Vol.150 2020年1月号
川柳は標語に非ず
江畑 哲男 さん
(一社)全日本川柳協会副理事長、獨協大学オープンカレッジ講師
いつもたくさんのご投句、ありがとうございます。
健康をテーマに一句モノす。身近なところから題材を探して、作品の構成を考え、最後には指を折って五七五にまとめ上げる。右の過程をたどるだけでもかなりの脳トレになります。川柳が健康に良いというのも、頷けるところでしょう。
ナマの言葉は避けよう!
さて、そんな皆さんに今号ではアドバイスを。五七五にまとめたけれど、どうもイマイチ。そんな作品になっていませんか? 単に単語を並べただけ。そんな現状から何とか脱したいものですね。
ではどうするか? あまり芳しくない例から、挙げさせていただきましょう。
「長生きは適度の健康食事から」、「母の願いみんな健康一番だ」、……。
上は、注意事項が並んでいます。あるいは、健康の大切さを訴えております。しかしながら、言葉がナマのまんまです。まるで、標語のようになってしまいました。この点が残念でした。
「標語」は分かりやすさが命。伝わればよいのですが、川柳は違います。
川柳には個性が必要です。作者自身の発見やひらめき、感動・疑問・喜怒哀楽等を、作品に滲ませてください。作品中の句語が作者オリジナルの個性的な言葉遣いだったら、申し分ありません。川柳って、そんな人間くさいポエムなのです。では、佳作から披露しましょう。
実るほど垂れては困る腹の肉 (安田蝸牛)
歯が痛む妻は静かで丁度いい (安田蝸牛)
炎天下コンビニ行くも命がけ (しゃりべん太郎)
ポケ活で歩く楽しみ増えました (のりさん)
ギアひとつ落として登る老いの坂 (かわちゃん)
手術後の眼でじっくりと本を読む (竹澤聡)
イケメンに会いに行くのさ病院へ (しゃん)
次回に期待、入選一歩手前の作品です。
▷縦縞を歪んで見せている脂肪 (牛美)
▷容赦なく腹肉つかむもみじの手 (ぴーなっつ)
▷風邪を引き消毒代わりと酒を飲む (食欲の鬼)
▷お年寄りシルバーシート座らない(イツカノール)
▷排便は内臓からの定期便 (三宅亜紀)
▷今の世は汗をかくのに金が要り (タヌキ)
▷二〇歳からサプリメントを摂る時代(良華)
▷のら仕事体力づくり米づくり (だっぺ)
▷ストレスを減らすためよと家事放棄(KENZ)
Vol.150の
ベスト作品
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元気な声で
知る寝坊
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金はないけど
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マンボー
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