2023年4月

読書の楽しみと川柳2

江畑 哲男 さん

(一社)全日本川柳協会副理事長、麗澤大学オープンカレッジ講師


読書は楽しみたいもの。

若い頃は難解な哲学書や抽象的な小説にも挑みましたが、現在ではそうした気力は少ぅし失せつつあるようです。何と言っても楽しい本が一番。こちらの方に読書傾向が傾きつつあります。

ましてや、コロナ下。時として新しい知識や視野を獲得できる本にも取り組んでおりますが、「読書を楽しむ」という基本線に変わりはありません。

さて、いま売れている本。読まれている本。高齢者向けに書かれた書籍が好調のようです。もともとこの世代は、大の活字好き。好奇心がくすぐられたら、手にとって読んでみようと思うに違いありません。

小説の分野では、内館牧子の高齢者小説シリーズが大ヒット。その最新刊『老害の人』(講談社)、小生も読みました。めっちゃ、面白かった!

「こんな老人にはなりたくない!」、そう思って読むのも一興。「いる、いる」「困っちゃうんだよなぁ~」と苦笑いしながら読むのもまた楽しいでしょう。

もう一つは、エッセイ。和田秀樹精神科医が健筆をふるっております。高齢者が励まされる内容です。『歳の壁』(幻冬舎新書)から引用しましょう。左記のようなアドバイスが並んでいました。

○好きな物を食べる。

○好きな時に好きな量を食べる。

○寝たい時に寝る。引退後は昼寝も自由。

○好きな人とだけ付き合う。

○好きな事はできるうちにしておく……

こんなアドバイスなら元気も出ますよね。読書の楽しさもひとしおです。

いずれも、人生100年を見据えた好著といえるかも知れません。

さてさて、川柳も頑張りましょう!

 

まずは、佳作から。

妻と行く旅行 心もリフレッシュ(須藤茂夫)

ナッツ食べ小魚食べてつまる喉(うちゅ。)

5類でも手洗いうがい忘れない(すーざん)

足の爪切る度自覚するメタボ  (破れ蓮)

一駅を歩き見つけた美味い店 (さくらく)

孫抱いて鍛え二の腕若返り (やんちゃん)

維持したい体重・血圧・心の余裕(末広ちむ)

食べすぎて脂肪フラグが立った腹(微笑亭さん太)

「若いね」のその一言で背筋伸び(あらよ)

健康なうちにやることたんとある(アキヒロ)

夫婦して筋トレはまり美ボディに(豆大福)

健康はわが身を護るパスポート(オストアンデル)

有休は出来る社員の証明書(しらすぅの父)

健康は失う前に意識する  (ヒロコ)

 

お待たせ。ベスト3作品の発表です。

◎気づいたら診察券もデジタル化(米がうまい)

時代でしょうね。少子化や人手不足もあって、デジタル化は避けられないようです。そう、「時代を詠む」のも川柳の特長です。

◎カロリーは貧乏ゆすりで消費する(老人生)

たはははは。これぞ川柳。貧乏ゆすりで消費するカロリーなどたかが知れていますが、こういう「誇張」が楽しいのです。

◎踏ん切りがなかなか付かぬ脱マスク(フーマー)

一転して、こちらは真面目派。仰るとおり。他人の目を気にしたり、対人配慮をついついしてしまうのが、良くも悪くも日本人の特徴なのです。

今回川柳
ベスト作品

  • 気づいたら
    診察券も
    デジタル化

    米がうまい

  • カロリーは
    貧乏ゆすりで
    消費する

    老人生

  • 踏ん切りが
    なかなか付かぬ
    脱マスク

    フーマー

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