小池 雄悟 さん

立命館大学薬学部5年

2018/04/04

患者さんの声を聴き、心までケアができる薬剤師になりたい

  • 日本薬学生連盟(APS-Japan)

医療系学生インタビュー(22)

薬剤師の未来を見据えて学生団体の代表に

――薬剤師を目指そうと思ったきっかけを教えていただけますか?

小池 小学校から高校まで野球をやっていました。恩師である中学の時の監督が肝がんになってしまい、監督の「俺の病気を治してほしい」という言葉で医療分野に進もうと思いました。それで医学部を目指していましたが合格することができず、断念して入ったのが薬学部でした。でも、今は後悔していません。さまざまな出会いを経て、薬学の可能性や、薬剤師視点で地域の人を支える可能性も見えてきたからです。

――現在は薬学生連盟という学生団体の会長をされていますが、この団体に入ったきっかけは何ですか?

小池 大学ではカリキュラムが詰め込まれているのでとても忙しいのですが、それだけでは見えてこなかった「薬剤師とは何なのか」を突き詰めたいと思いました。そして、モヤモヤした思いを抱え、がむしゃらにさまざまなイベントに参加していた時、出会ったのがこの団体です。

――印象に残った出会いはありますか?

小池 この団体との出会いですね。2年生の時に初めて、日本薬学生連盟のイベントに行き、先輩たちが未来を見据えて社会を語っていた姿を見たことが強く印象に残りました。僕とそんなに年齢が変わらない大学生が、医療を、社会を変えていこうとしているんだということに強い憧れを感じました。それで迷わずその場で入会を決意しました。今思えばこれは人生を変える出会いだったと思います。

――会長はどのような仕事をしているのですか?

小池 組織を運営し、継続させていくことが一番重要な責務だと思っています。実際にイベントを企画・実行するのは委員会や支部本部ですが、その根本に当たるビジョンを打ち立て、マネジメントしていくことが会長の業務です。毎月オンラインミーティングを開き、さらに年に何回かはFace to Faceで集まりそこでもっとこうしていこうとか、ここを直した方がいいねと軌道修正していきます。

――薬学生連盟のメンバーは何人いるのですか?

小池 全国に千人弱います。ただ、もっと多くの薬学生を巻き込み、「自分はこうしていきたい」「自分はこの分野のここに人生をかけたい」という思いを持つ人が増えていくのが理想です。

――イベントにはどのようなものがあるのですか?

小池 三大イベントと呼んでいるものがあり、それは、5月の新入生歓迎会と、秋の薬学生フェスティバル、そして3月の年会です。この団体には東北・関東・東海・関西・九州に支部があり、新入生歓迎会と薬学生フェスティバルは支部ごとに開催し、3月の年会は全国から一カ所に集まって開催しています。

普段は委員会単位で活動をしており、交換留学や講演会、勉強会、薬局や病院、企業の見学、キャンペーン活動などを行っています。高い意識を持った薬学生が地方に帰ったり僻地に行ったりすることを促進したいと思っているので、長野県の病院見学ツアーを組んだこともありました。せっかく全国に会員がいるので、それも強みとして生かしていこうと思っています。

チーム医療の中で頼れる薬剤師になりたい

――大学の勉強で得意不得意はありますか?

小池 薬が体の中に入っていってどう代謝されて出ていくのかというのは薬学部の薬物動態学という学問でしか学べません。実習に出て、チーム医療の中で信頼される薬剤師になるために、薬物動態学をもうちょっとしっかり学んでおけば良かったなと思いました。

おそらく薬剤師の業界というのは、これからの5年10年で大きく変わってきます。以前は医師から指示された薬を調剤して出すことが中心でしたが、もっと患者さんに焦点をあて、健康な生活のサポートをしていこうという時代に変わってきています。今僕は実習生の身分ですが、チーム医療に薬剤師も入っているということをとても実感しています。

ですから、医学部やその他の学部との相互理解を図るためにIFMSA-Japan(国際医学生連盟)とも提携しています。僕らが社会に出ていった時に、学生時代に苦楽を共にした仲間となら連携もしていきやすいと信じているので、今のうちに他学部ともつながっておくことは大切だと思っています。

――どういった薬剤師になりたいですか?

小池 僕の中でやりたいテーマの一つがメンタルヘルスのフォローです。それは身内に発達障害の人がいて、周りが苦労する姿や本人がつらい思いをしている姿を近くで見ていたからなのですが、その時に自分が何もできず不甲斐ない思いをしたので、心を癒せる存在になりたいと思っています。そのためには薬という専門性を生かして、いかに患者さんの声に耳を傾け、生活ベースでアプローチしていくかが大切になってくると考えています。

これまでの日本の医療はともすると薬漬けになりがちでした。超高齢社会の今、さまざまな疾患を持っている患者さんも増えてきて、たくさんの薬を飲んでいる方も少なくありません。そういった状況の中でジェネラルな視点で薬の服用状況や副作用、飲み合わせなどを見られる薬剤師という存在が、医療安全の面でも健康な生活を支援するという面でも大事だと思っています。また、化学物質ではない広い意味での薬、それこそ声掛けなども薬と考えて、多角的にサポートしていきたいと思いますね。

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