金本すず さん
国際医療福祉大学医学部医学科6年
2023/07/01
“グローカル”な医師を目指して
医療系学生インタビュー(59)
医学、教育、国際支援……迷って選んだ大学
―医師を目指したきっかけはなんですか?
金本 私は昔から人と話すのが好きで、医師はまさに子供から大人までいろいろな人と関われる仕事だと思ったからです。両親が医師ということもあり、常に選択肢として頭の中にはありました。
ただ、医師だけでなく教育や国際支援にも興味があり、医学部受験を決めるには時間がかかりました。親も「好きなことをしなさい」と言ってくれたので、心置きなく迷って、最終的に決めたのは高校2年生の頃です。
―国際医療福祉大学を選んだのはなぜですか? また、入ってみた印象はどうですか?
金本 英語や海外の文化に興味があったので、英語の授業や留学生の多さに魅力を感じて選びました。当時2年目の新しい医学部というところにもワクワクしました。
また、私は生まれも育ちも静岡なので、県外の新しい環境に身を置きたい気持ちもありました。最後の決め手は、面接の先生がとても優しく素敵な方だったことです。入学してみると、先生も同級生も温かくて愉快な人が多いなと感じます。
世界の医療に触れる機会があるのも、良かったと思う点の一つです。例えば、この学校では6年次に全員海外で実習を行うんです。私も先月(4月)、アメリカ・テキサスのHouston Methodist Hospital感染症科で実習してきました。すごく刺激的で、学ぶことばかりの経験でした。実習でモチベーションが高まったこともあり、今はUSMLE(アメリカの医師国家試験)の勉強をしています。
―卒業後、海外で活動する予定ですか?
金本 それに関しては、悩んでいます……。ひとまず初期研修は日本で受ける予定ですが、アメリカでの実習は素晴らしい経験でしたし、国外で挑戦したいという気持ちもあります。
ただ同時に、地元の静岡に貢献したいという目標もあるんです。もちろん、どれか一つしかできないとは思いませんが、自分がどういう道を進むかは迷い中です。
学外活動が学びのモチベーションになった
―医系学生団体IFMSA-Japanで活動されていたそうですね。どんなことをしていたのでしょうか?
金本 1年生の春に、「Africa Village Project」という企画でザンビアを訪れました。人々の暮らしや、現地の医師の活動に触れて、世界観がガラリと変わるような体験でした。
その後、こうした機会を多くの人に持ってほしいという思いから、IFMSA- IUHWという団体を立ち上げました。IFMSA-Japanの国際医療福祉大学支部というイメージで、IFMSA本部への窓口になったり、学内IFMSAメンバーの交流の場を設けたり、成田にイベントを招致してその運営を行ったりするチームです。今は後輩のメンバーに引き継いでいますが、新入生もたくさん入ってくれたようで嬉しいです。一緒に取り組む仲間がいるのは心強いですからね。
―その他にも、学外で活動されていることはありますか?
金本 学会に参加する機会も何度かいただきました。
一つは、日本医学英語教育学会学術集会で行われたOET(Occupational English Test:医療現場における英語力評価する試験)についてのパネルディスカッションです。海外で医師になることも視野に入れて受けた試験ですが、合格後に先生にお声掛けいただき、私のOET受験エピソードをお話ししました。
もう一つは、日本内科学会関東地方会にて行った症例報告です。呼吸器内科での実習の中で担当した一人の患者さんの症例について掘り下げて発表しました。こういった発信の機会は本当にありがたく、学びへのモチベーションにもなります。
広い視野と「目に見えないもの」を大切に!
―座右の銘や好きな言葉を教えてください。
金本 サン=デグジュペリの『星の王子さま』に出てくる、「大切なことは目に見えないんだよ」という言葉です。幼い頃から何度も読んだ本ですが、中学時代に読み返したところこの一節が心に響いて、そこから意識するようになりました。この言葉は、今の時代に大事にしたいこと考えさせてくれると思います。
今は社会のあらゆる要素が数値化・効率化されていて、AIの進歩も驚異的。医療のあり方もどんどん変わっています。そういう技術は便利ですが、人柄や個性といった人間らしさが失われるようで、怖いと感じることがあるんです。だからこそ、人との関わりや、人の持つ優しさなど「目に見えない」ものが本当の財産になるのかなと思います。これからの社会にあっても、この言葉を忘れず、目に見えない価値を大切にしたいです。
―今までの人生で影響受けた人はいますか?
金本 人生のロールモデルになるような方には何度も巡り合ってきました。私は昔から周りの人に恵まれていて、本当に感謝しています。
特に影響を受けたのは、高校の漢文の先生です。漢文の授業の合間に、よくこれまで出会った人や出来事についてお話ししてくださいました。先生から、人は誰でも持ちつ持たれつ生きているということ、そして広い視野(=鳥の眼)で世界を俯瞰して見るのが大切だということを教わりました。漢文は全然得意じゃなかったのですが (笑)、今でもたくさんのエピソードが心に残っています。
―将来はどんな医師を目指していますか?
金本 「どこでも働ける医師」です。アフリカ派遣の際に、聴診器とその場にある薬だけで治療を行う現地の先生方に感銘を受け、私もそんな風になりたいと思いました。ですから、全身を診ることができる内科医、特に、膠原病や感染症に興味があります。
そして、グローバルとローカルの両方の視点を持つ「グローカル」という言葉がありますが、まさに私の大学のモットーでもあるThink globally, act locallyを実践できる医師になりたいです。何よりも患者さんや周りの人との関わりを大切にしたいと思っています。
―医師を目指す後輩へのメッセージをお願いします。
金本 学生時代に、いろいろな人と話したり、いろいろな場所に行ったりする時間をぜひつくってほしいです。世界は広くて、選択肢がたくさんあるんだと気付く機会になります。
偏見を完全になくすのは難しいですが、若くて柔軟な今だからこそ、いろいろな価値観を持った人と話してバイアスを下げることに意味があると思います。
健康第一に、一緒に頑張りましょう!