Vol.131 2016年1月号
川柳のユーモア
江畑 哲男 さん
(一社)全日本川柳協会常任幹事、早稲田大学オープンカレッジ講師
川柳的発想を活かす2
先日、久しぶりに文楽を観てきました。お陰さまで骨休めになりました。
文楽は、ご存知のように「聞く」浄瑠璃と「見る」人形とが結びついた古典芸能です。大阪で生まれ、大阪の庶民に育てられた「人形浄瑠璃文楽」は、ユネスコの世界無形遺産にもなっております。
「聞く」浄瑠璃は、物語を語る「太夫」と楽器の「三味線」とで成り立っております。
七五調+掛調
じつに、いいですね。太夫の語りにすっかり魅了されました。
〈信濃路に、名高き山や戸隠の時雨に色も染め上げし錦彩る夕紅葉、影も長月、治まれる御代は平維茂が……〉
見事な七五調です。改めて、七五調の魅力に聞き惚れちゃいました。
太夫の語りを聞きながら、もう一点気づいたことがあります。それは、掛調が多用されていること。掛調とは、同じ音で二つ以上の異なる意味を持たせることです。
(ア)「錦彩る夕紅葉、影も長月」(「影が長くなってきた」と、陰暦の「長月」。二つの意味が含まれている)
(イ)「落ち葉の色に飽きもせで」(「秋」と「飽き」)
(ウ)「一層思ひは増鏡、曇らぬ内を」(「増す」と、歴史物語の「増鏡」)
三番目の台詞に至っては、掛調の「増す」、その「増鏡」の「鏡」から、さらに「曇らぬ内に」
へと意味を膨らませていくのです。
掛調とは、端的に言えばシャレのことですが、間違っても「親父ギャグ」などと貶めてはなりません。
では、惜しくも入選を逃した作品から。
▷体脂肪一枚分の暖かさ(塚崎てる子)
▷年なのか何をするにもヨッコイショ(申し子)
▷病気かな今日待合にいない友(能村正徳)
▷腰痛に悩むゆるキャラファンタジー(とり)
▷四季毎に運動種目選んでる(老沼正一)
Vol.131の
ベスト作品
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◎トップ賞
定年後
未だ現役の
腹時計
紫蘭
-
ごあいさつ
上手に出来て
お年玉
加納康男
-
予防できる
病気は予防
して長寿
一湖