福室 自子 さん

杏林大学医学部医学科5年生

2022/01/11

家庭医とNPの連携で地域医療を変えたい

医療系学生インタビュー(50)

ナースプラクティショナーを目指して医学部へ

―医師を目指したきっかけを教えてください?

福室 祖父の死について考えたことが1歩目だと思います。優しく人徳のある祖父は胃がんで亡くなったと聞き、「死ななきゃいけない病気って何であるのだろう、命って何なのだろう」と考えるようになりました。そこで、命を助ける仕事である医療職に感銘と憧れを抱いたのがきっかけです。
まず志したのは看護の道でした。海外にはナースプラクティショナー(以下、NP)という、診療や薬の処方を行うことのできる看護職があると知り、NPとして地域医療に貢献することを目指しました。しかし学ぶにつれて、看護師は医師の指示の下に動かねばならないという日本のシステムが見えてきて、NPのように働くなら医師免許が必要だと考えました。それで、看護学部卒業後に医学部に入り直して今に至ります。

―どんな医師になりたいですか?

福室 地域に根差した家庭医になりたいと思います。地域のあらゆる人を診てサポートできる点でNPに近いと思うのと、スペシャリストの専門医がいるからこそ、全ての人を受け止めて専門の先生に繋ぐ医師がいれば満足度も高いと思います。看護学生の頃に参加していた地域医療研究会という団体で、地方にいる素晴らしい家庭医の先生方に出会いました。農村医療のメッカといわれる長野県の佐久総合病院や、日雇い労働の方が多い東京の山谷、福島県の原発20キロ圏内で帰村宣言をしたばかりだった川内村など、さまざまな場所に行かせていただきました。地域医療というものを肌で感じた、忘れられない日々です。また、私は人の話を聞くことが好きなんです。偶然銭湯で出会ったおばちゃんに話し掛けたりするくらい(笑)。地域医療では、急性期の病院とは違って患者さんの話を聞くことが大きな仕事の一つなので、それも地域医療に惹かれた理由かもしれません。

―今後はどんなことをしてみたいですか?

福室 NPを日本で普及させるために、家庭医とNPのチーム医療が確立されている国で医療制度を学びたいです。将来的に私が日本でやりたいのは、法改正が必要な分野にかかるかもしれないので、一度システムや課題を体感する必要があると思います。今考えているのはアメリカの公衆衛生大学院に進むことです。ちょっとした留学では実情は見えないと思うので、できればアメリカでしばらく生活しながら多くを吸収したいと考えています。

夢を口に出して挑戦すれば、必ず味方が見つかる

―コロナ前と後でどんな変化がありましたか?

福室 コロナ前は、とにかく留年しないように必死で、余裕がなかったんです。でもコロナ禍で家にいるようになって、自分ってジョギングが好きなのだ、料理するのもいいな、人と話すってこんなに楽しいんだ、など小さなことに幸せを感じられるようになりました。新たな発見が多かったです。

―今までの人生で影響受けた人はいますか?

福室 たくさんの方がいますが、1人はクリエイティブディレクターの箭内道彦さんです。J-Waveの
大学生と著名人の対談型授業という企画でお話ししました。「世界平和が夢」と語っていたのが心に響き、世界で活躍する方の言葉は心強いエールだと感じました。箭内さんが、「いつか僕の主治医になってね」と言ってくださったのも忘れられません。冗談だと思いますが、そうなれるくらい立派な医者を目指そうと決めました。

また、看護学部時代に実習で受け持った患者さんの言葉も心に残っています。肺炎で入院されている方でした。看護学生は実習中のタスクがとても多く、当時の私は余裕を失って患者さんを質問攻めにしていたんです。「胸の痛みは?」「聴診器で胸の音聞かせてください」など次々と投げ掛けていると、患者さんから「君のために患者になったわけじゃないから」と言われました。一生懸命やったつもりのことが、全部自分のためだったと気付いてショックでした。その経験があってから、患者さんはもちろん人との接し方が変わりました。相手は何を考えて、何をしてほしいのかを自然と考えるようなったと思います。医療者として大切なことを教えていただいた、ある意味で恩師といえる方です。

―後輩たちにアドバイスはありますか?

福室 心惹かれることはぜひやってほしいです。私もコロナ禍までは理由をつけていろいろな挑戦を諦めていて、それを後悔しているので……。私は4年生のとき、勉強会の仲間の「夢は口に出すほど叶いやすくなる」という言葉に後押しされて、自分の夢についての文章を野口エッセイコンテストに応募しました。夢を語って「意識高いね」と言われるのが嫌だったのですが、「何を言われても自分がやりたいことだからいいや」と吹っ切れました。それが賞をいただくという思い掛けない結果となり、背中を押されたようなありがたい気持ちでした。一人ぼっちだなと思っても、世界に必ず自分の味方がいるので、皆さんもその人との出会いを目指して進んでほしいです。