Vol.151 2020年5月号

プレバトの功罪

江畑 哲男 さん

(一社)全日本川柳協会副理事長、麗澤大学オープンカレッジ講師


民放の教養(!?)番組に「プレバト」がある。いまや人気絶頂、視聴率も相当稼ぐという。俳句番組には不釣り合いなお笑いタレントを司会に起用して、テレビ的な面白さを演出。コレが成功したようだ。「プレバト」とは何の略か? 「プレッシャーバトル」の略なんだそうな。そう言えば、出演者にかなりのプレッシャーをかけている。俳句の宗匠・夏井いつき先生は忖度を一切しない。相手が大物だろうが美人アナだろうが、容赦なくキビシイ査定を下す。
このやりとりが興味津々。視聴者の笑いと共感を誘っているようだ。

「俳句は何をやっても良い」!?

あるときの放送で、夏井先生はこう言い切った。「俳句は何をやっても良い」と。先生の指導を受けて、出演者が「冒険句を出してみました」などとコメントを加えていた。見ていた小生。それは違うゾ! そう叫びたくなった。
たしかに夏井氏の功績は大なるものがあろう。長い間低迷を続けていた俳句をイッキに甦らせた。「現代俳句の救世主」、そういう見方も成立するだろう。正岡子規が成し遂げた俳句革新後の「旧弊」を、彼女が打ち破りつつあるのかも知れぬ。
しかし、である。その夏井氏も、俳句の持つそもそもの制約には一切手を付けていない。克服すべき課題は厳にある。少なくとも次の二点を挙げさせてもらおう。

①旧字旧仮名、文語表現という壁。
②旧暦との齟齬、季節( 感)の喪失。

上の点で言えば、川柳こそ自由である。「何をやっても良い」文芸の本家本元は、じつは川柳なのだ。小生はそう確信する。夏井氏の功績を十二分に認めながらも、川柳の立ち位置を小生は支持する所以である。
さて、まずは佳作&佳作候補から。まとめて発表し、必要なコメントを加えてみた。

目標は健康第一言い飽きた(犬好きマルエイ)
節制も検査が明日じゃ付け焼き刃(安田蝸牛)
ひたすらに酒飲む分を歩きます (いとはん)
「いまさら」を「いまから」にした薬剤師 (かかし)
痩せなさい太った医者に叱られる(しゃりべん太郎)
年寄りに忖度しない孫の蹴り    (猫背)
良性と付けりゃ患者も癒される(しむらむし)
病床の隣は何を病む者ぞ      (雛豆)
五十肩三十代でなりました      (善)
する事があって私は超元気     (千瑠)
「超元気」の「超」がイイ。

棒高跳び見ている自分の足上がり (イッチ)
ついついこっちもその気になって。

万歩計買った日だけが一万歩  (赤ラベル)
万歩計もそう。健康器具もしかり(笑)。

Vol.151
ベスト作品

  • 足を撫でながら

    プランを組んでいく

    山井和音

  • 健診は

    日々の努力の

    通信簿

    山田明

  • ランニング

    すぐに疲れて

    ウォーキング

    竹澤聡

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