Vol.153 2021年1月号
時代はオンライン !?
江畑 哲男 さん
(一社)全日本川柳協会副理事長、麗澤大学オープンカレッジ講師
コロナ禍以降、テレワークがすっかり定着したようだ。小生も、そうした時代の変化にナントカ付いていっている。
もっとも、以前から川柳関係の仕事はパソコンだった。依頼原稿はパソコンで仕上げ、完成後にファイルを添付し送信する。紙の原稿は校正用だ。確認のために送るという、いわば補助的な手段に紙原稿は成り下がってしまった。
全くの余談。文学館などにはよく著名な作家の手書き原稿が展示されているが、近ごろの作家は原稿を手書きしない。余計な心配ながら、文学館の展示類も今後は変化せざるを得ないのではないか。
さて、「時代はオンライン」である。八月のある猛暑日。Zoom を使って川柳の大会が開催された。川柳家50名ほどが在宅のままで大会に「出席」することができた。コレは快挙。高齢化著しい川柳界にあって、初めて実現したオンラインの大会だった。オンラインだと、コロナ感染も熱中症も心配しないで済む。加えて無料。タダで川柳が楽しめる。川柳界にも新しい時代がやって来たのかも知れない。
こうした中で、わが全日本川柳協会へも外部の団体から相談やら企画やらが持ち込まれるようになった。例えば、公募した川柳の講評を動画で配信できないか。大学の留学生センターからはオンラインによる川柳の講義をしてほしい、などなど。
他方、圧倒的大多数の川柳仲間はオンラインの外側にいる。昔ながらの句会しか知らない。この現状、こうしたアンバランスをどう解消していったらよいのだろう? 時代の要請に対して、江畑個人として、あるいは全国組織の川柳協会としてどう応えていくべきなのか? これが現下の悩みであり、課題でもある。おっと、珍しく愚痴っぽくなった。
では、皆さんの作品に移ろう。まずは佳作から。必要に応じてコメントを加えた。
不健康先に立たずに後に後悔 (huku)
健康は最重要の資本なり (なおぞー)
お若い作者の二句。このままでは単なる説明。この先を読むか、具体性を加えたい。
健康も恋も二人でいかがです? (エダ)
やはりお若い作品。恋を加えて少し味が出てきました。もう一歩デス。例えば「健康も」を、「お散歩も」くらいに直す?
太ったのは外出自粛と言い訳し (犬好きマルエイ)
三文の徳を信じて5時起床 (土筆)
俺健康愛情弁当御陰様 (たん)
汗かいて運動気分暑いだけ (テリアモン)
控え目にスポーツをする新コロナ (竹澤聡)
本人に無断で背中丸くなり (牛美)
肺活量家で鍛えるしゃぼん玉 (近藤千草)
肺活量としゃぼん玉の落差が面白い。
Vol.153の
ベスト作品
-
◎トップ賞
手土産も
ナシでコロナは
長居する
木村厚生
-
あわてん坊
マスクしたまま
お茶を飲み
イッチー
-
すぐできた
そんな自分が
なつかしい
千瑠