Vol.152 2020年9月号

川柳の出番

江畑 哲男 さん

(一社)全日本川柳協会副理事長、麗澤大学オープンカレッジ講師


「食っちゃ寝、食っちゃ寝」という連語がある。食事をしては寝てばかり。働かないでぶらぶらして過ごす。そんな気楽なご身分を揶揄した俗語である。
しかし、その「食べて寝る」という行為は人間生活の基本中の基本。その大切さを今回の事態で思い知らされた。
一方、不要不急という熟語も聞かれた。「不要不急の外出は控えよう」といった呼び掛けに使われた。今次コロナ禍の際には、暮らしに関わる緊急で欠くべからざる事柄と、不要不急の事柄とがあった。その区別をわきまえて行動しなければならなかった。
川柳はどちらか? むろん不要不急のシロモノだ。その代表格!、と言ってよい。なくても困らない。あっても別に腹の足しにならない(笑)。
しかしながら、この数カ月。多くの方々が、我慢して自粛・巣ごもり・籠城期間を過ごしてきた。「食っちゃ寝」生活をしていた訳だが、その中で川柳の魅力を再認識したという仲間が少なくなかった。日ごろはそれほど川柳に熱心ではなかった仲間も、である。さらには、初めて川柳の魅力に目覚めた方もおられた。
たしかに、「食べて寝る」というのは生活の基本ではある。その一方、人間は「食べて寝る」だけでは満足はできない。これまた人間のもう一つの側面であろう。という次第で、こういう時こそ川柳の出番。こういう時こそユーモア精神が求められる。そう感じている。人間には、やはり潤いとか遊び心とかが必要なのだ。
皆さんは、どのようにお考えでしょうか?
では、まずは佳作から。必要に応じて、コメントを加えさせていただいている。

太るのは簡単なのに痩せにくい (ステレオ)
う〜む。そうですね。皆さんも同感!?

スクワット三日坊主でこれもダメ  (千瑠)
ジョギングで脂肪断捨離始めます(いざ活性化)
持病無く話が合わぬ同窓会    (けろね)
羨ましいお方です。健康に問題ナシなんて言うと、かえって相手にされないようです(笑)。

初スマホ頑張りすぎて親指痛(犬好きマルエイ)
肩痛いこれが噂の五十肩      (天晴)
ウイルスに紙面取られて泣く他記事(ヒサミテ)
はい、寝ても覚めてもコロナの日々です。

優しさと母のお粥が染みわたる (しらびば)
主治医ほめながら夫をチラ見する (不同女)
健康に支えられてる「当たり前」  (ぼたん)
「当たり前」とか「平凡」というものの価値やありがたさを、しみじみ実感した日々でもありました。

Vol.152
ベスト作品

  • 症状を

    甘く答えて

    退院日

    小松靖人

  • ストレスと

    たたかっている

    新コロナ

    竹澤聡

  • ラジオ体操

    曲と体が

    一致せず

    イッチ

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