2026
10/09
介護施設での救急搬送時『DNAR承諾書』の運用
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地域医療
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北海道
北海道社会事業協会 岩内病院 院長
地域医療・北海道(62)
在宅で終末期を迎える患者さんへの取り組み
以前から、北海道社会事業協会岩内病院(以下、岩内病院)では、在宅でさまざまな終末期を迎える患者さんに対して、救急搬送時の蘇生を行わないことの承諾書を作成し、運用していました。終末期を迎える患者さんは、何らかのがん(血液疾患を含む)、心不全、腎不全、呼吸不全が多く、また、高齢化率の高い地域のため、病気ではなく老衰もよく見られます。
この運用は、患者さんとその家族、医療施設(当院と地域の医院)、消防署の三者で、情報を共有して行われています。これまでも、在宅で過ごす患者さんのうち常に数人は、この承諾書を作成していました。その多くは当院で訪問看護・訪問診療されている患者さんです。ただし、当院で訪問診療に携わっている常勤の医師3人では24時間365日の在宅お看取りは難しく、現在のところ、状態が悪くなれば救急車もしくは家族がお看取り目的で病院に連れてくるようになっています。
こうした取り組みは、今まで在宅の患者さんだけを対象にして行ってきました。今年に入って、地域の介護施設に伺わせていただき、その関係職員(介護士、看護師、相談員、事務職員など)の方々と、今後の連携についてざっくばらんに話し合いました。その中で、ひとつ話にのぼったのが、ACP(*1)とその結果での救急搬送時DNAR(*2)でした。
(*1)ACPとは
アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)の略称で、人生会議のことです。簡単にいうと、「もし将来、自分で意思を伝えられなくなったら、どんな医療やケアを受けたいか」を、元気なうちから家族や大切な人、医療・介護スタッフと話し合っておくことです。
例えば、
1)どんな生活を大切にしたいか
2)これからも続けたいこと・避けたいこと
3)病気になったとき、どんな治療を希望するか
4)命を延ばす治療についてどう考えるか
5)意思表示ができなくなったとき、自分の代わりに考えてほしい人(代理意思決定者)
6)最期をどこで過ごしたいかなど
(*2)DNARとは
Do Not Attempt Resuscitationの略称で、心停止・呼吸停止になったときに、心肺蘇生(CPR)を「試みない」という方針です。DNARでは、本人の意思や価値観などを踏まえて、心停止した際にこれらの蘇生処置を開始しない、行わないことをあらかじめ決めておきます。
元気なうちに人生の最期を決定!?
介護施設に入所された当初は、元気に過ごされている方も少なくありませんが、徐々に身体や脳の機能が低下していきます。元気なうちに、どう生きたいか、どう人生の最期を迎えるかを、決定していただくことが増えてきています。その中で、治癒を見込めない持病の悪化や年齢的な衰え、いわゆる老衰などで具合が悪くなった時には、もう何もせずに、最期を迎えたいとの意思表示がされることが多くなってきています。また、入所された時点ですでに、ご本人の意思表示が難しい場合でも、家族の方から同じように、何もせずに最期を安らかに迎えさせてほしいとの意思表示がされることも多くなってきています。その場合は、何かあっても、心肺蘇生を希望されていないということになります。
当地域の場合、人員不足のため、すべての介護施設で、365日24時間のお看取りは不可能になっています。そのため、入所者さんの具合が悪くなり、心停止や呼吸停止になると、救急車で救急搬送となります。救急搬送先は、ほぼ100%岩内病院です。これまでは、入所者さんとその家族がACPにおいてDNARの意思表明をしっかりしていても、搬送時のDNAR承諾書が存在していないと、救急隊は心肺蘇生をせざるを得ませんでした。
今回、岩内病院と往診や入院などで、緊密に連携している介護施設において、当院の医師、もしくは、施設の医師と入所者さん、その家族の間でACPの内容を確認し、救急搬送時にDNARの意思表明がある場合は、承諾書を書いていただくことにしました。今までは、患者さん、救急隊、病院の3者でしか運用されていませんでしたが、新たに介護施設を加え、この承諾書は、施設、患者家族、救急隊、岩内病院の4者で情報共有することになりました。
運用後すでに、施設から心肺蘇生せずに当院に救急搬送され、当院で入院後、お看取りさせていただいた事例も出てきています。また、心肺停止ではなくても、施設から何らかの疾患で当院に入院された場合、しっかりACPがされ、患者さんとその家族が、どう生きたいか、またどう最期を迎えたいかが話し合われているのは非常に良いことだと考えます。
今後は、在宅患者さん、介護施設の入所者だけではなく、地域の住民の方々が、もっと元気なうちにACPをされるように、町役場を含めた行政と、取り組んで行きたいと考えています。