萩野 陽菜乃 さん

国際医療福祉大学医学部医学科5年 

2022/11/02

さまざまな経験を積み、将来は世界で活躍できる人になりたい

医療系学生インタビュー(55)

国際協力を志して医師の道へ

―医師を目指したきっかけはなんですか?

萩野 一番は、国際協力に興味があったからです。通っていた都立国際高校で、卒業生と話せる催しがあり、発展途上国の医療の話を聞いて興味を持ちました。自分は不自由なく暮らしているのに、生きたいと思いながらも亡くなる人がたくさんいるということに衝撃を受けて、そういう問題の解決に携わりたいと思ったんです。もともと、父の仕事の関係で子ども時代をアメリカやフランスで過ごしており、漠然と「将来は自分も世界で活躍できる人になりたい」と思っていたので、それとつながったところもあります。

どんな仕事が役に立つかと考えたときに、資格がしっかりとあって、命というものに直接関われるものがいいなということで医師の道を志しました。

―国際医療福祉大学を選んだのはなぜですか?

萩野 自分の強みを生かした受験ができること、そして国際協力という進路を考えたときに、英語で医療を学べるところに魅力を感じたことが決め手でした。留学生が多くていろいろな文化に触れられることにも惹かれましたね。

新設の大学という点には不安もありましたが、今はそれよりも自分がその大学の文化を一からつくれるという面白さを強く感じています。

―学外では何か活動をしていましたか?

萩野 はい、すごくたくさん!

2年生の途中から、AMSAjapan(Asian Medical Students Association Japan)という、アジアの医系学生が集まる団体に入っています。AMSAの国際会議の運営をするカンファレンス部門に所属し、部門長もやらせてもらいました。

私が入ったころからコロナがはやり始めて、国際会議もその運営もオンライン進行。一度も対面したことがない人とコミュニケーションを取ったりモチベーションを保ったりするのが難しく、もがきながらの活動でしたが、アジアの学生たちと友達になれるのはとてもうれしかったです。

また、最近「山本雄士ゼミ」に入りました。山本雄士先生という、東大医学部出身でハーバードのビジネススクールを日本人医師として初めて卒業した先生の勉強会です。医学的な議論などもしつつ、マネジメントなど医学知識外のことについても学んでいます。

このゼミで知り合った方からのお誘いで、厚生労働省のインターンに参加したこともありました。フランス語での文献検索をさせてもらったり、働き方改革について医学生視点での話をさせていただいたり。貴重な機会を得られて有難かったです。現在はがん検診に関するベンチャー企業のインターンもさせていただき、大学で経験できない多くの事を学んでいます。楽しいです。

あとは、カンボジアに行って孤児院の子どもたちとミュージカルを作るというNPO法人のプログラムに参加しています。難しい環境の子どもたちにも輝ける場所をつくる、というプロジェクトです。

また、1年から今まで、ダンスを続けています。大学の部活や、関東医療ダンス連盟というサークルで活動をしていて、おばあちゃんになるまでダンスをし続けたいと思っています!

「やらないで後悔するならやって後悔する」をモットーにしているので、興味を持ったら何にでも挑戦しています。いろいろな活動をかじり、いろいろな経験をさせてもらいました。

離島医療からWHOまで、「医師」の多様な選択肢に気づく

―将来はどんな医師になりたいですか?

萩野 今、いろいろな選択肢を浮かべて考えているところです。最近までは、実習の日々の中で「必ず専門の科を決めて臨床医にならなければ」という使命感があり、自分がやっていけるだろうかと不安を感じていました。でもあるとき父が「何にパッションを感じるの?」と問いかけて、「必ずしも臨床をずっとやらなくてもいいんじゃない?」と言ってくれたんです。その言葉ですっと心が軽くなり、視野が広がりました。

父や厚生労働省に入った医系技官の方の話を聞いて、行政の道にも興味が湧いています。国際的な協力には、そういった面からのアプローチも大切だと思うので。将来的にWHOなどの国際機関で仕事ができたら、いろんなバックグラウンドを持った人と一緒に働けるかなと思うとすごくワクワクします。夢のまた夢ではありますが……。

もちろん臨床医の仕事も考えていて、患者さんと向き合い一緒に頑張れる医師になりたいという気持ちもあります。特に興味があるのは、産婦人科と小児科です。

産婦人科の実習でお産を見たときに、生命が誕生する瞬間に立ち会える仕事だということがすごく心に響きました。また、生活全体を診る科なので、1人の人と社会背景などを含めた上で向き合えてやりがいがありそうだと感じます。女性として、女性の患者さんに寄り添いたいという思いもありますね。

臨床医とひとくちに言っても、街の病院で働くだけでなく、離島や船上、大使館など、活動できる場所はさまざま。どんな科や場所でも、そこでしか得られない経験があると思うので、選択肢を狭めずに検討したいです。

―医師を目指す後輩へのメッセージをお願いします。

萩野 医学部を目指す高校生へ、自分の反省を踏まえて伝えたいのが、医師という仕事についてよく調べてから決意してほしいということです。

周りに医療関係者がいる人はイメージが湧くかもしれませんが、医師は特殊な仕事だし、医学部も特殊な世界です。6年間学び続けて、その後も医師として働くのは、簡単なことではないと思います。

だから、進路を決めるときに、機会があれば病院見学などをして、医師とはどういう仕事なのか、本当に目指したいのか、と考えることをおすすめします。私も高校の先生に「本当に医者になりたいの?」と聞かれ、「なりたいから!」と勢いづいて答えてしまいましたが、素直に受け止めて調べたり考えたりしても良かったかなと今は感じます。

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