2020/05/07

夏前から気を付けたい熱中症

水は命の根源

水の惑星といわれる地球。地球に生命が存在できているのは、そこに水があったからといわれます。私たちが生きていく上で水は欠かせないものです。私たちの体は半分以上が水からできており、体重に含まれる水分量は新生児ではおよそ80%、成人60%、高齢者50%となり、加齢とともに水分量は減ってきます。体内に含まれている水のうち、体重の10%が失われただけでも人の体は危篤状態に陥ります。水は体内では血液やリンパ液として循環しながら、栄養物や酸素を運搬し、老廃物の排泄を行い、体温や体内の浸透圧を一定に保っています。

本格的な夏を前にして、気を付けたいのが熱中症。5~6月ごろから発症しやすくなり、体が暑さに慣れていない初夏や湿度の高い梅雨明けのころにも多く見られます。気温が30℃を超える真夏日になると熱中症が増え始め、33℃でその数はピークに達します。平成30年は9万5千人が熱中症で救急搬送され、平成20年からの統計では過去最多を記録しました。年代別では65歳以上の高齢者が約半数を占めています。

東京・大阪・名古屋などの大都市はこの20年間で、夏に30℃を超える時間数が2倍以上に増え、早朝から日没まで気温が下がらないことが多く、それが熱中症の原因ともいわれています。

熱中症はどんな病気

熱中症は暑さや湿度に体が対応できず、体内の水分が失われ、体温が異常に高くなった状態のこと。体温の調節機能が働かなくなり、体温上昇、めまい、体のだるさ、ひどいときには、けいれんや意識の異常など、さまざまな障害を起こします。家の中でじっとしていても室温や湿度が高いと、体から熱が逃げにくくなり、熱中症になる場合があります。

〈熱中症予防のポイント〉

①まずは暑さに身体を慣らしていきましょう。

暑い日が続くと、体がしだいに暑さに慣れて、暑さに強くなりますが、日頃からウォーキングなどで汗をかく習慣を身に付けておくと、夏の暑さに対抗しやすくなります。急に暑くなった日に屋外で過ごしたり、涼しい地域から暑い地域へ旅行したりする場合も熱中症になりやすくなります。暑いときには無理をせず、徐々に暑さに慣れるように工夫しましょう。

②高温・多湿・直射日光から身を守りましょう。

高温と多湿な状況で無理な運動をしないようにしましょう。屋外では、強い日差しを避け、屋内では窓を開けて風通しを良くし、エアコンや扇風機等を活用し、室内温度を調整するなど、熱気を溜めないようにしましょう。屋外では帽子の着用や、吸水性や速乾性に優れた肌着を着るのも効果的。氷や保冷剤などを利用し、首や脇の下、ももの付け根などの太い血管が通っている部分を冷やすと効率よく体温を下げることができます。

③水分補給はこまめにしましょう。

喉が渇く前に水分補給するようにしましょう。特に高齢者は喉の渇きを感じにくくなるため、計画的な水分補給が大切です。起床時や入浴前後の水分補給も忘れずに。大量に汗をかいた時は塩分などのミネラル類も一緒に排出されてしまいますので、0.2%程度の塩分を含んだ水やスポーツドリンクなどが良いでしょう。水分補給目的でカフェインの入った飲み物やアルコールを摂取すると尿の量を増やして、体内の水分をより排出させるため、かえって脱水状態となる可能性がありますので注意しましょう。

④子供は大人よりも高温環境にさらされています。

子供は大人に比べて身長が低いため、地面からの照り返しが大人以上に強くなり、また汗腺も未熟です。顔色や汗のかき方などの体調変化に注意し、水筒を持ち歩くなどして、喉の渇きに応じて水分補給や休憩をとりましょう。

⑤暑さを乗り切る食事。

体の熱を取ることに効く食材を積極的に取りましょう。トマト、ナス、レタスなどの夏野菜は全般的に体を冷やしながら水分を補給してくれます。そして、きゅうりやゴーヤ、冬瓜などのウリ科の野菜は体にこもった熱を取り、余分な水分を取る働きがあります。料理は味付けを薄めにして、さっぱりとした味にすることで飽きずに食べられ、梅干し、レモン、酢などの酸味を上手に使うと食欲アップにつながり、夏バテを防ぎます。熱中症は誰にでも起こり得るものですが、予防もできるもの。日々の過ごし方や食事に気を配りながら、暑さを乗り切っていきましょう。

有限会社あいね 代表取締役
管理栄養士・食育料理研究家
相澤 菜穂子

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