2023

02/01

わが子をヤングケアラーにしないためにできること ~子どもの青春は親が守る~

  • 介護

川内 潤
NPO法人となりのかいご・代表理事

隣(となり)の介護(23)

以前にもこのコラムで取り上げましたが、昨今、メディアなどでも話題になることが増えた「ヤングケアラー」について改めて考えます。

ヤングケアラーとは、日常的に家事や家族の介護に携わる子どものことで、現在、1クラスに1~2人の割合でいるといわれています。

ヤングケアラーは今後増加するのか?

今後、高齢者をケアするヤングケアラーは増加の傾向にあると思われます。理由は、これから要介護状態になる高齢者が急増するためです。

2025年には、「団塊の世代」800万人全員が75歳以上の後期高齢者となります。また、年代別人口に占める要介護者の割合は、75~79歳で12.7%、80~84歳で26.4%、85歳以上は59.8%(※)で、団塊の世代が85歳以上の年代に入り、要介護高齢者が急増するのはまだまだこれからなのです。

※厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」、総務省「人口推計月報」の各2021年10月データより」(https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1118.html

毎日晩御飯を作る子どももヤングケアラーか?

出典:厚生労働省ウェブサイトより(https://www.mhlw.go.jp/stf/young-carer.html

子どもが毎日家族のご飯を作るなど、直接ケア・介護に関わっていなくても、上述の図ではヤングケアラーです。

周りが「若いのに偉いね」と言う行動がヤングケアラーのサイン。「昔はもっと大変だった」という指摘もありますが、少子化が進み、親の共働きが増えた現代では、優しい気持ちで家族のサポートを続けた結果、子どもの将来を毀損する可能性があるのです。

家族による直接介護がヤングケアラーを生み出す

例えば、あなたの母親が認知症になり、子ども(孫)の前で買い物に行くのを止め、ケンカになります。子ども(孫)は、親と祖母が言い争う姿は見たくないと、自ら間に入り祖母の見守りをするようになります。進行する認知症の祖母の行動に、睡眠時間を削ってまで対応しても、子どもたちは誰にも相談しません。「おばあちゃんの面倒を見てくれてありがとう」と親から感謝され、つらいとも言えません。暗い話題になるので友人にも話せません。
さらに「自分は手伝っているだけで、ヤングケアラーというかわいそうな存在と思われたくない」と、孤立を深めていきます。その結果、成績が落ちたり、不登校になったり、その深刻さに周囲が気付いた時には「祖母の世話が唯一の居場所」となり、大切な将来に多大な影響を及ぼします。

子どものためにも介護のプロに任せる

認知症の母親が同じものばかりを買ってくることは、全く問題ではありません。むしろ、体を動かすことができ、社会とのつながりが維持されることはポジティブに捉えるべきです。ここでの課題は、たまった古い食品を食べて、体調を崩すこと。これは、ヘルパーさんに確認と管理をお願いすれば解決します。

一人で買い物に出掛けるのが心配ならば、段階を追ってGPSを持ってもらうことを検討してもいいでしょう。また、よく行くお店や近所の人に家族から状況を説明し、可能な範囲で見守ってもらうことも有効な方法の一つです。介護に子どもを巻き込むのではなく、子どものためにも介護のプロに任せましょう。

介護が必要な高齢者が急増しても、わが子をヤングケアラーにしない方法とは?

超高齢社会の日本では、介護を必要とする高齢者が急増するのは避けられません。また、核家族化や少子化といった社会の変化に伴い、家族だけでの介護は現実的ではなくなっています。それでもなお、私たちの中には、家族で介護を抱え込もうとしてしまう意識が、根強くはびこっています。その結果生まれるのがヤングケアラーです。
子どもの将来のためにも、適切な距離感を保ちながら親の老いを受け入れられる気持ちの余裕を持つことが、親としてわが子をヤングケアラーにしないためにできることです。

わが子がヤングケアラーになっているかもと感じたときは、公的な機関の地域包括支援センターへご相談ください。早めの相談で、介護者・被介護者にとって継続性のあるよりよい介護を考えることができます。障害児がいる場合も、兄弟をヤングケアラーにしないため障害があるとわかった時点ですぐ相談してください。

私どもの法人で制作した「ヤングケアラー」を分かりやすく解説した約1分半のアニメーション動画です。こちらも併せてご覧いただければと思います。

 

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