2026
04/03
“おたふくかぜ”ってどんな病気? ~予防接種をしておけば良かった、と後悔しないために~
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小児の病気
社会福祉法人聖隷福祉事業団聖隷佐倉市民病院
小児科副部長兼臨床研修センター長
難聴は1,000人に1人の割合で発症
“おたふく”とは耳の下や顎の部分が丸く張り出した顔の状態をいう言葉です。おたふくかぜは流行性耳下腺炎、ムンプスと同義語ですが、そのウイルスが感染すると耳の下の耳下腺や顎の下部にある舌下腺・顎下腺という組織が腫れておたふくのような顔貌に変化します。潜伏期間は10~14日、発症から5日を過ぎると登園登校できるようになります。
予防接種で防ぐこともできますが、なぜか日本においては任意接種(お金がかかる予防接種)が続いています。任意接種だから重要ではない、というわけでは決してありません。おたふくかぜは実はさまざまな合併症を起こす感染症です。
おたふくかぜウイルスに感染すると、発症2日前くらいから他の人に感染させる状態になります。症状が出ないのに感染している、いわゆる不顕性感染は約30%に見られます。およそ70%は両側の耳下腺が腫脹し、30%は片側のみ症状が出ます。年齢が高くなると顕性感染率が高くなり、耳下腺腫脹期間も長くなる傾向にあります。
症状には発熱や耳下腺腫脹がありますが、以下の症状にも注意が必要です。
髄膜炎は無症状を含めると約50%に起こるとされており、5~10%で嘔吐や激しい頭痛などの症状が出現します。自然に治癒しますが、おたふくかぜに感染した80人に1名程度はこの髄膜炎治療のため入院加療が必要となります。難聴は今まで2万人に1人といわれていましたが、最近の研究で1,000人に1人の割合で発症することが分かってきました。耳下腺腫脹の数日前から発症5日以内くらいで急激に進行しますが、小児では気付かれないことも多くあります。ほとんどは片側性ですが、両側に発症することもあり有効な治療はないといわれています。
おたふくかぜにかかると不妊になる?
思春期になると男性では精子、女性では卵子を作りますが、精子も卵子も、ヒトの染色体数が半分しかありません。ヒトの細胞は46個の染色体を持っていますが、精子と卵子は各々23個の染色体を持っており、受精することで46個となり分裂を重ねヒトとして生まれてきます。私たちの身体には、自分とは全く違う半分の染色体しか持っていない細胞が生きている訳ですが、自らの免疫が攻撃しないよう精巣や卵巣はバリアで覆われています。おたふくかぜウイルスが感染するとそのバリアが壊され、精子や卵子を非自己と認識し免疫が攻撃してしまうため、ダメージを受け不妊症となる場合があるのです。不妊症は男性がなるというイメージが大きいですが、このような理由から女性も不妊症となる可能性があります。
妊婦が感染した場合、胎児への催奇形性はないといわれていますが妊娠初期に感染すると流産の原因になります。心筋や乳腺、膵臓にも親和性があるため、心筋炎や乳腺炎、膵炎を発症することもあります。
前述のように、おたふくかぜに感染したことによって日常生活に支障を来すような後遺症が残ることもあるため注意が必要です。しかし先進国の中で日本は唯一定期接種から外れており、そのため接種率が30~40%と低率です。接種率が低いことが原因で、日本各地で流行が起きているのも事実です。おたふくかぜワクチンは1歳と小学校入学前の2回接種が望ましく、ワクチン接種することで前述の合併症は防ぐことができるといわれています。
おたふくかぜによる難聴や髄膜炎をなくし、思春期以降に感染した場合の不妊症リスクを排除するためにも、小学校入学前に2回接種を完了させていただければ幸いです。おたふくかぜワクチンに対し助成金制度のある市町村も多くあります。将来のこともしっかり見据え、接種を検討してください。どの年齢でも接種可能です。