Vol.133 2016年5月号

川柳のユーモア

江畑 哲男 さん

(一社)全日本川柳協会常任幹事、早稲田大学オープンカレッジ講師


川柳的発想を活かす4

テレビの人気長寿番組に「笑点」がある。50年も続く大喜利のコーナーは、とりわけ人気度が高い。いつぞやの出題に、こんな問答があった。
「18歳と81歳の違いは?」。
果たしてメンバーの答えや如何に。

対比の妙味

「道路を暴走するのが18歳、逆走するのが81歳」。
「心がもろいのが18歳、骨がもろいのが81歳」。
「偏差値が気になるのが18歳、血糖値が気になるのが81歳」。
「受験戦争を戦っているのが18歳、アメリカと戦ったのが81歳」。
「恋に溺れるのが18歳、風呂で溺れるのが81歳」。
「東京オリンピックに出たいと思うのが18歳、東京オリンピックまで生きたいと思うのが81歳」、……。
爆笑また爆笑。大喜利のコーナーは、何といってもこのような軽妙なやりとりが魅力である。この日の収録は特に面白かったと、後日談にもなっているようだ。
面白さの原因はどこにあったのか?
一つには「対比の妙味」があった。対比といっても、「何と何を比べるのか」が大事なポイントである。次に、どのように比べるかが二つ目のポイントになる。
「まだ何も知らないのが18歳、もう何も覚えていないのが81歳」。
上記解答例を分析してみると、対句的手法が採られていることに気が付く。「まだ」と「もう」、「何も知らない」には「何も覚えていない」といった具合である。
中にはケシカラン対比もあったが、そこはお笑いの世界。軽〜く、受け流していただこう。いずれにしろ、発想力を鍛えるヒントになることは確かだろう。
かくいう小生。対比の問答を作ってみた。
「未来を夢見るのが18歳、過去の夢を見るのが81歳」。おっと、少々キレイにまとめ過ぎたかも知れぬ。
では、入選一歩手前の作品から。

▷庭潰し野菜畑の定年後   (老沼正一)
▷朝食を美味しくさせるウォーキング(原田祥二郎)
▷カルテかと思える日記に泣き笑い(トシキ)
▷今日もまた孫の子守りで一万歩(三宅亜紀)
▷生きている喜び知ったウォーキング(ばってん爺)

 

Vol.133
ベスト作品

  • ◎トップ賞

    体力の

    衰えカバーする

    知力

    小山一湖

  • 徘徊じゃ

    ないと手を振り

    ウォーキング

    紫蘭

  • 体重計

    減った減ったと

    二回乗り

    つぼさんご

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