2022年8月

川柳上手は生き上手5

江畑 哲男 さん

(一社)全日本川柳協会副理事長、麗澤大学オープンカレッジ講師


精神科医の和田秀樹先生が、高齢者への健康アドバイスをあちこちで発信しております。例えば、『週刊新潮』(5/5日・12日号)の「『満身創痍の70代』から『快活な80代』になる」という記事。要旨をまとめれば、こう言っておられました。

《外出すれば「幸せホルモン」。外出すると気持ちがイイ! 太陽光を浴びる。幸福感に浸れる。「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが分泌されて、ヤル気や幸福感が高まる。》

先生のアドバイスは、さらに続きます。

(ア)頭を使うこと。

(イ)可能な限り、仕事はやめないこと。

(ウ)本を読むこと。

(エ)人と議論をすること。

(オ)楽しいことをすること。

(カ)遠慮せず、美味しいものを食べること、……。

いやはや結構、けっこう。嬉しいアドバイスですね。ヤル気が湧いてきそうな、元気を貰えそうなアドバイスでした。

要は、「ストレスなんか溜めずに、好きなことをすればよい」ということのようです。これはこれは、もったいなくも、すばらしいアドバイスでした。

ついでに、小生からも一言。川柳などは、まさに健康長寿を維持するのにふさわしい趣味。そう信じております。

かく言う小生、このほど『魔法の文芸―川柳を学ぶ』(飯塚書店、1600円+税)という入門書を出版いたしました。川柳の魅力と、その言い知れぬ魔力を強調させていただきました。書き下ろしです。お手にとってご覧いただければ幸いです。

さて、今月も佳作から紹介していきましょう。

CMのような効果はないサプリ(やんちゃん)

保冷剤入れすぎ弁当凍ってる(ブラックキャット)

銅メダル金と同じと書いてある(藤本淑子)

ぐうたらを絵に描いたよなメタボ腹(安田蝸牛)

ノンアルで我慢している休肝日 (Q幸)

早寝して目覚めてしまう午前二時(あっきー)

ウォーキングあそこのカフェが目的地(にわか健康マニア)

一万歩足りない分は足踏みで(ゆうゆう)

痩せてきた? 筋肉落ちただけでした(上京組)

バイキング体に悪いが止められぬ(かめれおん)

腹八分健康貯金頑張らな    (東予稲村)

若いころ痩せると喜ぶ今不安(やっちゃん)

あの柵は昔は越えた今は無理(木本誠二)

よく歩きくよくよしないでよく生きる(ひろみ)

日頃からよ~く鍛えて老い知らず(みい)

さてさて、お待ちかね。ベスト3作品の発表に移りましょう。

 

大海原堀江謙一元気です (澤本澤代)

二刀流の大谷翔平や完全試合の佐々木朗希。若い世代の活躍も素晴らしいけれど、堀江謙一83歳の快挙には励まされました。初句「大海原」の大景がお見事!

なるようになって気がつく不摂生(ねぎ坊主)

一転して、現実直視の一句。「なるようになって」という導入がリアルでした。

酒飲んで元気出るのはその日だけ(神尾匡彦)

川柳ですねぇ~。たしかにその通りでしょう。「元気出るのはその日だけ」が、面白くも哀しい実感なのです。

今回川柳
ベスト作品

  • 大海原

    堀江謙一

    元気です

    澤本澤代

  • なるように

    なって気がつく

    不摂生

    ねぎ坊主

  • 酒飲んで

    元気出るのは

    その日だけ

    神尾匡彦

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