2019/08/26

毎日の食事を意識して、腸内環境を整えよう!

腸は第二の脳

夏の暑い日に冷たいビールを飲んだ時や、寒い冬に温かいスープを飲んだ時のおいしさを、「五臓六腑に沁みわたる」と言うことがありますが、これは腹の底まで沁みわたるさまを表わしています。五臓は肝臓、心臓、脾臓、肺、腎臓の五つ、六腑は胆のう、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦の六つを指します。

腹とは体の胸の下から足の付け根の上部分、特に胃腸全体を指していて、腹を使った言葉には「腹が減る」「腹いっぱいに食べる」「腹が出てきた」「別腹」などあります。また、腹と心の関係を表現した日本独特の慣用句もたくさんあります。「腹を立てる」「腹を探る」「腹に据えかねる」「腹を決める」「腹を肥やす」「腹に収める」「腹を割って話す」「腹に落ちる」などは腹に意思や態度を決める働きがあるかのような言葉ですが、日本人は昔から腹で考える文化があるとうかがえます。

実際に、腸は脳と自律神経で繋がっていて、互いに深く影響をし合っています。また腸は脳と同じように多くの神経細胞が存在し、脳からの命令を受けずに自律的に機能することもできるため、「第二の脳」と呼ばれます。

腸の役割は、食べ物を消化して栄養素を吸収し、不要なものを排泄することですが、近年、遺伝子解析とデータ分析が飛躍的に進むことで、免疫力を高め、生活習慣病を防ぎ、そして脳との深い関わりを持ちながら、全身の健康に影響することが分かってきました。

腸内細菌のバランスが健康のカギ!?

健やかな腸を保つことは健康の要となり、そのカギを握るのが腸内細菌です。腸内細菌は1000 種類以上あり、大腸を中心にして、数百兆個も棲んでいます。その群生する様子がお花畑に似ていることから腸内細菌の集合体を「腸内フローラ」と呼んでいます。菌の種類は大きく分けると善玉菌、悪玉菌、そして、その中間ともいえる日和見菌というグループに分けられ、通常、善玉菌は20~30%、悪玉菌は10%、日和見菌は60~70%を占め、腸内環境の良さはこの3つの菌のバランスと多様性によって左右されています。

風邪を引いていたり、便秘や下痢の人や胃がんや大腸がんの人の腸内フローラを調べると、善玉菌が少なく、悪玉菌が多くなっています。また、欧米人に多い大腸がんは日本でも増えてきており、この20年で2倍以上に増えました。これは日本人の食生活の欧米化に原因があるといわれ、また、ご飯などの炭水化物を制限する食事は、食物繊維の摂取不足を招くため、大腸内の環境を悪化させる一因と考えられています。

次に、腸内環境を良くして、大腸がんを防ぐための食事や生活習慣のポイントを具体的に説明しましょう。

① 食物繊維をしっかり取りましょう
腸内細菌は食物繊維をエサにしています。食物繊維は米などの穀物や野菜、果物、豆、きのこ、海藻に多く含まれています。

② 魚を取りましょう
魚に含まれるEPAやDHAの摂取は大腸がんを予防します。いわし、さば、さんま、まぐろ、ぶり、うなぎなどに多く含まれています。

③ 水を十分に取りましょう
便秘解消のためにも水は2リットルくらい必要です。食事でも水分は取れますが、それ以外に水などを1リットルくらい飲むようにしましょう。

④ 発酵食品を取りましょう
善玉菌を含むヨーグルトやチーズといった乳製品、みそや漬物などの発酵食品などを積極的に取りましょう。

⑤ 脂っこいものが多くならないようにしましょう
肉など、脂肪を多く含む食品を多く摂取するほど胆汁の分泌が多くなり、大腸がんのリスクを高めます。

⑥ 飲酒はほどほどに
アルコールによって腸内環境は変化します。日本酒に換算してアルコールを1日2合以上飲む男性は、全く飲まない人に比べて大腸がんに2倍かかりやすいといわれ、飲む量が増えることでさらに発症率が高まります。

⑦ 運動習慣を身に付けましょう
運動不足は肥満の原因にもなり、大腸がんのリスクを高めます。また、腸の健康に欠かせない「便を出す力」も必要ですので、身体を動かす機会をつくりましょう。栄養バランスに偏りのある食事や不規則な生活やストレス、運動不足は腸に負担を掛けます。毎日の食事が腸内環境を整えることを意識して、強い腸をつくりましょう。

 

有限会社あいね 代表取締役
管理栄養士・食育料理研究家
相澤 菜穂子

 

フォントサイズ-+=