二階堂 紗恵 さん

麻布大学・獣医学部獣医学科5年

2015/09/15

産業動物を守る獣医師に!

  • MEDICUS

医療系学生インタビュー(7)

東日本大震災で被災者との出会いと交流

常に楽しいと思える活動に目を向けている

――獣医師になろうと思ったきっかけは何ですか?

二階堂 母の知り合いにアイガモ農法をしている農家さんがいて、幼いころ、毎年そこへお手伝いに行っていました。それが縁で、小学校低学年のころから数年間、アイガモの里親をしました。生まれたての50gぐらいの雛を2週間預かって、毎日世話をして水浴びの練習もさせて、大事に育てるんです。2週間後、田んぼに放しに行って、「頑張って働いておいで」と送り出します。秋になると稲刈りが終わり、カモたちも田んぼでのお仕事が終わるとその最後の役目として、お肉になって家に届くんです。大事に育てた動物が役割を果たし、最終的に安全で美味しいお肉として自分たちのもとに帰ってくるという、そういう役割を果たしている動物にそのころから興味を持ちました。

また、高校3年生の時に大学の「食品科学研究室」に研究室体験をさせていただき、ハムやソーセージが作られる過程を垣間見ることができました。その経験から、さらに人の食に関わる動物への関心が深まり、それらの健康を管理している「獣医師」に興味が湧いて、産業動物の獣医師になりたいと思いました。また、受験を控えた高校3年生のころに宮崎県で口蹄疫が大発生して、その最前線で獣医師が活躍していることを知り、獣医師の活躍の幅の広さにも魅力を感じました。

――産業動物の獣医師とは具体的にはどんな仕事をするのでしょうか。

二階堂 街中にある動物病院の獣医師とは違って、診る動物は牛、豚、馬、鶏などの経済に関わる動物です。職場によって違いはあるのですが、食や我々の生活に経済面で関わる動物の健康管理や衛生対策などを行います。また、獣医師が農場などに行き、診療や治療、検査を行い、動物と農家さんを支えているんです。

――大学生活をどのように過ごしていますか?

二階堂 5年生になって、生活の中心は研究室と勉強です。研究室では卒業論文の実験をコツコツやっています。それから、医療系学生サークルMEDICUSの副代表を昨年の9月からやっていて、そちらで月に1回は勉強会や交流会を企画しています。学内でも学外でも、何事も常に楽しいと思える活動に目を向けています。

――卒業論文のテーマは?

二階堂 牛白血病について研究しています。原因はBLVというウイルスなのですが、どれだけの牛が感染しているのか疫学的な調査を行い、発症のリスクについて解析しています。牛が大好きなので、卒業論文でも牛について勉強しています。

獣医師は身近な存在だということを知ってほしい

― ―MEDUCUS とはどのような活動をする団体ですか?

二階堂 医療系学生サークルMEDICUSは「授業では学べない医療の周辺知識を学ぶ」「学年・学科・学部・大学の枠を超えて、医療の大きな輪を作る」この二つを軸として活動しています。しかし、何より大切なのは、企画を行う私たち自身が一番楽しんでいることです。それらを踏まえ、私たちだからできることを考え、運動会やクリスマスパーティーなど大規模なイベントや、先生をお呼びして勉強会を開催したりしています。先日は医療手袋の会社の方に来て頂いて、勉強会をしました。

――これまで印象に残るような出来事等はありましたか?

二階堂 私がMEDICUSに参加して間もない頃、某企業の助成金の企画募集があり、石巻市のO小学校の全校生徒を対象にした東京プチ修学旅行(1日目ディズニーランド、2日目に上野動物園)をプレゼントするという企画で助成金を頂くことができました。そこで東日本大震災で被災した宮城県石巻市の小渕浜の方々と出会いました。当時の団体の代表から2日目の上野動物園について任され、皆に喜ばれるよう計画しました。そして、そこで繋がった石巻市との関係を断ち切りたくないと思い、昨年1年間、2カ月に1度、定期的に小渕浜の小学生に会いに行っていました。医療系学生だからこそできることを探し、遊び場や学びの場が減ってしまった子供たちと手作り聴診器や試験管で万華鏡を作るなど、医療や勉強を身近に感じ、興味を持ってもらえたらいいなと思って活動していました。

――どんな獣医師になりたいですか?

二階堂 産業動物、特に牛を感染症から守る獣医師になりたいです。今、研究室で牛の白血病を深く学んでいるため、それらの知識や技術を現場に活かし、より多くの動物を感染症の被害から守ること、そして動物だけでなく農家さんも支えられる獣医師を目指しています。そのためにはしっかりと知識や技術を身に付け、農家さんの信頼を得られるようになりたいなと考えています。

――獣医師として、読者の方に知って頂きたいことはありますか?

二階堂 一般の方の獣医師のイメージというと、“街の動物病院の獣医さん”を思い浮かべると思うのですが、毎日食べているお肉や、飲んでいる牛乳が、自分の食卓に並ぶまでの過程で獣医が絶対に関わっているということ、また、人間の公衆衛生の分野等でも、獣医師が広く関わって活躍しているということを知ってほしいです。直接関わっていなくても、意外と獣医師は身近な存在なんです。

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