2026

01/13

院外薬局の人材不足による休日診療の危機

  • 地域医療

  • 北海道

横山 和之
北海道社会事業協会 岩内病院 院長

地域医療・北海道(59)

医療サービスを支える薬局の現状

以前、私が診療している北海道社会事業協会岩内病院(以下、岩内病院)がある北海道西後志地域において、臨床検査会社の出張所の撤退による、クリニックの診療の検査の質が著しく低下することをお話ししました。また、それより以前に、クリニックの事務職員と看護職員の減少で、休日当番が不可能になり、一次救急は医師会ではなく、岩内病院で行うことになったと報告もさせていただきました。地域医療は、医師だけではなく、それを支える、いろいろなものから成り立っていて、それらは、元々、非常に脆弱です。今回、当地域における、院外薬局の人材不足が、休日診療の存続さえ脅かすことになっていることをお話します。

当地域の院外薬局は8軒あります。全国規模の院外薬局が2軒、地方規模の薬局が3軒、個人の薬局が3軒の計8軒でこの地域の院外処方の業務を行っています。個人の薬局に複数人の薬剤師が常駐することが難しいのは以前からありました。しかし、最近は大手であっても、複数人の薬剤師を常駐させることが困難になっています。都会で働く薬剤師は確保できても、田舎に行こうとする薬剤師を確保することが難しくなってきています。多少待遇が悪くても(実際は、待遇面はほとんど変わらないか、逆に都会の方が良いことが多い)、転勤のない都会暮らしを求めるのは、病院に勤める医療従事者も、院外薬局に勤める薬剤師も同じ傾向であるということです。そのため、地方の院外薬局を、それぞれ、薬剤師が1人で支えなければならないということが多く起きています。

2025年度の年末年始は12月27日~1月4日までの9日間になります。以前より、休日の日中は、院外薬局に輪番で院外処方の対応をしていただいていました。今回は、それが9日間に及ぶことになります。この9日間を8軒の院外薬局に輪番で、休日診療の院外処方をしていただくこととなります。そして、その輪番は岩内町の役場がそれぞれに取りまとめて行っていました。しかし、今年度は、岩内町役場に対して、年々田舎で仕事をする常勤の薬剤師が減っていて、年末年始の薬剤師を準備できないために、年末年始の院外処方の輪番には参加できないと申し出る薬局が現れました。

いわゆる、田舎の地方病院やクリニックの職員の人材確保が難しくなり、今までのように医療サービスを提供できなくなるというのは、一般の方々も当然理解されている現実の問題だと思います。医療機関が医療サービスを提供するためには、医療機関だけで提供しているわけではありません。外来診療であれば、院外処方をするために、院外薬局の存続は非常に重要で必須です。外来診療と外来処方は現在、しっかり分けられているために、外来処方ができなくなると、それは、外来診療そのものが不可能になることとなります。そうなれば、院外処方を医療機関で行えばいいじゃないかと言う意見が出てくると思います。しかし、医療機関は、現在、院外処方を院内処方に切り替えることに対応できません。院内処方を行うための薬剤師を確保していないからです。数のことだけで言えば、岩内町にある薬局を全て辞めていただき、その薬剤師を全員、岩内病院で雇用することができれば、院外処方を院内処方に切り替えることが可能です。しかし、それは、無理な話です。

休日の院外処方業務を守るためにできること

どうしたら、院外薬局の薬剤師を含めた、人材不足を解決することができるでしょうか。院外薬局の人材は、今後減ることはあっても、増えることはないと僕は考えています。今後は、年末年始だけではなく、通常の、休日の当番薬局も確保するのが難しくなってくると考えています。まずは、年末年始を含めた休日の院外薬局に対して、本当に必要な調剤業務にのみ対応していただき、休日の院外処方業務の軽減を図るのが大切です。例を挙げると、「量を測って調剤しなければならない粉や液体の薬を処方せずに、決まった量の粉や錠剤で処方する」「混合する軟膏は処方しない」「一包化もしない」「薬の処方は次の平日までの短い期間のみとする」などです。これ以外にも、薬局と情報共有を行い、お互いに処方業務の軽減とスリム化を行うことで、休日の院外処方業務をやりやすくしてもらう予定です。また、今後、必ず起きると予想される、院外薬局による院外処方業務の破綻を見据えて、休日の院内処方への対応も、当院では進めていく予定です。そこには、病院での人材確保という、かなりハードルの高い問題がありますが、地域の院外薬局と町役場とともに協力して、現在の「地域で休日の処方が可能になっている体制」を守るために、工夫しなければならないと考えています。

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