佐々木 慎一朗 さん

弘前大学医学部5年 

2026/07/01

起業・NPO設立で医療と地域をつなぐ、医学生起業家の挑戦

医療系学生インタビュー(77)

青森と東京の2拠点生活

―医師を目指したきっかけを教えてください。

佐々木 小学生の頃から、漠然と医師になりたいと考えていました。特別なきっかけがあったわけではありません。ただ、大学で行われていた外科の手技体験など医療関連のイベントに積極的に参加していたことを覚えています。初めの頃は他大学が第一志望でしたが、身近に弘前大学出身の先生や医学生の先輩が多かったことなどから関心を持つようになり、志望校として選びました。

弘前大学は地域医療、被ばく医療、社会医学などさまざまな面で特色を持つ大学です。世界にリードする研究も多くあり、弘前大学ならではの学びがあります。

―どのような学生生活を過ごしていますか?

佐々木 平日は8~17時まで青森で病院実習、週末は東京で自分の会社に関する業務、という2拠点生活をしています。大学では自転車競技部と写真部、軽音サークルに入り活動しています。もちろん、友人との飲み会もしています。

2023~2024年にかけて1年間休学し、インドのバンガロールに渡りました。現地のベンチャーキャピタルでインターンをし、デジタルヘルスケアや伝統医学、地域医療などをテーマに活動しました。

地域と医療を緩やかに接続することが目標

―NPO法人の活動や会社経営とは、具体的にどのようなことをしているのでしょうか?

佐々木 2023年5月に設立したNPO法人ココキャンでは理事長を、2025年5月に起業した株式会社 Sushifyでは代表取締役社長を務めています。NPO法人ココキャンは「地域と医療の架け橋となる」をビジョンに掲げ、青森県の地域医療や医学教育に関する事業に取り組んでいます。主に臨床研修医向けの動画メディアやガイドブック制作、高校生医学生向けのスタディツアー、他にも地域住民と医療者をつなぐ活動に取り組んでいます。

株式会社 Sushifyは、「医学生発のAIヘルステック企業」として、AIを活用した医療者向けメディア制作、医師向けの医学教育サービスなどを展開しています。これまで、病院実習の際に指導医の先生が学生の指導に使用する指導教育ツール「Medulingo」をリリースしました。

また、医学生が臨床研修病院のリアルな情報を動画で発信するプラットフォーム「IKKEN」を開発し、病院や都道府県から依頼を受けて、紹介動画を手掛けています。企画から映像制作まで全て医学生のチームが行います。「医学生が自分の将来を納得して選べる社会」を目指し、自分にあった研修先を見つけやすくなる仕組みを整えることを目指しています。

医療にまつわるさまざまな活動は、俯瞰して医療に関わることであり、患者さん中心の医療を考える視点を与えてくれます。

―大切にしている言葉や座右の銘はありますか?

佐々木 「身体髪膚、これを父母に受く、あえてこれを毀損せざるは、孝のはじめなり」という言葉を大切にしています。高校生の頃に漢文の授業で出合った言葉で、けがや病気をしないようにすることが親孝行の初めである、という意味です。医療は、病気を治すことが役目ですが、それ以前にまずは親や先祖からいただいているものを大切に、感謝をしながら向き合うことを忘れてはいけないと考えるようになりました。

親孝行ということ、医療従事者への戒めという視点において、大事にしたい言葉です。

プロフェッショナリズムと自己規律を常に備えた医師に

―将来はどのような医師になりたいですか?

佐々木 まだ診療科は決めていませんが、プロフェッショナリズムと自己規律を携えた医師を目指しています。プロフェッショナリズムというのは、患者さんとしっかり向き合い、患者さんを第一に考える思考法だと思っています。常に現場を大事にし、患者さんや社会に誠実であるように努め、最終的に患者さんへ利益が還元されるように行動することが重要だと思います。

自己規律は、プロフェッショナリズムを貫くためのマインドセットだと考えています。医療に関わる人は、ある程度の自己犠牲を伴うことが必要だと思いますし、自分を律するようなルールを持つことが必要だと思います。将来的には、医師としてだけでなく分野横断的に医療に貢献したいです。

―最後に後輩たちへアドバイスをお願いします。

佐々木 病院実習に行き、先輩医師たちの姿を見て、医師は目の前の患者、そして社会に貢献できる素晴らしい仕事だと実感しています。実際に、この仕事を天職だと感じて働いている先生方にたくさん出会えました。

一方で、受験や医学部生活は長く、挫折しそうになる瞬間もあると思います。そんなときは、視野を広く持ち、医療以外の世界にも触れてみることをおすすめします。本を読んだり新しい人と出会ったりし、自分の可能性に気づくことが、より良い医師への道につながると信じています。

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