学生インタビュー(15)
患者さんの言葉に耳を傾け、一つ一つ真摯に取り組める医師に
今のつながりが、将来の自分を助けてくれる
――医師になろうと思ったきっかけは何でしょうか?
池上 三つ理由があります。一つ目は、子どものころ、小児喘息で小児科にかかることが多く、お医者さんはたくさんの方を治す素敵な職業だな、と子どもなりに漠然と考えていたことで、二つ目は、海外ドラマの『ER』を家族でよく見ていて、直接人を助ける仕事はすごくいいな、と思ったことです。そして、三つ目ですが、僕は大阪教育大学付属池田小学校の出身で、僕が小学5年生の時、刃物を持った男が入ってきて23人を殺傷したという事件がありました。その時、血まみれで倒れている子どもを先生が心臓マッサージしている場面を間近に見た経験もあって、将来は人の役に立つ職業を選択できたらと思うようになりました。
――学生生活はどのように過ごしていますか?
池上 大学1年生のころは部活のバレーボールの時間がほとんどでしたが、もっといろんな大学の人や、他学部の人と交流したいと思うようになりました。それで先輩に話をしたところ、交流会に連れていってくださって、そこでイベントや勉強会を企画する医療系学生の団体、MEDICUSを作った長嶺先生とお会いしました。そこでいろんな人と出会い、ここに入ったら新しい可能性ができるかなと思い、MEDICUSに入りました。最初はただ楽しい、友だちを作りたいという気持ちだったのですが、そのうち、そのつながりの意味を考えるようになり、将来自分が何かをやりたくなった時に自分を助けてくれる仲間を作るためにつながりを作っているのだと思うようになり、今まで以上に人と交流することが楽しくなりました。その良さを後輩たちにも伝えていきたいと思っています。
――防衛医大には訓練もあるのですよね。
池上 訓練は春・夏とあります。2年生の夏季訓練では、海で4キロ泳ぎ、富士山に登ってキャンプをしました。体力的には大丈夫なのですが、普段やらないことなので、それがしんどかったりします。
――影響を受けた人との出会いはありますか?
池上 先ほど話したサークルのMEDICUSとの出会いは大きかったです。MEDICUSは、「楽しむ」ということに一番重きを置いています。その楽しむ姿勢が人生においてどんな場面でも役に立つと思っています。「人生において、どんなに辛いことがあっても楽しさを見つける、楽しいと思える空間を提供できるよう努力する」ということをMEDICUS、特に長嶺先生から学びました。
――将来的には何科に進もうと思っていますか?
池上 耳鼻科に進もうと思っています。大学4年生の時に、急性喉頭蓋炎という病気になって耳鼻科に入院したのです。その時に、手術を受け、抗菌薬をもらって、それで治ったということがあって。耳鼻科は外科も内科も両方できるし、疾患も多岐にわたっていて、やりがいがあって面白いと思い、耳鼻科に進もうと決めました。
迷わず一歩を踏み出す勇気を
――どのような医師になりたいですか?
池上 患者さんの気持ちをしっかり理解できる医師になりたいです。「この治療法のエビデンスレベルが高いから、これをやっとけば治るよ」と言って終わり、といった医師には絶対なりたくないと思っています。しっかりと患者さんの言葉に耳を傾けて、一つ一つ真摯に取り組める、どんなに自分が疲れていても、患者さんのことを考えられるような医師になりたいと思います。
――医師を目指す人にアドバイスはありますか?
池上 やりたいと思って迷っていることがあったら、迷わずにやってほしいなと思います。一歩踏み出さないと得られるものはないので、勇気を出して前に進んでほしいです。そして、長期の海外留学にもっと行ってほしいと思います。長期の留学であれば、そこで何をしたら友だちができるのか、何をしたら英語が上達するのかということを自分で考えて行動するようになると思うのです。僕自身、高校生の時に1年ほどアメリカのミネソタ州に留学していました。英語もしゃべれない、友だちもいない、学校の授業も分からない状態。でも、留学に行ってから自分から行動する勇気が持てました。僕と同じような体験をいろんな人にしてもらいたいなと思います。
――読者の方にメッセージをお願いします。
池上 医療を変えるのは医療者だけではなく、全ての人類の責任だと思っています。患者さんに病気を治したいという気持ちを持って頂けないと、自分たちも治療が困難になります。医療者もしっかり意識を持って治療に専念しなければなりません。皆さんには、ちょっと食事の塩分を減らそう、ちょっとお酒を控えよう、と普段から気を付けて頂けたら嬉しく思います。