Vol.136 2016年11月号
日本語は面白い
江畑 哲男 さん
(一社)全日本川柳協会常任幹事、早稲田大学オープンカレッジ講師
おもしろ日本語の発見2
日本語はなぜ面白いのか?
その2回目。本稿では、教科書的な日本語論とは趣を変えて、日常生活の中で見かける日本語の面白さを追いかけて参りたい。どうぞよろしく。
本音後出しの日本語
「日本語は語らない言語だ」、そう言い切った外国人がいた。「語らない言語」とはユニークな指摘だが、なるほど当を得ている。たしかに、そういった一面があることも事実であろう。
では、「語らない言語」が本音を語ろうとする場合はどうしているのだろうか? そうした場合、本音は大概後回しにされるようだ。前置きを並べた上で、本音は後で遠慮がちに語られていく。そんな展開になる。例えば、左のように。
「素晴らしいお考えだとは思いますが、××といった側面もあるのではないでしょうか」。「たぶん私の理解力が不足していたのだと思いますが、△△についてはもう少し丁寧に説明された方が良かったと思いました」、といった具合である。
前者も後者も、話者の本音は後半に存在する。すなわち、前者では「××を考えるべし」、後者では「説明不足でよく分からなかった」、と本当は言いたかったのだ。
民進党の蓮舫氏が、9月の代表選時に岡田克也代表(当時)について、こんな人物評価をしたことがあった。
「私は岡田克也代表が大好きです。ただ、1年半一緒にいて、本当につまらない男だと思います」と。
この発言は物議をかもした。蓮舫氏は自身のユニークさをアピールしたかったのだが、日本語的には大失敗であった。
しかしながら、もし仮に右の語順が逆だったらどうだったであろうか?
「岡田代表と1年半一緒にいて本当につまらない男だと思いました。でもそんな岡田克也代表が私は大好きです」と。
あれほどのブーイングは起きなかったに違いない。そう思う。だから、日本語は面白い!
さて、入選一歩手前の作品からご紹介させていただこう。なお入選句の一部は、少々添削させていただきました(本音後出し、笑)。ご了解ください。
▷ヤモリいた家のかわいい警備員 (三宅亜紀)
▷飲み忘れあったか薬残ってる(ばってん爺)
▷中症ポケモンGOに潜む罠(しむらむし)
▷化粧水変えて心が若返り (一湖)
▷何周もまわってしまうショッピング(まやりーな)
Vol.136の
ベスト作品
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◎トップ賞
恋をして
元気度が増す
ウォーキング
杉野ふみ子
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健康の
ためにと食べる
まずいもの
ゆうぞう
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看護師の
魔法の言葉
大丈夫
鎌田ちどり