2026

10/07

在宅医療と骨粗しょう症

  • 在宅医療

四街道まごころクリニック
院長
梅野 福太郎

在宅医療(16)

厚生労働省の「国民生活基礎調査(2022年)」によると、高齢者が要介護状態になる主な原因の第3位が「骨折・転倒」(12.5%)となっています。関節の病気、高齢による筋力低下なども含めた「運動器のトラブル」全体では全体の約3分の1を占めており、認知症や脳卒中に並ぶ大きな原因です。

実際に、要介護状態の方に訪問診療をしていると、トイレ移動などの際に転倒して動けなくなり、救急搬送となるケースをしばしば経験します。

この「骨折・転倒」の背景に深く関わっている「骨粗しょう症」の治療や予防は、病院のみならず訪問診療(在宅医療)でもしっかりと取り組むことができます。今回は、高齢者の骨折リスクと最新の治療法、そして訪問診療でできる取り組みについて分かりやすくご紹介します。

1. 高齢者の骨折は「要介護」への入り口

高齢期の骨折は、単に「骨が折れて痛い」だけでは済みません。痛みのために体を動かせなくなると、急速に筋力が低下し(廃用症候群)、認知症が進行したり、便秘になるなど一気に介護が必要な状態になったりします。特に注意したいのが、以下の2つの骨折です。

(1)大腿骨近位部骨折(太ももの付け根の骨折)

転倒して尻もちをついたり腰や太ももを強く打ったりすることで発生します。多くの場合、痛みで動けず、手術や長期入院が必要になります。年齢や今後のADL(日常生活動作)を考慮し、保存的(手術せずに経過を見る)に経過観察することもあり、歩く能力に大きな影響を及ぼします。

(2)脊椎圧迫骨折(背骨の骨折)

尻もちをつくなどの衝撃だけでなく、骨粗しょう症が進むと「いつの間にか骨折」と呼ばれるように、自身の体重に耐えかねて背骨がつぶれてしまうことがあります。背中が曲がったり、強い腰背部痛を引き起こしたりします。

2. 骨粗しょう症の要因と治療の最前線

骨粗しょう症は、女性の閉経に伴うホルモン変化や、加齢による栄養不足(カルシウムやビタミンDの不足)、日光浴不足などが原因で進行します。

しかし、予防や治療の選択肢は大きく進化しており、その代表例が「テリパラチド」です。

(1)骨を新しく作る「テリパラチド」の特徴

従来のお薬の多くが「骨が壊れるのを防ぐ」タイプであるのに対し、テリパラチドは骨芽細胞を刺激して新しい骨をどんどん作る働きを持っています。特に背骨などの骨密度を短期間で大きく高めるため、重症な骨粗しょう症の方や過去に骨折を起こしたことがある方の治療に威力を発揮します(※生涯で通算24カ月までという使用制限があります)。

さらに、テリパラチドは従来薬と異なり、「骨折に伴う激しい痛みを和らげる効果(疼痛改善効果)」もあります。骨の修復・補強を根本から早めることで、骨折直後のツラい腰や背中の痛みが早期に軽減し、痛みのために寝たきりになるリスクを防ぎます。

そのため、このテリパラチド製剤をいかに投与するかは非常に重要になってきます。

3. 「訪問診療」で自宅で受ける骨粗しょう症ケア

「足腰が弱くて整形外科へ通えない」「車椅子での通院が負担で治療を中断してしまった」という方でも、訪問診療を利用すれば自宅で専門的な治療を継続できます。

(1)定期的な投薬・注射管理

骨粗しょう症治療薬には、飲み薬のほかに、ご自宅で使う自己注射や、医療者が訪問時に行う注射(週1回や月1回など)など、さまざまなタイプがあります。通院負担や認知機能、ご家族のケア体制に合わせた最適な治療法を訪問医が提案・管理します。

(2)採血や生活・栄養指導

定期的な血液検査で骨の代謝状態やカルシウム、ビタミンDを確認します。また、食事でのカルシウム摂取や日光浴の工夫など、生活面のアドバイスも行います。YAM値(20~44歳までの健康な若年成人の平均骨密度を100%としたとき、現在の自分の骨密度が何%に当たるかを示す数値 )で評価するので、その検査のために一定期間おきに通院することもありますが、最近は自宅で検査してくれる訪問クリニックもあります。

4. 「2度目の骨折」をなくす環境づくり

骨粗しょう症の治療と並んで大切なのが、「転倒させない工夫」です。訪問診療では、医師や看護師だけでなく、多職種と連携して生活環境全体を整えます。

①ご自宅の環境整備:コード類の整理、段差の解消、手すりの設置などケアマネジャーや理学療法士と協力して生活動線を見直します。

②訪問リハビリテーション:理学療法士が自宅を訪問し、筋力低下を防ぐトレーニングや安全な歩行訓練を行います。

③お薬の見直し:睡眠薬や血圧を下げる薬の副作用による「ふらつき」が転倒の原因になることもあります。訪問医が処方全体をチェックし、今の状態に合った投薬調整を行います。

5. 住み慣れたわが家でいつまでも自分らしく

骨粗しょう症はしっかり治療・予防ができる病気です。

「最近、背中が曲がってきた」「痛みのせいで動くのがおっくうになっている」「病院への通院が難しくなってきた」と感じたら、ぜひ訪問診療クリニックにご相談ください。大切な骨と健やかな暮らしを守るお手伝いをいたします。

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