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国際機関や行政の立場から、より良い医療システムの実現を目指して

小林崇希 さん

東京医科歯科大学医学部医学科4年生

医療系学生インタビュー(34)

1枚の写真が将来の目標のきっかけに

―医学に興味を持ったきっかけを教えてください。

小林 大きなきっかけが訪れたのは高校1年生の6月ごろでした。世界史の定期試験対策のために、資料集を机に広げて勉強していたのですが、少し勉強に飽きてきた僕は、資料集の後ろの方のページをパラパラとめくり始めたんです。すると、現代のアフリカの貧困地域での写真が目に飛び込んできました。たまたま見つけたその写真に、自分でも不思議なくらいショックを受けたのを覚えています。とても恵まれた環境に身を置けているこの自分がしっかり勉強をして、将来このような人たちの力になれれば、とその時思ったんです。「WHOに入れば医療システムの改善を通して、世界中の貧困に苦しむ人たちの助けになれるかもしれない」という思いから、医学部を目指すようになりました。

―大学ではどのような勉強をしていますか?

小林 4年生の5月末から大学の国際健康推進医学分野の研究室に毎日通い、いわゆる疫学研究というものを行っています。その中で、日本の高齢者が日常的に趣味やおけいこ事を行っているか、そしてどんな趣味・おけいこ事をしているのかということに注目し、JAGES(※1)という研究プロジェクトが全国の市町村の高齢者を対象に集めたデータを解析しています。2010年から6年間追跡したデータを用いて、老年期における趣味やおけいこ事が、その後の死亡リスクとどのような関係があるのかについて研究しています。

需要側も育てることで、より良い医療サービスを

―将来はどのような活動をしていきたいですか?

小林 「より良い医療システムの構築を通じて、人々の健康・福祉の向上に貢献する」、これが僕のやりたいことです。自分のやりたいことができるのは国の政府なのか、国際機関なのか、あるいはその他NGOなのかということなどは、しっかりと吟味していく必要があると思います。ただ、まだ病院実習も経験していないですし、将来のことはこれからもいろいろな人の話を聞きながら考えていきたいと思っています。いわゆる診療科としては、総合診療医のようなジェネラリストに現段階では惹かれていますが、ずっと臨床の現場に身を置き続けるかどうかは分かりません。大学院等も含め、一度は海外に出てみたいなという気持ちもあります。

―医療の道を目指す上で、大切にしている言葉はありますか?

小林 医学部に受かった時に、実家の近所に住んでいるおじさんから教わった、「上医は国を医し、中医は人を医し、下医は病を医す」という言葉を大切にしています。僕がWHOなどに入って医療分野での国際協力に携わりたいということや、ポピュレーション全体を健康にしていくことに興味があると話した時に教わった言葉で、すごくいい言葉だなと。あともう一つ、「医療というのはサービスであり、そこには需要と供給がある。供給はもちろんだが、需要を育てることも必要だ」という言葉です。

―これはどなたの言葉でしょうか?

小林 これは今年の春に、ポルトガルの医療政府でインターンをしていた時にお世話になった方が言っていた言葉なのですが、国の医療・健康を推し進める上で重要なことだなと感じました。医療において供給を国や医療者側とすると、需要というのは国民の側で、一人一人の健康に関するリテラシーや情報アクセスの度合いなどを指します。それらを育てることで、医者側もきちんとガイドラインやエビデンスに基づいた診察をしなければいけなくなる。需要側が育つことで供給側も育っていくんですね。ポルトガルでは国が作った共通の電子カルテを、ほぼ全ての病院が使っているんです。国民一人一人にヘルスに関する個人番号があり、どの病院でも診察の際には医者のIDと患者のそのIDを使って電子カルテにログインし、カルテを書いていきます。過去に受けたワクチンの情報なども含め、今までの医療情報が全て紐付けされていて、いわゆるPHR(※2)・EHR(※3)がすごく進んでいてとても勉強になりました。

―最後に後輩へメッセージをお願いします。

小林 “学生時代を全力でやりきる”こと。ある先生から、「日本の学生はもっと時間を有効活用しないともったいない」「これだけ自由に時間を使えるのは学生の時だけなのだから」と言われたことがあります。それから僕も人へ会いに行ったり、インターンへ申し込んだりと、積極的に活動するようになり、ポルトガルの医療政府機関でのインターンも、ある出会いがきっかけで実現しました。日本の厚労省でインターンをしていた時に、厚労省の方が、たまたまその時日本に来ていたポルトガル政府のeHealth担当機関のトップの方を紹介してくださったんです。親睦を深めるうちに、彼の下でインターンとして受け入れてもらえることになりました。幸運にも人との出会いがうまく連鎖して、道が切り拓けたんだなと思います。学生時代がまだ長く残されている後輩の皆さんには、将来自分が何をやりたいのかを考えつつ、今しかできないことにどんどんチャンレンジしていただければなと思います。

※1;JAGES とは、Japan Gerontological Evaluation Studyの略。
※2;PHRとは、Personal Health Recordの略。
※3;EHRとは、Electronic Health Recordの略。

 

ドクターズプラザ2019年9月号掲載

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