米谷 隆佑 さん

弘前大学医学部医学科4年

2023/03/15

デザインの視点を持った総合診療医として 地元・深浦町でへき地医療に携わりたい

医療系学生インタビュー(57)

カフェ経営で医療へのハードルを下げる

―医師を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

米谷 子どもの頃、祖父ががんで亡くなったことがきっかけで、医療関連の仕事に興味を持つようになりました。中学生になると職場体験で、僕も普段から診ていただいていた柳善佑先生の仕事を見学することができ、医師という職業に憧れるようになったんです。そこから気持ちは揺らがず、医大を目指すことに。柳先生はへき地医療への思いが強く、深浦町の唯一の常勤医です。診療所だけでなく訪問診療も積極的に行われていた憧れの医師です。

―弘前大学を選んだのはなぜですか?

米谷 弘前大学で学ぶことは、将来的に地元・深浦町で医療に携わりたい自分にとって適した環境だと思ったためです。総合型選抜Ⅱ(AO入試)を受験し、現役で合格しました。自分自身のバックグラウンドが生きる環境で勉学・活動に従事できる点は、最大のメリットだと感じています。

―学生生活はどのように過ごしていますか?

米谷 これまで医学部ゴルフ部やIFMSA-Japan などさまざまな活動に参加していましたが、現在は学生団体CoCo-Cam の運営する「医Café SUP?」に注力しています。「地域と医療の架け橋になる」というコンセプトのもと、地域の人たちと健康や医療について気軽に話せる場をつくろうと「医Café SUP?」をオープンしました。僕はバリスタの資格を取得し、店長として運営の中心を担っています。事業資金はクラウドファンディングを利用し集めることとなり、最初は不安なこともありましたが、弘前大学の先生方も応援してくださり目標金額の150%を達成することができました。現在は、これからの地域社会における潜在的な社会課題を提示することが大切ではないかと考え、「地域と○○の架け橋になる」をコンセプトに活動しています。

僕たち自身も「医Café SUP?」を始めたことで、さまざまな職種の方に出会えるようになりました。コロナ禍で疎外感や距離が生まれていたことを実感させられる経験でした。医学部がある場所であれば「医Café SUP?」のような形態は各地でつくれると思うので、いつか全国展開できたらと考えています。

柳先生のような総合診療医になり、恩返しをする

―将来はどのような医師になりたいですか?

米谷 総合診療医として、青森県そして地元・深浦町で働きたいと考えています。深浦町はたった一つの医療機関が広大な地域をカバーしている町なので、恩返しの意味も込めて貢献していきたいです。そのために授業だけでなく総合診療にまつわる勉強会や家庭医療のセミナーにも参加し研さんを積んでいきたいと考えています。総合診療は、これから活躍が注目されている専門科で、その分地域への貢献は大きいと思います。青森県の総合診療業界の、閑古鳥が鳴くような状況を盛り上げるために、総合診療医を選ぶことは妥当な選択だと考えています。また、深浦町で医療に携わるためには、へき地医療だからこそさまざまな職業の方とのつながりや連携が必要です。カフェ経営やCoCo-Camの運営を通して、例えば医療福祉の方や建築家の方などいろいろな職種の方と関わることで、理想の総合病院や医療を届けていきたいと考えています。

また、医療現場は旧態依然としている部分があり、アートやデザインの持つ力の必要性を感じています。現在「医Café SUP?」を経営していく中でも、デザインをうまく取り入れることで組織づくりがスムーズにいくと感じるようになりました。例えば医療現場では、カルテを色分けするだけで探しやすくなったり、病院内のボタンや表示を改善したりすることで患者さんがどこに行けば良いのかなどが分かりやすくなります。僕は色覚異常が少しあり、色に対する煩わしさなどを持ちながら生きてきました。どうやったら自分にとって分かりやすくなるか? ということを考える機会が多くあり、その視点が医療の現場でも生かせるのではないかと思います。総合診療医という肩書を持ちながら、デザイナーとしても活動していきたいと考えています。

―今までの人生で影響を受けた人物や言葉はありますか?

米谷 深浦町でへき地医療に尽力してきた柳善佑先生です。柳先生はもともと大阪の方ですが津軽魂のある方で、全く縁が無かった深浦町に移住され、関診療所で医師を務めていらっしゃいました。常勤医が柳先生しかいなかった状況下で10年以上、深浦町の人々を診療してきた方です。まさに赤ひげのような存在。亡くなってしまいましたが、柳先生の姿はいつも心の中にあり理想の医師像です。また、父方の祖父はとても勤勉・勤労家で僕に生き方を示してくれたように思います。

―後輩へのメッセージをお願いします。

米谷 アンテナを常に張りつづけることが大切だと思います。僕自身、SNSを通して総合診療に関わる情報に出合ったり、偶然の人との出会いが新たな出会いを呼んだりして「医Café SUP?」を経営することになりました。勉強はもちろん大切ですがそれ以外の時間は、ぜひ無駄に時間を消費するのではなく積極的にアンテナを張り巡らして行動してほしいです。

また、人との出会いも大切。決まった友人とだけでなくさまざまな人との出会いを経験することで、人間として成長できると思いますし、その成長は医師として大切なことだと思います。バイトをすることも良いですが、学生団体をはじめ課外活動に力を入れることは出会いも増え、医師として大きく成長できるきっかけになるのではないでしょうか。

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