Vol.154 2021年5月号

川柳上手は生き上手

江畑 哲男 さん

(一社)全日本川柳協会副理事長、麗澤大学オープンカレッジ講師


私事で恐縮ですが、新年早々川柳界の大きな賞を頂戴しました。「礒野いさむ賞」という名の賞です。新聞( 千葉版)に掲載されたこともあって、皆さんからお祝いの言葉を頂きました。
授賞理由は「川柳の普及と川柳文化の向上に貢献」したことが挙げられています。七〇歳以下の受賞は初めてのようです。
さて、コロナ禍に明け暮れたこの一年でした。川柳は所詮趣味。不要不急( 笑)の文芸ですが、人間は「食べて」「寝る」だけの生活では満足できません。以前にも書いたとおりです。
コロナ下の窮屈な生活の中で、全国の仲間を励まし続けました。無料通信添削講座の開設や川柳ブロ
グの連日更新をはじめ、手紙や電話、通信機器を駆使する日々でした。すると不思議なもので、同好の士を励ますつもりの自分がいつしか励まされたりしているのです。この間やりとりした手紙やメール類は通常の数倍になりました。仲間も、そして自分自身も頑張りました。
そうそう、本欄にもたくさんのご投句が寄せられております。ありがとうございます。
「川柳上手は生き上手」( ←小生の造語です、笑)、そんな皆さんであることを心から願いながら、いつも以上に良い選と選評を心掛けました。
まずは、誌面の許す限り採った佳作から。

健康で一人浮いてるクラス会 (やじろべー)
あるある!、そんな一句。

オンラインみんな社長の体型に (チュン子すずめ)
踏む位置を変えて二度乗る体重計 (しなやかーる)
這えば立て立てば歩けのつらいリハ (ちょい丸親父)
ユニークな文句取り。つらさを詩にした。

退くつに靴をはかせて七〇〇〇歩(正田悠子)
掛け調の限度はこのくらいまで。

かかりつけ医最低限でお付き合い (残日録)
健康な妻さえ居れば憂いなし (上村ひろし)
偏食に野菜ジュースが救世主    (百花)
作者は十八歳。素直さが良い。

巣ごもりで健康体を持て余す(あざみのかかし)
ほどほどにお酒運動ディスタンス (還暦翁)
三つ並べた「ほどほど」。そこが良し。

ステイホーム上司居ないが妻が居る(西宮のフーコー)
「妻が居る」の後の余韻。微妙デスね。

ストレス解消快眠を取り戻し (須藤美智子)
アイドルにときめく八十路肌の艶(髙山月ヱ)
百年を妻と気長な散歩道    (もふもふ)
文芸の香りと情感豊かな一句です。

Vol.154
ベスト作品

  • 巣ごもりを

    してもおなかは

    減りまする

    近江の姫

  • 異常なし

    医者に褒められ

    増えた酒

    軍司洋文

  • 妻元気

    だったらボクも

    元気です

    古田水仙

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