2019/05/07

ストレス対策~毎日の食事を見直しましょう~

ストレスとは?

新年度が始まる春は人にとって変化が多い季節。慣れ親しんだ場所や親しくなった人との別れもあれば、これから始まる新しい事や出会いにワクワクしたり、不安になったりすることはだれもが経験します。悲しんでいる時も、楽しんでいる時も心が緊張することで、心臓をドキドキさせ、呼吸数が増えるという体の変化は同じように起き、それをどう認知するかによって、ある人にとってはストレスになり、別の人にとっては全くストレスにはならないといったことが生じます。生きている限り、私たちは何らかのストレスを外部から受けているといえます。

ストレスには2種類あり、健康を害するようなストレスのことをジストレス(不快ストレス)、健康にとってためになるストレスをユーストレス(快ストレス)と呼んで区別しています。ストレスといえば、不快ストレスのように体に有害な作用を及ぼすものと思われますが、快ストレスにおいては、緊張感をもたらし、やる気や集中力のアップにつながっています。

もともと、ストレスという言葉は物理学用語として使われていたものを、約70年前、カナダの内分泌学者ハンス・セリエが医学に導入し、広めた言葉です。ストレスはゴムボールに例えられ、ボールを指で押すと凹み(へこみ)ますが、このボールに与える指の圧力を「ストレッサー」と呼んで、凹んだ状態のことを「ストレス反応」といいます。ストレッサーとはストレスを発生させる要因のことで、ストレス反応はストレッサーによって引き起こされた生体の変化のことです。人にはボールのような凹みが見られるわけではありませんが、心の中は同じ状態に置かれています。この凹みがすぐに元に戻れば問題はありませんが、凹んだものを元に戻す力がないといろいろな症状が身体に現れて、悩まされることになります。

心の元気のもとは神経伝達物質

ストレスを感じると、人の身体はどう反応するのでしょうか。人の身体は、常に安定した働きができるように、自律神経系・内分泌系・免疫系の三つのシステムが相互連携して健康が保たれています。この三つの体内システムによる防衛プログラムを「ホメオスターシス(恒常性の維持)」といいます。強いストレスにさらされると、危険から身を守るための心身の防御反応が生じ、その戦闘態勢を整えるために、自律神経や副腎皮質ホルモンなどを分泌する内分泌系の活動が活発になります。

健康な心は興奮状態と抑制状態がバランスよく保たれていますが、それは脳内を駆け巡る神経伝達物質の種類と量によって左右されます。心の元気のもととなる神経伝達物質は日々のストレスによって消費されています。

ノルアドレナリンやドーパミンなどの興奮系伝達物質が不足すれば気分が落ち込み、過剰であれば不安や恐怖に襲われたりします。ほかに、ギャバ(ガンマアミノ酸)などの抑制系伝達物質が不足すればけいれんや興奮、異常行動を招いてしまいます。それらを調整する物質はセロトニンやメラトニンで、健康な心を保っていくためにはこれらの神経伝達物質をバランス良く脳内に放出させることが大切です。

神経伝達物質は主にたんぱく質(必須アミノ酸)から作られています。たんぱく質を多く含むものは魚・肉・卵・大豆製品・乳製品があります。たんぱく質は20種類のアミノ酸からできていますが、体内で合成されるアミノ酸と合成されないアミノ酸があります。体内で合成されないアミノ酸9種類は食事から取らなければならないため、必須アミノ酸と呼ばれています。神経伝達物質はたんぱく質が分解されてできるアミノ酸から合成されます。その合成過程を補助するために必要なビタミンとミネラルがあり、それらも合わせて食事から取りたい栄養素です。

たんぱく質の中でも魚や肉にはたんぱく質に加えて、合成に必要なビタミン・ミネラルも一緒に含まれているものがあります。食事を取る時に、一つの栄養素だけを意識して取ればいいかというとそうではないことも多く、他の栄養素を補うことで、効率良く栄養として体に取り込まれています。ストレス対策には、まずは毎日きちんとした食事が取れているかを見直してみましょう。

忙しい仕事が続く時には、食事をゆっくり取る時間がないとしても、朝食や昼食抜きにするのではなく、短くても何とか食事時間を確保して、栄養補給できるものを少しでも多く食べるように工夫したいものです。

ストレスは、元気のもととなる神経伝達物質をどんどん消費していきます。足りない分を補うためにも、原料となるたんぱく質や野菜などを忘れずにしっかり食事で取ることが大切になります。

有限会社あいね 代表取締役
管理栄養士・食育料理研究家
相澤 菜穂子

 

 

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