2020

09/14

感染症が広がる中での 薬局の役割

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小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス取締役、株式会社ファーマ・プラス取締役、一般社団法人保険薬局経営者連合会 副会長

ドクターズプラザ2020年9月号

薬剤師のお仕事(8)

「0410通知」で変わりつつある医療現場

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大よる緊急事態宣言が解除され、再び感染者が増加傾向にあり、収束がいつになるのか、不安が広がっています。4月10日には、新型コロナウイルス感染症による院内感染を含む感染防止のため、非常時の対応として、オンライン・電話による診療や服薬指導を、希望する患者によって活用されるよう制度を見直した通知が厚生労働省から発令されました。いわゆる「0410通知」と呼ばれているものです。向精神薬や医療用麻薬を除く薬剤について、病院やクリニックに行って受診しなくても、電話やオンラインによる対面診療において処方箋を発行し、患者様の希望の薬局にその処方箋をファックスし、患者様は直接薬局に処方箋を持参しなくても、薬をもらうことができるという方法です。処方箋による薬は、近所の薬局を指定してご自身で取りに行くことはもちろん、受診同様に電話やオンラインで薬に関する説明や確認、服薬指導を受け、郵送によって受け取ることも可能です。

オンラインによる診療は平成30年の診療報酬改定で離島などの遠隔地に対するものとして新設されましたが、本年の診療報酬改定では離島に限らず、生活習慣病や認知症などいくつかの疾患に限って、安定している患者に行えるよう拡大されました。また調剤報酬改定においても、オンライン診療を受けた患者に対するオンライン服薬指導が新設されました。0410通知はそれをさらに拡大してビデオ通話に限らず電話による診療でも良いとし、初診から可能とし、オンライン診療を推し進める結果となりました。

このような事態は薬局薬剤師にとって、どのような影響を及ぼしていくのでしょうか。これまで、病気の心配があれば病院に受診して医師の診断を受けて安心したり、病気の改善のための治療に向かってきました。しかし、病院の待合室は私たちにとって最も行きたくない場所になってしまったわけです。なるべく病院に行かないように、なるべく診療時間は短くなるように……、そのような状況の中で、地域の薬局は身近な相談相手としていよいよ頼りにされるきっかけになるのかもしれない、と私は期待しております。

バーチャルな生活が身近な時代でも、職能を発揮して患者さんを支える

新型コロナウイルス感染症は、将来、東京オリンピックが延期されるほどの感染拡大があった感染症として、歴史の教科書にも載るようになると思います。第5世代移動通信システム(5G)や人口知能(AI)の普及とともにバーチャルな生活がさらに身近になることでしょう。実際に患者さんに会わなくても、診断や処方、服薬指導が日常となる未来がすぐそこにきていることを感じます。

今まで私たちはリアルに会うことを当たり前としてきました。一緒に食事をすることで親交を深め、それがビジネスでも重要とされてきました。医療においても患者さんに直接接することで信頼関係を構築し、そのためのコミュニケーション能力も重要とされてきました。オンラインコミュニケーションが便利な反面、今後それでは対応しきれないリアルな部分が貴重になっていくのではないでしょうか。

新型コロナウイルスに対応した医療従事者に対して、厚生労働省から慰労金が支給されることになりましたが、薬局薬剤師は患者に対して直接処置などを実施しないということから除外されました。しかし、薬局薬剤師の中にも、在宅医療において直接患者の治療に従事している者も大勢おります。新型コロナウイルスの影響で、これまで入院して治療してきた末期のがん患者などが、家族と面会できないことなどから退院を希望するようになり、私の薬局でも毎日のように在宅患者の依頼があります。病院と同じように医師や看護師と協力して迅速に対応し、患者様を支えております。薬をお届けしたり、服用方法や使用方法をご説明したりすることはオンラインなどのシステムを利用して十分対応できます。私たち薬局薬剤師がオンラインではできない医療分野で薬剤師の職能を発揮しつつ、健康維持のお手伝いと、必要な場合には迅速に医師の受診につなげられるような拠点としての薬局となれるように、今後も活動していきたいと思います。

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