2025年8月
生きることを励ます川柳7
江畑 哲男 さん
(一社)全日本川柳協会副理事長、麗澤大学オープンカレッジ講師
「人生百年時代」。
しかしながら、「百年」を生きさえすればそれで良し、というものではないでしょう。
「健康長寿」という言葉がありますが、健康で長生きしたい。できれば、好きなことをして過ごしたい。さらに社会貢献ができればなおうれしい、というのが大方の皆さんの願いのように思われます。
白寿の現役川柳作家
筆者のお仲間に今年の6月(数え年で99歳)「白寿」を迎えた川柳作家がおられます。仮にMさん(男性)としておきましょう。
Mさんは毎月五~六カ所の句会を歩き、月に三〇〇句ほどの川柳を創ります。月に三〇〇句! それだけでもオドロキですよね。
しかも、句会ではよく入選をするのです。入選句には人生の喜怒哀楽が詠まれており、人生観や人間観がにじみ出ています。ユーモラスな作品があるかと思えば、時には恋の句なども発表されます。
そんな折り、句会場は湧きます。Mさんの入選句に拍手が巻き起こります。その柔軟な思考や優れた表現力に、感嘆の声が漏れ聞こえてくるのです。
Mさんはいまや、私たち川柳会のアイドル的存在。そんなMさんにあやかりたいと、過日「祝白寿の記念句会」を開催し、祝宴を催しました。
筆者の川柳歴も相当長いのですが、こんなに活動的で心豊かな川柳作家を見たことがありません。この「白寿の現役川柳作家」に、新聞社も取材に訪れたほどでした。
健康長寿。その一人の典型をこのMさんに見たような気が致します。
さて、入選句。今月はたくさん投句を頂戴しました。良い句もいっぱい! 紙面の許す限り、ご紹介しましょう。たくさん紹介しますね。
百歳へレールを延ばすスクワット(やんちゃん)
青空をかあるく進むスニーカー(ばんぶりん)
食欲は十分あるが腹八分 (春爺)
ダイエットがんばったから甘いもの(ぷちご褒美)
あ~んしてこの日の為の総入れ歯(愛植男)
どこかしら悪いところがない不安(老人生)
いい数値出るまで測る血圧計(洒落頭)
楽しろとエレベーターに誘われる(歩きニスト)
年取って会話の8割健康系(KEI)
健康診断前日だけの野菜祭り(きと3)
縁側で猫に添い寝の沐浴日(傀儡師)
D判定昔は模試で今検診(ルーキー)
欲しいのは肩書きよりも正常値(もふもふ)
化粧して今日の健康確かめる(さくらんぼ)
筆圧で母の元気を知る便り(おでん)
健康な先祖も踊る盆踊り(来々軒群雲)
さてさて、今回のベスト3作品は左記です。おめでとうございます。
◎妻と手をつないだだけでリフレッシュ(上村ひろし)
「ほのぼの感」を味わいました。迷わず、トップ賞に選ばせていただきました。読んでいる私たちまで幸せにしてくれそうな、そんな一句でしたね。
○買い物はリュックで運ぶ五キロ米(花太郎)
いま日本中が大騒ぎしているお米。「令和の米騒動」ともいわれています。リュックで運んだのはブランド米でしょうか? それとも備蓄米? タイムリーな話題を上手につかまえています。
○飲み忘れしない薬はお酒だけ(なで肩)
左党の方の実感でもありましょう。昔から言います、「酒は百薬の長」と。しかしながら、この薬。「飲み忘れ」はなくとも、「飲み過ぎる」ことがあります。ご注意を!
今回の川柳
ベスト作品
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◎トップ賞
妻と手を
つないだだけで
リフレッシュ上村ひろし
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買い物は
リュックで運ぶ
五キロ米花太郎
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飲み忘れしない薬は
お酒だけなで肩