2018

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医療法が定める立入検査

  • 医療法

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竹内 千佳
『医療法』連載
行政書士。成城大学非常勤講師。スピカ総合法務事務所・所長。医療法人の許認可業務及び非営利法人の許認可業務を専門としている。
実務の傍ら、現在は筑波大学大学院博士課程に在籍し、医療法の研究を行う。

ドクターズプラザ2018年9月号掲載

医療法(8)

今回は、医療機関の開設時やその後定期的に行われる保健所による立入検査について見ていきます。医療機関は良質かつ適切な医療を担う役割を持ち、行政はこの監督をする役割を持つという理念があります。保健所による立入検査も、こうした理念に基づき医療法が定めているものです。立入検査は、医療法25条1項に定めがあります。同法は、必要があると認めるときに立入検査ができる旨を規定しています。通常は、開設時とその後定期的に行われます。立入検査については、厚生労働省医政局による基準が示され、これに従って各自治体が立入検査要綱を作り、当該要綱に則って検査を実施していきます。ここでは、検査においてチェックされるポイントを中心に、検査の流れを見ていきます。

⒈院内掲示

医療機関内の見やすい位置に、下記の情報を掲示しておく必要があります。

•管理者名及び医師の氏名
•診療日時
•各部屋の使用用途の表示(例:診察室、レントゲン室等)
•個人情報の管理体制を明示したもの

⒉医薬品の管理体制

医療機関で使用する医薬品は、各法によって保管義務が定められています。管理簿の記録を行い、きちんとした保管管理体制を採ることが必要です。特に医薬品については、紛らわしい薬剤の誤用防止方法や、遮光が適切か否か等も確認事項となります。

•麻薬……鍵付きの麻薬専用保管庫に保管、適宜麻薬帳に記載をし、在庫状況を把握
•毒劇物……鍵付きの毒劇物専用の保管庫を設け、その他の医薬品と区別して保管
•向精神薬……鍵付きの専用庫にて保管
•冷所保存品……専用冷蔵庫に保管、温度計の備え付けがあると望ましい

⒊廃棄物の管理体制

医療廃棄物の管理や、感染性廃棄物の適切な処理が求められます。

•バイオハザードマークの明示
•感染性廃棄物の管理

⒋危機管理体制

医療機関内は、スプリンクラーの設置又は適当数の消化器の設置が義務付けられています。設置数は、医療機関の施設の規模や、耐火構造等によって変わります。

⒌文書の管理体制

医療機関は、医薬品をはじめとし、高度医療機器等の危険を伴うおそれのあるものを使用します。また、患者の個人情報を扱い、ここには病歴といったセンシティブ情報も含まれることから、安全な管理体制が求められます。その他、適切に開設していることを示すため、開設届等は常に備えておく必要があります。

•診療所開設届
•各種装置の備付届
•医療に関わる安全管理や院内感染対策の指針に関する文書
•医薬品の安全な使用法に関する文書
•医療従事者の免許の写し

また、下記は開設後に保管が求められるものです。

•カルテ又は電子カルテのデータ(保管義務は5年間)
•医療機器の検査記録(エックス線装置の定則測定記録等)
•職員安全研修記録

前述したもの以外にも、例えば点滴の管理や流し台の管理等、各所のおける管理体制がチェックされます。

•点滴管理……院内感染の防止体制が採られているか(使用済み針の処理方法、ディスポの再使用はないか等)
•流し台の管理……安全管理体制が採られているか(手を洗った後の拭き取り方法、清潔区域と不潔区域が明確か等)
•廊下……十分な広さがあり安全で衛生的であるか、余計な物が置いていないか、転倒リスクはないか、床面は消毒しやすいか等

検査結果に問題があった場合、それが軽微であれば検査の現場で口頭の助言がなされます。助言を越えて、行政指導を行う場合には、指導を行った旨の記録が残されます。また、改善報告書の提出を求められることがあります。より重大な違反等があった場合には、改善命令(医療法24条、28条)や開設許可の取消し(医療法29条)、事件に関する場合には告発(刑事訴訟法239条2項)が行われることがあります。

◎立入検査内容に関連する主な法令

•医療法
•医師法
•歯科医師法
•保健師助産師看護師法
•診療放射線技師法
•薬剤師法
•薬機法
•麻薬及び向精神薬取締法
•毒物及び劇物取締法
•労働安全衛生法
•廃棄物の処理及び清掃に関する法
•消防法
•電離放射線障害防止規則
•放射線障害防止法 等

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