2024年12月
生きることを励ます川柳 5
江畑 哲男 さん
(一社)全日本川柳協会副理事長、麗澤大学オープンカレッジ講師
川柳を創るということは、ポジティブに生きることだ。人生を前向きに生きようとすることだ。最近あちこちでこう説いている。おかげさまで、全国からぽつぽつ講演の依頼が舞い込む。浅学菲才の小生をお招きいただけることに感謝をしながら、川柳の普及活動をいま続けている。
「川柳を創る=ポジティブに生きる」という図式をもう少し丁寧に解説すれば、下記のようになる。
「川柳を創る」営みは、受動的に生きることではない。否定的に生きることでもない。世の動きに目を凝らし、不易流行を見つめ、日常生活の中から何かしらの「発見」をすることなのだ。
発見を言葉にする。発見を他人に伝わるように表現する。五七五のリズムに乗せて言い表すこと、なのである。
もしかしたら皆さんは、単調で変わり映えのしない日々を送っているのかも知れない。しかし、目を大きく見開けば、身の回りには、面白いモノ・今までと違う何か・心を動かされる事物等々に巡りあうはずである。まずは、それらに気付くこと。大河ドラマのタイトルを援用するならば、そんな「光るもの」「光る何か」に気付いてほしいのだ。
「光る何か」に気が付いたら、言葉にしてみよう。自分なりの言葉で言い表してみよう。何も恰好をつける必要はない。川柳は口語を基調とする文芸なのだから。そうすれば、アナタは定めし「光る君」になれる(!)に違いない(笑)。
世の中の動きの中から何かに気付く。自分の心の動きの中から、喜怒哀楽の一コマを切り取る。そんな営みによってアナタも「光る君」の一人になれる。なってほしいものである。そう願いながら、今回も皆さんの作品群と向き合っている。
さて、入選句のご紹介から。
健康の為のあれこれ忙しい(かぐや姫)
歩いても自分は太りペット痩せ(サッカーボーイ)
同窓会持病の数を競い合う(しん)
名刀も手入れしないとただの錆び(たまのいわし)
PCと語るな患者ここにいる(三国離郷)
言わずもがな馬鹿正直な内視鏡(牛美)
姿勢美でインナーマッスル鍛えます(由月よう)
節約で嬉しい誤算痩せました (AAA)
健脚を競い合ってる山ガール(やんちゃん)
認知症予防でスマホ依存症(しむらむし)
酒タバコやめても恋は続けたい (瑠珂)
かくしゃくの漢字書けぬが元気です(元気ジジイ)
甘いもの我慢しすぎて夢に出る(桃式部)
いよいよ、ベスト3の発表。入賞者の皆さん、おめでとうございます。
◎お日さまを食べましょうかと出る散歩(フーマー)
「お日さまを食べる」という表現がじつに個性的で良かったです。ナルホド。さすがに朝夕は冷え込んできた今日この頃、せめて昼間くらいは外気浴をしましょうか。
○安すぎる健康器具は続かない (どらまにあ)
「この健康器具、高かったんですよ!」。そう言われると、ナントカ続けてみたくもなります。ところが、安物だと「どうせ……」という心理が働いてしまいます。そんな心理を上手に突きました。
○うさぎよりたくさん食べる生野菜(惠子惠)
「うさぎより」という比較の仕方が面白い。ユニークでした! 川柳の魅力の一つが「発想」です。この作者の発想力を見習いたいものですね。
今回の川柳
ベスト作品
-
◎トップ賞
お日さまを
食べましょうかと
出る散歩フーマー
-
安すぎる健康器具は
続かないどらまにあ
-
うさぎより
たくさん食べる
生野菜惠子惠