2020

08/29

大人も悩むニキビ。 原因や適切な治療とは?

  • スキンケア

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戸塚共立あさひクリニック院長
三宅 浩行

ドクターズプラザ2020年9月号掲載

皮フ科医のお肌のはなし

はじめに

夏も終わりに近づいているとはいえ、おしゃれに見せたい女性、スポーティーに見せたい男性( もちろん逆でも構いません)は、まだまだ肌の露出が多い季節です。この時期に人からの視線で気になるところの一つに背中( 女子の皆さまのいうところのデコルテですね)があります。特に「背中ニキビが多い」「背中も顔もニキビができると引かない、薬が効かない」「色や痕が残って困った」というお悩みは外来でもよく聞くところです。そこで今回は「ニキビ」の話をさせていただきます。

アクネ菌の本来の役割は肌の健康を守ること!?

ニキビは医学用語では「ざ瘡」という名前になります。ニキビの原因は皮脂の分泌が盛んになる事、もう一つは毛穴の角質が固くなり毛穴が詰まりやすくなる事、もう一つはアクネ菌の増生です。アクネ菌は誰の皮膚にも存在している「常在菌」の一種で、本来は肌の水分を保つ、病原菌の増殖を防ぐ、紫外線から保護するなどの肌の健康を守る役割を担っています。しかしアクネ菌は「空気が大嫌い」+「脂質が大好物」であるため、角質で毛穴がふさがり皮脂の詰まった毛穴の中はアクネ菌が大好きな環境となってしまいます。

皮脂の分泌が増えて毛穴に角質や皮脂がたまってしまうと非炎症性丘疹( 白ニキビ)となります。さらに毛穴で角質や脂質が空気に触れ酸化し、黒ニキビ( 面皰・めんぽう)が形成されることになります。その後、皮脂の中でアクネ菌が増殖して炎症を起こし、腫れや痛みを伴う炎症性丘疹( いわゆる赤ニキビ)が形成されます。さらに感染、炎症が進むと膿を持つ膿胞性ざ瘡と呼ばれる病変へと変化してしまいます。ざ瘡を放置したり、無理に潰してしまうとこうした病変が持続し、炎症が長引いて色素沈着を起こしたり、毛穴や周りの皮膚組織が破壊され凸凹のニキビ痕となって残る事になります。こうなると治療は困難です。

ニキビを治すには

ニキビの治療で使われる薬剤はアクネ菌を抑える抗菌剤が大部分だったのですが、近年ニキビを予防する薬剤も発売され、さらにその2種を配合した薬剤も使用することができるようになりました。抗菌剤は外用剤で開始することが多いですが、膿があるとき、炎症の強いときは内服薬が並行されます。長期の使用で抗生剤に抵抗力を持つ「耐性菌」ができることもあるので長期の使用はできません。ニキビを予防する薬剤は毛穴の角質を剝がし、詰まりを取るものやアクネ菌に対する抗酸化作用を持つ( 活性酸素で菌にダメージを与える)ものがあります。角質を剝がす形になるため、かさつきやヒリヒリ感、赤みが出ることもあるので保湿剤の並行使用をお勧めします。また抗酸化作用の薬剤は抗生剤より耐性菌ができにくく、長期の使用ができます。女性の場合皮脂の分泌に女性ホルモンの変動が関与されることも多く、漢方薬の内服をお勧めする先生もいらっしゃいます。

背中や胸、おしりのニキビの場合、アクネ菌だけでなく表皮のブドウ球菌や真菌( カビ)が毛穴に入り込んでいる場合があります。この場合アクネ菌への抗菌剤は効果が悪いため、抗菌剤の変更、抗真菌剤の使用が必要になります。真菌は顕微鏡を使って診断できるので、市販のニキビ薬で改善がよくないときは諦めずに皮膚科外来を受診してみてください。ニキビが引きにくく長く残って、色素沈着になってしまった時は、色素の新生を抑えるビタミンCの内服やビタミンC誘導体の外用、脱色素剤の外用ができますが早急な改善は難しく、健康保険の適応外となることもあります。強いニキビ痕はレーザーなどの治療が可能ですがこちらも保険適応外となりますので、まずは痕にならないよう早めの治療をお勧めしたいですね。

夏に向けての原稿を書いているこの時期でしたが、コロナウイルスに伴う緊急事態宣言発令、外出自粛、オリンピックの延期という、思ってもみなかった状態が続いております。この拙文を皆様が読まれるころには、穏やかな夏を迎えていることを祈ってやみません。

 

 

illustration:東京家政大学 造形表現学科 高橋 牧子

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