Vol.135 2016年9月号
日本語は面白い
江畑 哲男 さん
(一社)全日本川柳協会常任幹事、早稲田大学オープンカレッジ講師
おもしろ日本語の発見
プロ野球日本ハムファイターズの外国人手に、レアードというホームランバッターがいる。なかなかの人気者だそうだ。ホームランやタイムリー打を打つと、寿司を握るパフォーマンスをしてみんなを笑わせている。どうやら日本のお寿司が大好物らしい。
レアードのヒーローインタビューも、人気を博している。その受け答えがじつに巧みなのだ。
アナウンサー
「すばらしいサヨナラホームランでした。感触は如何でしたか?」
レアード
「あの〜、そうですね。」という前置きをいったんは入れる。その後、本来の回答を今度は英語でまくし立てていく。
前半は日本語、後半は母国語たる英語で喋る。このギャップがじつに面白い。観客席からはやんやの大喝采。もちろんレアード選手自身、日本語の会話ではこうした間合いを入れてから本文が叙述されていくということを知っていて喋っているのだ。いったい、どこで学習したのであろうか。
日本語の場合、会話の受け答えには「あの〜」とか「ええと」とかいう単語を差し挟むことが多い。本文の前に、こうした一見無意味な応答の感動詞を差し挟んでから本来の会話に入るのである。
例えば次のように。(斜体部)
Aさん:Bさん、こんにちは。いまちょっとよろしいですか?
Bさん:あっ、はい。結構ですよ。
Aさん:じつは私、今度〇〇へ行こうと思うのですが、……。
Bさん:ほほう〜。いいですね。で、何か?
こうした会話の際によく出てくる感動詞的な、あるいは接続詞的な単語は、学校文法では習わない。国語の授業で取り上げるのは、主として書き言葉が中心だからだ。
例えば「で」という単語は、上の使い方では接続詞になるが、学校文法では接続詞「で」を認めていない。このあたりが、理論と実際の食い違いで面白いところだ。
「で」(笑)、以後数回「おもしろ日本語」をこの連載では取り上げていく。引き続きご期待を乞う。 それではいつもどおり、惜しくも入選に届かなかった作品から。
▷薄味に慣れ外食に付き合えず (牛美)
▷動と静異なる趣味を持つことに(うなたろう)
▷入院中爪は切ったが鼻毛伸び (ジョン)
▷健診に行くのが怖いメタボ腹(しゃべりん太郎)
▷骨密度上げて乗り切る老いの波(都わすれ)
Vol.135の
ベスト作品
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◎トップ賞
元気です
手紙に書ける
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コロコロ
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投薬も
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一湖
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リオ五輪
周ちゃん