2025

02/03

認知症の理解を深め備えておくこと!?

  • 在宅医療

四街道まごころクリニック
院長
梅野 福太郎

在宅医療(6)

最近は、認知症について関心が高まっています。そこで今回は、AさんとBさんのケースを紹介しながら認知症について考えたいと思います。

ケース①:Aさん(73歳・女性)

2カ所の病院で認知症の評価を受け、1つの病院ではアルツハイマー型認知症であると診断され、もう1つの病院ではそうではないと診断されました。どちらが正しいのか? と気持ちが不安定になっていました。それで、認知症初期集中支援チームに依頼がありました。月に1回、地域包括支援センターに来所され面談を実施することにし、チーム主催の認知症啓発講座も受講してもらいました。相談の上、これまでの3つの処方先をまとめてチーム医師の外来に受診し処方対応することにしました。そして、投薬は見直し、減量を図ることにしました。認知症の薬は、明確な効果を感じないが副作用も認めず中止することでの不安を考慮し、継続することにしました。

現在は、フラダンスや盆踊りなど精力的に参加しており、認知症への不安の吐露も無くなり笑顔が絶えません。

ケース②:Bさん(80歳・女性)

「クーポン券の再発行を繰り返し行う」と地域包括支援センターに情報提供がありました。面談内容や約束の日を忘れることもある他、夫が他界した後、不眠が強く、死亡の手続き、財産管理などができていませんでした。日常生活は自立できていますが、不安感増長や短期記憶障害により日常生活に支障を来していました。当初、認知症の自覚はありませんでした。

認知症初期集中支援チームに依頼があり、介入後、関係性が築かれ介護保険を申請しました。ケアマネジャーの担当を付けて、デイサービスを開始すると“楽しい”と言えるほど心情に変化がありました。訪問介護も介入開始する。認知症は進行しているものの安心な体制を整えることができました。

必ずしも検査で確定するわけではない

認知症の年齢階級別有病率は2022年調査によると、65-69歳では1.1%、75-79歳は7.1%、85-89歳では32.8%、90歳以上では50.3%とされています(*1)。

もともと2025年時点で認知症の方は700万人にも達すると予想されていましたが、2022年時点の調査においては470万人と下方修正されています。認知症有病者の予想は、世界的にもそのように下方修正の傾向があり、おそらく認知症の予防への取り組み、すなわち生活習慣等の改善を含めて対策が功を奏しているのだと考えられています。

認知症の定義は、日本神経学会の『認知症疾患治療ガイドライン2010』によると、「一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言い、それが意識障害のない時に見られる」とされています。そこには、画像検査を含めたあらゆる検査は要件に入っておらず、もちろん検査結果は判断の有力な手掛かりにはなるとは言いつつも、必ずしも検査で確定するわけではありません。そのため、ケース①のように認知症かどうか? で思い悩むケースが発生してしまうのです。

認知症に対する取り組み

2019年に『認知症施策推進大綱』が取りまとめられましたが、その大綱の取組の基本的考え方の特徴として以下2つがありました。

・「予防」と「共生」を車の両輪として施策を推進
・主語を“認知症の人”とする

それが2024年1月に施行された『認知症基本法』では、以下のように変更と修正がされています。

・これまでで最も“共生”を重視している
・“医学モデル”から“社会モデル”への移行
・主語が“認知症の人を含めて国民一人一人が”

国全体が時間をかけつつも、しっかりと目指すべき方向性に向かっているのではないかと考えられます。

認知症に特化した専門チーム

認知症にまつわることでお困りの場合は、地域包括支援センターに相談すると対応してくれます。地域包括支援センターで解決が困難な場合は、認知症に特化したチーム、認知症初期集中支援チームで対応を図ることがあります。それは、「複数の専門職が家族の訴え等により認知症 が疑われる人や認知症の人及びその家族を訪問し、アセスメント、家族支援などの初期の支援を包括的、集中的(おおむね6ヵ月)に行い、自立生活のサポートを行うチーム」のことです。

私が在籍する千葉県四街道市では、平成30年3月に認知症初期集中支援チームが発足。医師1名、保健師1名、社会福祉士1名の3名1チーム構成です。地域包括支援センターからの依頼があり対象となった場合、課題を抽出し、目標設定、次回までの行動予定を決定。月2回ほどの会議で半年間を目安にフォローします。ケース②のように適切な医療へつなげたり、介護保険を導入、介護体制の確立、または地域のカフェや体操教室などインフォーマルサービスにつなげたりします。また、認知症に関する市民啓発講座も年に3回以上開催しています。

漠然と不安となりがちな認知症ですが、しっかりと理解を深め備えておくと、皆が安心して生活を送れるのではないでしょうか。

*1;厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/content/001279920.pdf)参照

フォントサイズ-+=