2021

01/07

オンライン資格確認

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小黒 佳代子
株式会社メディカル・プロフィックス 取締役
株式会社ファーマ・プラス 取締役
一般社団法人 保険薬局経営者連合会 副会長

ドクターズプラザ2021年1月号掲載

薬剤師のお仕事(9)

マイナンバーカードの利用が医療費削減につながる

厚生労働省では医療機関でのマイナンバーカードを使用したオンライン資格確認のシステム導入を進めており、令和3年3月より随時開始予定です。オンライン資格確認とはマイナンバーカードに入っている医療保険情報や住所などを医療機関で確認できるというものです。

医療機関に受診するときや薬局で処方箋によってお薬をもらう時には、保険証が確認されます。そして、患者さんは医療費の自己負担分を病院や薬局に支払い、医療保険が負担する分は毎月医療機関より保険組合に請求されます。これをレセプト請求と呼んでいますが、保険証が更新になったり、変更になったりした際に修正されず、誤ったままレセプト請求された場合には返戻となって医療機関に戻されます。正しく再請求される場合もありますが、不明のまま未収金となってしまう医療費もあります。

年間900万件といわれている返戻ですが、オンライン資格確認によって、その4割が解消されると期待されています。また、返戻作業に関わるコストも削減することができます。

医療機関や薬局の現場における毎日の業務においても、保険証の確認や入力作業がなくなるばかりか、返戻によって保険情報が不明のまま未収金となってしまう医療費も削減することができるということです。この仕組みを進めるためには、国民がマイナンバーカードを持つこと、医療機関や薬局でマイナンバーカードリーダーを設置することが必須で、厚生労働省では医療機関のカードリーダー設置にかかる補助金も設定しています。

災害時でも薬物療法を継続できる

オンライン資格確認では医師、歯科医師の有資格者に限っては患者さんの特定保健指導の内容が確認できますし、令和3年10月からは、医師、歯科医師、薬剤師は病院や薬局で処方された薬剤の薬剤情報が閲覧できるようになる予定です。また災害時にはマイナンバーカードによる資格確認がなくても資格確認端末からこれらの情報が閲覧できるそうで、お薬手帳や保険証がなくても災害時に薬物療法が継続できるというメリットもあります。

平成4年度には、特定保健指導以外に手術やそれを実施した医療機関などの情報も順次閲覧できるように追加されるスケジュールで、これらの情報を基に電子処方箋の仕組みを構築していくことを目指しています。これらのことは、医療における業務のコストを減少させるだけでなく、患者さんにとっても、多剤併用の防止や、適正な医療、薬物療法につながる大きな仕組みとなることは間違いなく、今後のデータヘルスの基盤となることでしょう。

オンライン診療の追い風に⁉

オンライン資格確認による有資格者の薬剤情報の閲覧や、その先の電子処方箋が実現したら、私たち
薬局薬剤師の業務はどのように変わるのでしょうか。私たち薬局薬剤師の重要な業務の中に重複投与や相互作用の確認がありますが、これらを医師が事前に確認して処方箋が発行できることになります。また、紙の処方箋が無くなくなるということは私たちにとって大きなことです。これまでの調剤薬局は医療機関の近くにあるということが経営上とても重要でした。薬局は長い間、独立した医療機関として地域の中に在るべきとされ、病院と公道によって隔たれていなければならないとされてきましたが、2016年の規制緩和で、患者の利便性から病院の敷地内に薬局を開局しても良いとされました。大手の調剤薬局チェーンは患者獲得のために現在も敷地内薬局の開設に積極的に取り組んでいます。紙の処方箋が発行されて処方箋の有効期限が発行日も含めて4日間ということから、患者さんにとって、できるだけ病院の近くで薬をもらって帰宅するということが便利だったのかもしれませんが、電子処方箋となって、紙の処方箋を手渡されなくなったら、薬局をどのように選択されるのでしょうか。

オンライン資格確認はオンライン診療の追い風にもなることが予想され、特に慢性疾患においてはオンライン診療によって電子処方箋が発行され、オンライン服薬指導を行って自動的に薬が自宅に届く……そんな未来がやってくるのでしょうか。平成27年に当時の塩崎厚生労働大臣は「病院前の景色を変える」と発言し、さまざまな波紋を呼びました。今まさにその時代が到来し、薬局はその存在意義を改めて問われるのかもしれません。そんな時、選ばれる薬局、選ばれる薬局薬剤師を目指したいと思っています。

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