2022

12/01

冬は特に気を付けたい! 高齢者の体調変化とヒートショック

  • 介護

川内 潤
NPO法人となりのかいご・代表理事

隣(となり)の介護(22)

季節の変わり目や寒さが本格的になると、ご高齢の方の入院や、ヒートショックによる死亡事故が増えてきます。そこで今回は、高齢の家族の体調変化や冬に急増するヒートショックを防ぐためのコツをお伝えしたいと思います。

高齢者は肺炎にかかっても熱が出ない?

高齢者の方に多い病気である肺炎。75歳を過ぎた後期高齢者は、熱や咳、痰の症状がなく(または軽い状態で)、突然に意識がもうろうとして倒れたり、痙攣(けいれん)を起こしたりする意識障害を起こすことがあります。

また、免疫機能の低下で病気にかかりやすく治りにくいため、ちょっとした体調変化でも、早めの受診が重要になります。気軽に相談できる、かかりつけ医を決めておくと、安心につながるでしょう。

家族に心配をかけたくない気持ちがアダになる?

高齢の家族は「仕事や子育てで忙しいのに余計な心配をかけたくない」と、つらい症状がなければ、連絡するのは気が引けるようです。そのため、こちらから仕事や子育てなど身近なことを相談するなど、無理のない範囲で普段から気軽に声を掛け合える関係づくりを進めておきましょう。

遠くの家族よりも、近くの他人

企業での介護相談で「一人暮らしの母が心配で、毎日実家に通っています」「父のために毎週末、新幹線で帰省しています」という方がいます。そのような方には「家族が担っていることの一部を近所の方や介護サービスで代替できませんか」と伝えています。介護負担が重くなり、家族が先に倒れてしまうケースがあるからです。「遠くの家族よりも、近くの他人」という姿勢で、高齢の家族の近隣に見守りの体制を作ることが大切です。

「何か変わったことがあれば、気軽に携帯に連絡ください」と隣近所の方に声を掛けるなど、近距離(もしくは同居)に高齢な家族がいる方も、仕事中などに体調変化があれば、早めに気づくことができる体制作りをしていただければと思います。

高齢者の死因で「ヒートショック」は交通事故よりも多い!

下記のデータから、高齢者に限り、交通事故よりも不慮の事故での死者数が多いのです。

出典:消費者庁公表資料 2019年12月18日「みんなで防ごう高齢者の事故!-冬はお餅の窒息事故、入浴中の溺水事故が起きやすい季節です-」

冬に急増する「溺死及び溺水」事故

冬に死者数が急増するのが「溺死及び溺水」の事故。その主な原因は、急な血圧の変動で起こる「ヒートショック」と呼ばれるものです。

【「ヒートショック」の原因】

・急激な寒暖差
・風呂の水圧
・急に立ち上がる
・食後、飲食後の入浴
・医薬品の副作用 など

「ヒートショック」が起きやすい場所は、寒暖差が激しい「お風呂場」。排便時の力みにより血圧が急上昇しやすい「トイレ」も注意が必要です。

【「ヒートショック」を防ぐためには】

・入浴前に熱めシャワーで洗い場を温める
・フタをしないでお風呂を沸かす
・お風呂やトイレに暖房器具を取り付ける
・飲酒後の入浴は避ける(特に旅行先では注意が必要)

【高齢家族の入浴に介護サービスを活用】

・デイサービス(送迎付き日帰りケア)で入浴
・ホームヘルパーなど、人がいる時間に入浴
・ホームヘルパーや訪問看護師に入浴介助を頼む

今は大丈夫でも「地域包括支援センター」に相談を!

「冬はお風呂場での事故が多いけど、何か対策をしている?」といった会話から、高齢の家族の入浴に関する現状を知っておきましょう。一方で「ヒートショックのことが心配で……」と、地域包括支援センターに相談しておくこともおすすめです。入浴のサポートを受け入れるまで時間を要することがあります。早い段階からプロと一緒に対策を考えていくことで、安心して入浴できる体制づくりにつなげることができます。

入浴こそプロのサポートが必要

プロによる入浴の目的は、身体を清潔にするだけではありません。「ヒートショック」を防ぐために、入浴前後のバイタルチェック(血圧・体温・脈拍)によって入浴中・後の急な体調変化に注意し、皮膚の状態を観察して早期受診につなぐこともあります。家族だけでは、入浴させることだけで精一杯になり、転倒などの事故にもつながります。ぜひ、プロのサポートを活用してください。

大切なのは家族の心構え

付きっ切りで介護をしても、病気や事故を完全に防ぐことはできません。可能であれば、兄弟、親戚、高齢の家族と、有名な方が入院されたり亡くなられたりしたときに、体調や日々の生活、最期についての考え方などを聞き、いざというときの心構えをしておきましょう。

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